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「はいはい。お前も次はしっかり対潜警戒してくれよな」
「……はい。肝に銘じます」
 それを言われると痛いですね。そもそも私が姉さんの評判を上げるにはどうすればいいかなんてことを作戦行動中に考えていたせいでうっかり敵の潜水艦を見落としてしまったのが悪いのですから。
 そういえば、結局どうすれば姉さんの評判が上がるのか思いつきませんでしたね。今日は私も非番ですし、また一から考え直してみましょう。
 コンコン――改めて姉さんの評判を上げる方法を考え始めた私の耳にドアをノックする音が飛び込んできました。
「おう、開いてるぜー」
「あ、あの、失礼します」
 ドアを開けて入ってきたのは電さんでした。
「お邪魔するわ」
 電さんに続いて雷さんも。こちらはなんだかちょっと不機嫌そうです。
「おう、珍しい客が来たな。なんだ、アタシがケガをして動けないうちにお礼参りか?」
「ち、違うのです! そんなことしないのです!」
 必死に首を振る電さん。
 まったく、姉さんったら……電さんたちがそんなことをしに来るような性格じゃないことくらい知ってるでしょうに。
「あ、あの、これを」
 電さんがおずおずと差し出してきたのは花束でした。
「わあ……綺麗」
 色とりどりの花々がぎゅっと詰め込まれた、とても可愛らしい花束です。思わず感嘆の溜め息が出てしまいました。
「いいのかよ、こんなんもらっちまって」
「はい、どうぞ。私たちから頑張った摩耶さんへのプレゼントなのです」
「私たち、ってことは雷も選んでくれたのか?」
「そうなのです。ね、雷」
「……そうよ。私も選んでやったんだから、感謝してよね」
 雷さんは仏頂面で答えました。
 どうして雷さんはこんなに怒ってるんでしょうか。いつもの雷さんらしくありません。
「おう、サンキュー、二人とも」
 しかし姉さんは雷さんの態度などまったく気にせず、笑顔で花束を受け取りました。すると雷さんは毒気を抜かれたように溜め息を吐きました。
 さっきから雷さんの様子が変ですね……何かそわそわしているようにも見えます。
 首をかしげている私のそばで、雷さんと姉さんの会話は続きます。
「山城から聞いたわよ。アンタあんなにボロボロだったのに鳥海を守るために戦ったんですってね」
「まあな。でもお前らも潜水艦を引きつけてくれたろ? 感謝してるぜ」
「べ、別に私たちは駆逐艦として当然のことをしただけよ」
 ツンとそっぽを向く雷さん。
「ほら、雷」
 電さんはそんな雷さんの肩に手を当てて何かを促しました。
「わ、わかってるわよ」
 咳払いをして、雷さんは再び姉さんに向けてしゃべり始めました。
「作戦に出る前は、デリカシーのない、でかいだけのやつかと思ってたけど、ア、アンタもなかなかやるじゃない、なんて……思ってないんだからね! ふん!」
 もう帰るわ! と言い残して、雷さんはさっさとドックを出て行ってしまいました。
「ああ、待って! あの、私も摩耶さんのこと、怖い人だなって思ってましたけど、今は尊敬してるのです。私も摩耶さんみたいになれたらって、雷も……」
「電ぁ! 余計なこと言わない!」
 ドックの外から雷さんの怒鳴り声が聞こえてきました。
「はわわわ、それじゃ、お邪魔したのです」
 電さんは肩をすくめながら小走りで雷さんを追いかけていきました。
 後に残された私と姉さんは狐に化かされたようにポカーンとしてしまいました。
「……ぷっ」
 しばらくして、耐えきれずに先に吹き出したのは姉さんでした。
「……あははは!」
 私も釣られて笑ってしまいました。
「あっはっはっはっは! なんだあいつら、あんなこと言うためにわざわざ来たのかよ! あーっはっはっは!」
「んもう姉さん笑いすぎですよ、っふふ」
「はーっはっは、はーっ、ひーっ、はぁー……ホント可愛いやつらだな、あいつら」
「そうですね、ふふっ」
 姉さんみたいになりたい、か。がさつなところは真似してもらっちゃ困りますけど、頼りがいがあるところはぜひ真似してもらいたいですね。
 ――あ。そっか。あの子たち、もう姉さんのいいところ、知ってるんだ。
「……うふふっ」
「おいおい、お前も笑いすぎだろ」
「すみません。なんだか嬉しくなっちゃって」
「ま、アタシも好かれて悪い気はしないな」
 私があれこれ気を揉まなくても姉さんのことをわかってくれる人がいる……嬉しいです。本当に。
 これからも姉さんはどこかでトラブルを起こすでしょうけど、それでもきっと大丈夫ですね。
「ところでリンゴまだかー?」
「はいはい。もうちょっと待っててくださいね」
 私は、なんだかニヤニヤしてて気持ち悪いと言われながらも、リンゴの皮をむきました。
 とても綺麗にむけた気がします。
作品名:わかってください! 作家名:ヘコヘコ