二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

オリジナルの話

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 
破壊された建物はそのまま打ち捨てられ瓦礫となる。また、どこからか飛んで来た物の残骸が毒にまみれた地面に堆積している。
母星の中核部である建物の中からそれらを見下ろし眺めるが、人通りはない。いや、人の気配そのものがない。
女性的な雰囲気を漂わせた、目を見張る程美しい青年は思い続けている。
機能停止の通達があった。自分達五人……五体共だ。
以前と違い恐らく、二度と覚醒する事はないだろう。
二度と目覚めぬ眠りは人で言うのならば死か。
死は……怖くない。
恐ろしい事は。そして最後に自分が行わなければいけない事は。

兵器であった五体の処置と、その全てが戦の道程であった現在迄の惑星間の関係は以下の通りであった。

現在まで惑星間の戦争は終わっていない。
変わらないこの数百年間から変わった事と言えば、この星……今、雷が建物の中から眺めているブルーから人間が更にいなくなった事だった。
多量の毒により形容し難い色に変色し切った地面と、あらゆる物が廃棄されたままのブルーの様相を見て、それでもまだこの星は保った方なのではないかとぼんやりと思う。
遥か遠い昔……三番目の直ぐ上の兄と、五番目の直ぐ下の末弟が一人の少年に連れられ惑星間を行き来していたその当時から既にこの星の人間の平均寿命は二十年であった。
その後は流石にそれ以上寿命は下がり続ける事はなかったが、ブルーの汚染は進み続け、住まう人間達の健康……いや、体そのものを酷く蝕んでいった。
女は健全な子供、近い将来の戦力となる兵士を産む事が難しくなっていた。
最終惑星ブラックとレッドの侵攻により、男は兵として駆り出され、残された二十歳前後の「老人」、女、子供だけの手ではブルーの運営は難しいものがあった。
すでに絶望的だった人々の寿命とブラック、レッドの侵攻、戦いによるブルーを担う世代の人口の激減、悪化の止まぬ星の汚染に加え、千年単位で人が住み、奪い尽くしていたブルーに存在していた資源の含有量に底が見えて来た。

この星にはもう住めぬ、私達は星により殺されるとブルーの殆どの人間は白旗を挙げ、名目上は最も近くそして資源の豊富な第二惑星グレイ統治下にある各小惑星に移る方針を掲げたが、彼等の実際の移住先は自分達を攻撃し続けていた主にレッド、ブラックであり、ごく一部のみがグレイに移住していった。
ブルー政府は敵対関係であるレッド、ブラック両惑星及びその統治下にある各小惑星への移住を禁じたが、その政府の高官達が先に逃げる様にブルーを捨て、レッド、ブラックに移住していった。
強兵策を採り、長年の対立関係であるレッドとブラックの両惑星は、この億単位のブルーからの移民達を積極的に受け入れた。
同時に、兵力も資源もなく毒と廃棄物だけが溢れるブルーはブラックとレッドの攻略の対象から外れた。
両惑星の矛先は資源が豊富で人の繁殖に向く、自国以外の支配下に置かれた各小惑星であり、ゆくゆくは第二惑星グレイ、第三惑星グリーン……全ての惑星を自らの支配下に置く事であった。

……良くここまで保ったものだ。
再度雷は思う。
そして今まで攻撃を受け、耐える側であったブルーからの移民を祖先に持つ末裔達がブラック、レッドの尖兵となり他惑星を攻撃し、そこで略奪を続けている。人はそう言うものだと言う事は、雷は恐らく造られた時から分かっていた。

現在の五惑星……弱体化の著しいブルーを除いた四惑星の現状については、最終惑星ブラックと第四惑星レッドの二強である。
若干前者が勝り、半歩遅れた形でレッドが後を追うが、この構図は遥か昔から変わらない。
砂漠と刺す様な日の地であった枯渇した第二惑星グレイは、「もう人は誰も知らない遥か昔」、直ぐ上の兄とすぐ下の弟を導いたたった一人の少年により再生し、その時から僅かずつではあるが豊かになっていった。
敬虔な民が多いと言う。そのグレイからは他惑星を挑発し、侵攻する事はなかったが、二強のどちらかが行き過ぎた干渉を行えば片方が介入し、形ばかりではあるが、グリーンと結んだ。
加え、ブラック、レッドがグレイを支配下に置く事が出来ぬ原因はこの惑星の兵士達にあった。
グレイの民当人達ではないから分かりかねるが、彼等の体について、少なくとも視力は防人はおろか、常人より劣ると言う。
二強が攻めあぐねるその理由はグレイの民達が持つ特異な力……常人では持ち得ない力を彼等が持っている事からであった。
故に良質の兵士の供給源として大変魅力的ではあったが、ブラックとレッドはどちらもグレイを掌中にする事は出来ぬままであった。
視力は劣り特異な力を持ち過酷な環境に晒され続けていた事から、抜きん出た身体能力を備え他惑星の人々とは離れた存在であるグレイの民達。
ブルーから最も近くに存在し資源も豊富であったこの惑星と統治下の各小惑星が、億単位のブルーの人間の移住先にほぼ選択肢として選ばれなかった理由もここにあるだろう。ブルーの人間達は自分達や他惑星の人間と異なるグレイの民達を不気味に思ったのだ。
雷は溜息をついた。
次に思い起こす事は、自分が形式上でも護っていた惑星。
しかし惑星を破壊する、と言う自分達の本来の役割と、今はもう揃いに揃って五体共、役目を終え解雇された身であるので、かつて居住していた第三惑星には特別な感情はない。
加えてあの緑の星のあり方はさながら各兄弟の中の自分を具現化している様にも見え、だからどうも好ましくは思えなかった。

第三惑星グリーン。遥か昔から現在まで変わらず中立を謳い、掲げる。
もう少しその内容を詳しく言えば、統治下以外の小惑星には自ら軍を用いる事は無く、対ブラック、レッドとの関係についてはグレイと変わらない姿勢であった。
ただ、億単位のブルーの者達が(表面上はグレイ、グリーンへの)移住希望の意を示した際に、詩的な軟音の言語を歌う様に操り、籠の中で眠り続ける貴婦人の様だと言われたグリーンとその人々達は、ごく初期の段階から真っ向に移民受け入れの一切の拒否を表明した。
アースガルズを筆頭とし、天上の都と謳われた旧都ヴァルハラ他、各空中都市の市長の疲れた顔つき、走り回る文官達……あの時は各惑星への対応の為に大変だったのだろう、と雷は思う。
母である星の民を見捨て、いや見殺しにするとは何事だと、ブルーの者達はグリーンとその民を非常に嫌った。このグリーンの対応にグレイは公式で遺憾の意を示し、逆にレッドとブラックは意に介さず、実質的にブルーの移民の大部分を引き受けた。
この両惑星の上層部の者達の間には、また気位がやたらと高い森の貴族達がその排他的な本性を現した、奴等のいつもの気紛れかとも思う者が多数であっただろう。
特に、中立を掲げ続けるグリーンを過去から落とさんと外交を繰り返していたブラックの者達は思う事が多かったと思われる。彼等は惑星そのものが優美に見える第三惑星と、その箱庭の中で生きる民達の胃が痛くなる程の強かさを良く知っていた。
中立の言葉の聞こえだけは良いその方針の下、実際はあらゆる手段を用い攻め入るブラック、レッドに幾度もダメージを与えていた第三惑星。
作品名:オリジナルの話 作家名:シノ