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だぶるおー じゃがいもすーぷ1

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 アレルヤは慌てているが、諾の返事はもらったので、俺は早々に二階へ戻った。特区では有り得ないらしいが、うちの田舎では、風邪をひいたら、キレイな空気に触れるために散歩する習慣がある。子供たちを返してから、ちょっと付き合ってもらうことにした。


 だというのに、子供たちを送り出してから散歩に出ようとしたら、バイト全員がついてきた。刹那は、近くのマンションまで帰るついでだが、ティエリアたちはバイクやクルマで移動している。わざわざ、付き合わなくても、と、兄は断ったが頑として譲らない。
「刹那を送って、それから引き返してくるぐらいでしょ? ウォーキングにはなる。」
「ニール、カイロしなくていい? 」
 本日の参加者は三人だ。ハレルヤは、昨日、顔を出していて、今日は別のバイトがあったらしい。
「刹那、明日は無理しなくていいから。ごめんな? でも、晩御飯は、うちで食べればいいから。」
「たぶん、少し遅くなるぐらいで問題はない。英会話は、言われたところまで進めておいた。」
「うん、ありがとさん。ティエリア、明日の英会話は頼めるか? 」
「大丈夫です。・・・・明日は人数が少ないから、食事もハレルヤだけでできる。あなたは無理しないでください。」
「でも、おいしかっただろ?  あれ、ハンバーグみたいだけど、うちの田舎の料理なんだ。」
「おいしいが・・・その目の下の隈はいただけないです、ニール。明日のコロッケまで製作して、そこの風邪男の看病を一晩していたのでしょう? 今日は、速やかに休んでください。」
「あははは・・・昨日は熱が下がらなくて心配だったからさ。今日は、ちゃんと寝るよ。ありがと、心配してくれて。」
 その言葉で、ティエリアに蹴られた意味は判明した。どうやら、兄は一晩、様子を看ていてくれたらしい。
「ニールは、心配性すぎるよ? 僕らの時も、そうだったけどさ。いつも、反動で風邪ひいちゃうんだから。」
「まあ、いいじゃないか。どうせ、明日は金曜日だし子供たちの人数も少ないからさ。風邪ひいたら、後は頼むぜ? アレルヤ。」
「わかってるよ。ティエリア、明日、早く来られる? 」
「ああ、午後から空いてるから大丈夫だ。おまえは? 」
「僕ら、明日の講義が4限にあるんだよ。だから、ギリギリになるんだ。刹那も、委員会で遅くなるらしいから。」
「わかった。とりあえず、子供たちの宿題を見て、英会話の授業はやっておく。食事のほうは頼めるな? 」
「そっちは任せて。刹那、とりあえず、学校が終わったら戻って来て。」
「了解した。・・・・ということだ、ニール。」
「わかった。まあ、なんとかなるだろう。ライルも回復したからな。俺が、食事のほうはやれるから、アレルヤも無理して動くなよ? もう粗方は作ったからさ。」
「なるべく早く帰るよ。週末だから泊ってもいい? 」
「いいよ。刹那とティエリアも泊るか? 」
 塾をしている部屋は二間続きの大きな部屋なので泊るスペースは十分にある。毎週ではないが、割とバイトたちは週末に泊まりに来ている。ついでに言うと刹那は自分の部屋があるので、しょっちゅう泊っている。昔は、塾のほうも泊まりで預かっていたらしい。この四人は、泊まりも経験しているOBたちだ。
「ちょっと、兄さん。こいつらに風邪移らないか? 」
 せっかくの週末なので、一応、抗議してみる。すると、バイト三人が、こちらに目をやった。
「おまえのヘナチョコ風邪に感染などするか、愚か者。」
「僕ら、あまり風邪とかひかないよ? ライル。若いからね。」
 で、刹那は侮蔑の目でみて、ニールの腕に懐いている。バカモノ、というところだろう。
「大丈夫だと思うぜ? おまえは、のんびりと身体を休めてればいいさ。仕事で過労っていうのが原因なんだし。」
「というか、ライル。ニールが風邪ひいたら看病できるの? 」
「いっ? 」
「おまえ、うちのかかりつけの医者が、どこにあるのか把握してるのか? 」
「・・あ・・えーっと・・・」
 熱で朦朧としていたので、連れて行かれた病院の場所が、よくわからない。クルマですぐだったとは思うが、全然、記憶にないのだ。料理は、まったくできないから、市販の栄養剤とかを用意するぐらいが関の山だ。反論できなくて、黙ったら、兄が、「大丈夫だよ。」 と、俺の背中を軽く叩いた。
「はい、刹那、到着。おやすみ。ちゃんと髪の毛を乾かしてから寝るんだぞ? 」
「わかっている。毎日、言うな。」
 刹那のマンションに到着したので、そこで刹那は消えた。残りは、来た道を引き返す。
「なぜ、散歩なんですか? 」
「うちのほうだと、キレイな空気に触れて、それで風邪を吹き飛ばすっていう風邪の退治方法があるんだ。風邪の菌で溢れた部屋に居るより回復するって言ってさ。」
「結構、地域で違うんだよね。欧州は風呂に入って身体を温めたり、ステーキ食べて体力を維持するんだってさ、ティエリア。」
「温めたビールを飲むっていうのもあるぞ、アレルヤ。」
「うーん、ビールを温めるっていう所業が未知の世界だね。おいしいのかな。」
「クスリだからなあ。・・・・ライル、疲れたか? 」
 兄の両側にバイトが陣取っているので、俺の入る隙がない。それで足を止めていたのだが、兄は気付いて戻って来た。
「疲れてはないよ。兄さん、ごめんな? 」
「こいつらの言うことなんて気にしなくていい。こいつらは大袈裟なんだよ。」
「それならいいんだけどさ。なあ、コンビニに寄らないか? 」
「そうだな。・・・アレルヤ、ティエリア、時間あるならコンビニに一緒に行くか? 」
 家は、もう眼の前だ。バイト二人は、帰る、と、そのまま家のほうへ歩き去った。そこから、ぶらぶらとコンビニまで行って、おやつを物色して家に戻った。

 

 翌日も溜まっている有給消化とばかりに休みにした。すっかり熱はなくなったので、あとは咳が残っているぐらいだ。いつもより寝坊して、階下へ降りたら兄は、いつものように活動していた。何やらパソコンで作業している。
「どうだ? 」
「うん、熱はなくなった。」
「そりゃ、よかった。クスリだけは飲んどけよ? ぶり返すことがあるからな。」
「そうだな。・・・手伝おうか? それ。」
「いいよ。せっかくの休みなんだから、ゆっくりしてろ。・・・ああ、まず朝飯だな。」
 パソコンの電源は、そのままに朝の支度をしてくれた。それを食べて、もう一眠りすることにした。別に、兄は、いつも通りだ。
「おまえ、クリスマス休暇は、どうすんの? 」
「こっちにいようかなって思ってる。クリスマス休暇って、こっちにはないんだよ。こっちの暦で働いてるからさ。年末年始は休みだけど、一週間もないし。実家に帰るなら、別に休みを取ったほうがよさそうだ。」
 本社は欧州だが、さすがに、こちらの稼動形態に合わせないと仕事にならない部分があるから、休みも、そんなことになる。
「そうなのか。・・・もしかすると、クリスマスは、アリーが帰って来るかもしれないけど、いいか?  」
「別にいいよ。てか、あいつは刹那のとこじゃねぇーの? 」
「刹那のとこに帰って来るけどさ。あいつも、家事一切はしない男なんだ。だから、結局、メシは、うちで食うことになるから。」