チビエド事件簿
「なるほど。鋼のが幼児化したせいで錬金術も調子が狂ったが、それが逆に特殊な状況下では今まで以上の効果が現れるようになったのだな」
「ですね。でも、そうするともしかして、兄さんがちっちゃいままのときにぼくを錬成してもらえてれば、もしかして元に戻れたかも……」
「だから、なんなんだよ!」
「要するに、私が投げた君の人形と、幼児化して調子が狂った君の錬金術が合わさって、君が元に戻ったということのようだよ」
「元に戻った…?」
今度はエドワードがぽかんとした。
きょろきょろと辺りを見回し、自分の身体を確かめる。
「お、お、おぉ?」
アルフォンスの元へ近づき、その鎧の体と背比べをしたエドワードの顔は、ぱっと明るく華やいだ。
「戻った! ほんとに戻った! やっほーい!!」
飛び跳ね、アルフォンスと手を叩きあい、浮かれついでに近くにあったシンプルな花瓶をどこかの伝統工芸にありそうなエキゾチックなデザインに変えてしまう。錬金術も、完全に元に戻っていた。
「よかったじゃないか、鋼の。これで一件落着だな」
ロイもいつものさわやかな笑顔を顔に戻した。しかし、その手が一枚の写真をこっそり懐に戻そうとしていたことに、目ざといエドワードはすぐに気付く。
「つーわけで」
ぱん、と小気味よい音と閃光の迸り。
エドワードの笑顔が一瞬でまた鬼の形相に早変わりする。それと同じでエドワードの鋼の腕も巨大な刃へと早変わりする。そして、ロイの顔色も。
「さっさと写真とネガ出しやがれ、このやろぉ!!」
追い詰める虎と追い詰められるねずみ。
かくして東方司令部にはまた新たな騒乱が巻き起こり、司令官が一人二階級特進したとかしないとか。
そしてこれは余談であるが、このときエドワードは写真とネガを回収したにも関わらず、数日後にはその写真が司令部内に出回ったとか。しかも、数万単位の高値で…。
しかし、その事実をエドワードは知らない。