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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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「わしが今ここでやろうと言うのには意味がある」沖田は言った。「地球では日々暴動が起きている。この計画を無謀となじる者もいる。我々が地球を捨てて逃げる気だと言う者までな――そして何より多くの人は、そもそも何も期待しとらん。こんな船一隻で何ができるかと思ってるのだ。我らはこの旅立ちにあたり、地球に残る人々に希望を与えてゆかねばならん」

「は、はい」と言った。「しかし、それでも――」

「やってみよう、真田君」徳川が言った。「将棋のようにいい手だけ選んで打つというわけにいかんよ。わし達はそういう旅に乗り出すんだ」

「それは……」

と言いながら、真田は艦橋を見回した。若いクルーらが自分を見ている。ようすを窺ってるのだ、と思った。自分に副長が務まるかどうか。

あの南雲二佐ならばどうするだろう、と考えてみた。本来副長になるはずだった男の顔を思い浮かべる。だがそうするまでもなかった。『波動砲はギリギリまで秘匿(ひとく)せよとの軍司令部の厳命だ』とわめきたてるに決まってる。艦長、あなたはそれを無視するのですか――。

このおれに対しても、やれ試射をガミラスに知られずにする方法はないかとか、何がなんでも〈コア〉を調べて同じものを作れとか百万回も言った男だ。それも、こちらが寝てるのを起こして。まったくあの男ときたら……いや、いい。今は、自分がその代わりなのだ。

「沖縄基地のこともあります……」真田は言った。「〈ヤマト〉のために死ぬ人間をすでに多く出し過ぎました。このままではさらに多数の味方が死ぬことになる。もう秘匿と言えないのなら、ここで犠牲を止めるのがこの〈ヤマト〉のクルーにとっても救いになるかもしれませんが……」

「そうか」と沖田は言った。「いい意見だ」

そうとしか言わないのは、絶対に正しい答などないからだろう。軍司令部はどんな犠牲を出してでもあのデカブツを生け捕りたいに決まってるのだ。

若い者達が真田に笑顔を見せてから自分の仕事に向き直る。彼らの間ですでに話はついていたのだろう。自分は合格したのかとも思ったが、

「よし! それでは、これより波動砲最大出力での試射を行う。目標、前方の敵空母。総員発射に備えよ!」

沖田が叫ぶ。真田は今度こそ席から飛び上がりかけた。

「最大? ちょっと待ってください!」

「なんだ」

「な、何も最大でなくても! 最小に絞った出力でも、あの程度の船は軽く吹き飛ばすことができます。波動砲はそもそもが冥王星のガミラス基地を星ごと消し飛ばすために〈ヤマト〉に装備されたんですよ!」

「その通りだ。だからこそ、その力があるかを知るには最大でなければ意味がないではないか」

「いやしかし、しかし、それは――」

「『ガミラスは地球に造れる波動砲が造れぬらしい』と仮説にあるな? だからやつらは地球人が波動技術を持つのを恐れて殺しに来たのだと。ならばトコトン、怖がらせてやろうではないか。いま半分ばかりで撃って、〈波動砲とはこの程度か〉とやつらに思わせてしまってどうする」

「う……」と言った。「やつらには今から撃つのが最大か最小かわかるわけがない。だからここは最大で撃つと?」

「さすがにわかりが早いな。そうだ。つまりこれは、示威行動を兼ねるのだ。地球人が波動砲を持ったのをガミラスに知らしめる。それには今が最良の機会なのだ! よって最大出力で波動砲を発射する!」