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銀魂 −アインクラッド篇−

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第十四訓「ただの日常ほど素晴らしいものはない」




――――拝啓。
お元気ですか?アスナです。
アインクラッドもイトスギの月に入り、少し肌寒い季節となりました。
昨日は徹夜でキリト君のためにオーバーを作ってあげました。
キリト君は最近、釣りにはまっているのか、毎日のように湖へ魚を釣りに出かけています。片手剣スキルばかり上げていたためか今まで収穫は一切無し。まるで、仕事に打ち込み過ぎて家事がまったくできないサラリーマンみたいです。
三日前に「俺が下手なわけじゃない。この竿が悪いんだ」と言うものだから、エギルさんにお願いして最高級の竿を用意しました。収穫はありませんでした。
一昨日は「いや違う。竿は良くても餌の品質が良くないから」と言うものなので、エギルさんにお願いして必ず一匹は釣れるという餌を用意しました。収穫はありませんでした。
昨日は「最近寒くて腕が振るえるんだっ。だから魚が喰いつかない・・・べ、べつに俺が下手という理由で釣れないわけじゃない。仮に俺が下手だとしても、それはあの湖に魚がいないんだ。きっと。だから釣れないんだ、勘違いするなよ?」と言うものなので、正直言葉を失いました。

話は変わりますが、時折、思い出したかのように『あの時の映像』が頭を過ぎります。キリト君のパーティメンバーの反応が消失し、後先考えずに彼の後を追ってラフコフと戦闘、死闘の末に勝利したのにも関らずたった数時間の間に幾多の命の灯が消えていきました。あの死闘で生き残るも心身体と疲弊しきった私達が血盟騎士団を一時退団して早一か月が経とうとするのに、あの一件の出来事は今でも、そしてこれからも忘れられないでしょう。

前のメールでも伝えましたが、私たちは今、二十二層の森の中にある小さなログハウスを購入しキリト君と一緒に暮らしています。二十二層はアインクラッドで最も人口が少なく常緑樹の森林と無数に点在する湖があるだけ。それに主街区も小さな村一つしかありません。前線を攻略するプレイヤーやギルドも無いのでここに暮らす人達もすぐに私達を受け入れてくれて、とても住みやすい環境です。しかも、フィールドにモンスターも出現しないのでせっかくリズに治してもらったレイピアもここに来てから一度も装備したことがありません。

――――だから、ギンさん。いつでも良いので遊びに来てください。
あなたが私達の前に現れなくなってから、キリト君も、私も寂しいです。

ここではあの決闘―デュエル―で何があったかを知る人はいません。
以前のように、鼻に指をいれながらアホ面でぼ〜っと歩く事もできます。
時折、あなたのアホ面を見たくなります。

いつか、もう一度会えるその日まで――――。 敬具。『アスナ』


・・・
『ソードアート・オンライン』
第三十五層 ミーシェ郊外 新撰組ギルド本部

――――男はベッドに横になりながらメールを確認。そのまま返信もすることなくウインドウを閉じた。

「・・・・会いに行かなくて良いのか?血盟騎士団の副団長様直々に毎日メールきてんだろ?」
「あぁ。いいのさ・・・・これで良い」

ベッドの横のソファで土方は結晶から写し出されたニュースを見ながら無愛想に声を掛けるも、その更に上をいくほどの無愛想な返答が帰ってきたものなので「あ、そう」と一言だけ返す。

銀時はライトとの戦闘の後、近藤と土方に誘われて新撰組のギルド本部に移動することとした。自分がいた階層は68層、しかも、その洞窟だと思われていた場所は迷宮区の未踏破部分だったらしい。なぜ、戦闘を行っていた時に現れたとのかと尋ねると、これもまた『偶然』だったという。迷宮区を出た瞬間にキリトに連絡を取ろうとすると、アスナから「キリト君と、あのヅラの人と一緒にラフコフの1人を倒したけど、ギンさんは大丈夫なの?」というメールが来ていたものなので、2人は無事だったかと銀時の肩の荷が少し軽くなった。

―――しかし、こちらは『あの男』を逃がしてしまった。まだ安心をすることはできない。いずれ、再び出会い、剣を交じ合わせることとなるだろう。

そう考えた銀時はこれ以上、自分のいざこざに巻き込ませるわけにはいけないとアスナに「実家に帰ります。追わないでください」と、一通だけ返信をし、以来は2人に一切の連絡をしないこととした。

「ったく、陰気臭いぞ万事屋!会いたければ会いに行けば良いだろ!俺だったらそこにお妙さんが居れば例え裸でも会いにいくぞ!」
「あのなぁゴリラ。俺ぁ命狙われている上に団長を怒らせちまった御礼で半ば犯罪者的な扱いになってんのよ?ゴシップ誌の一面に大きく『偽物現る』なんてだされりゃ平然と道も歩くこともできねぇよ。おまけに、てめぇみたいに『あちら』では平然と裸で歩ける街も、『こちら』で同じ行動すりゃ切腹もんよ?」
「とりあえず近藤さん。今も服を着てくれ」
「まぁてめぇがここに居てぇってんなら俺は全然構わねぇ。俺達としても心強いからよ。それに、てめぇ自身もそれで満足してんだからな。・・・だが、『あいつら』はどうだろうな?」
「なあ、聞こえてんだろ?なんで服着ねぇんだよ。着ろっつってんだよ」

近藤の言う『あいつら』とは、言うまでもなくキリトとアスナを指していた。
そんなことは百も承知なのだが、状況が状況だ。
銀時は気だるそうに耳をかっぽじりながら「そうだな」と言い残し部屋を出ていった。

「おい、万事屋ッ!ったく、しょうがねぇ野郎だな」
「服を着れっつってんだろォォォォォッ!!?なんでシカトするんだゴラァァァァァッ!!!!」

新撰組のギルド本部は和洋を惜しみなく取り入れたアンティーク調な造りだった。家具一式はどこか懐かしさを感じ、黒い柱にやや濁った白い壁、廊下の天井には丸い1灯のペンダントライトが規則正しく設置されている。高台に建つ新撰組のギルドの外にでると、ミーシェ主街区に広がる白壁に赤い屋根が立ち並ぶ放牧的な農村が一望できる。

風に黄昏ながらその光景を見ていると、後方から一人の足音が聞こえてきた。

「―――っ!!」
「俺だ。そんなに気を張らなくたって良いだろ」
「あ、あぁ」

無意識に腰の木刀に手を伸ばしていたらしい。
土方はため息をしつつ銀時の横へ並ぶように立つ。

「辛いのはてめぇだけじゃねぇ。こっちの世界に来てから煙草もねぇマヨネーズもねぇ何もねぇときたもんだから、俺も内心ずっとイラついてんだ」
「てめぇと一緒にすんな。煙草もマヨネーズも無くったって良いだろ」
「アホ抜かせ!死活問題だ!・・・あ〜またイライラしてきやがった・・・ったく・・・」

そんな最中、ギルドから下の草原へと続く階段から「よいしょ・・・よいしょ・・・」と子供の声が聞こえてくる。階段からひょこっと顔を出した子供はまだ思春期も迎えていないような小さな男の子だった。青を基調とし身体のラインにフィットした動きやすそうなつなぎ服に背中にはその男の子の数倍はあるいかにも厳重そうな無骨な鉄のケースを背負っており、見ているこちらからもその重量を感じ取れる。男の子は息を上げながら土方の前に立った。

「どうもっ!『アルゲード・デリバリー』です!依頼された荷物をお持ちしました!サインをお願いしますっ!」
「ああ、御苦労。後でアルゲードの本社に配送料を送金しておく」