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はろ☆どき
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魔法の呪文はアブラカダブラ【CC大阪97新刊サンプル】

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エドワードがその気持ちに気づいたのは、もう随分前のことだった。

――まさか、そんな、ありえない――

 そう自問する時期はとっくに通り越していて、それが世間でいうところの「不治の病」というやつであることも自覚している。
 エドワードが患っているもの――それはいわゆる「恋の病」というやつだ。
 十代半ばといういわゆる思春期であれば、淡い恋心の一つくらいあってもおかしくはない年頃だ。
 しかし、その恋情はエドワードにとって重く苦しいものでしかなかった。
 相手が十四歳も年上の同性であるとか、ゴシップネタに疎い自分の耳に入るほど華やかな女性歴の噂があるとか、立場上自分の後見人であるとか、それらも理由の一部ではあった。
 そう、エドワードが恋心を抱いている相手とはロイ・マスタングなのだ。東方司令部の司令官で二十代で大佐位なのに加えて国家錬金術師の称号も抱いているという、客観的に見ても超エリートのあの彼のことである。
 よりにもよってと自分でも思う。
 ロイとの再会を果たしてからずっと、感謝する気持ちは多々あれど、いけすかない態度や嫌味な物言いをする相手として散々憎まれ口ばかり叩いてきたのだ。今さら素直な態度など取りようもない。
 仮にそうできたところで、自分が恋愛対象として相手にされる可能性など万にひとつもないだろう。
 それでも、ただ想っているだけで幸せな気持ちになれるとか、そう思えればよかったのだが。
 エドワードが何よりも一番に考えるべき相手は、弟のアルフォンスだ。弟の身体を取り戻すことが唯一自分の心の内にあるべきことであり、他のことは一片の入る隙も与えてはならない。
 ましてや、恋愛などと浮ついた気持ちなどあってはならないのだ。
 人体錬成という、取り返しのつかない罪を犯した自分は幸せになってはいけないとすら思っていた。
 しかし忘れようと何度決意しても、ふと気づけば心の内には黒髪の大人が居座っていて、追い払っても追い払っても消えるどころか心のより多くの部分を占めるようになっていったのである。
 オレの心の中でまでいけすかねぇやつ、とエドワードは腹立たしくさえ思った。
 だからせめてなるべく顔を合わせなくて済むように、報告書の提出など軍属としての義務を果たさねばならない時しか東方司令部へは寄り付かず、イーストシティでも必要最低限の日数しか滞在しないようにしていた。
 しかし、そうやってたまにしか会わないが故にロイとのやり取りが一層鮮明に記憶に残り、心から追い出そうと意識するあまり、当のロイ本人に対しての態度はますます頑なになってしまうのだった。