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銀魂 −アインクラッド篇−

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わずか数秒の間で決着を付ける。これが一番確実な方法だ。
キリトの左手の剣が読み通り盾の内側に入り、その剣先は銀時の腹部に到達しようとしていた。



――――はず、だった。
「っ!!?」
左手がそれ以上、動かなかったのだ。
何故だ?
キリトは己の左手を凝視する。
そこには、剣を握る自分の左手に銀時の右足があった。
「なっ!!」
銀時の脚力にキリトは逆に押し戻されそうになったため、バックステップをして間合いをとる。息を整え、台本には無い行動をとった銀時に「何をしている!?」と言わんばかりに睨み付けた。

「やっぱ盾っていうのは合わねぇわ」

久しぶりに口を開いた友人は、けだるそうに左手の盾を『捨てる』。
そんな行動をした銀時に対し、観客席側からは少しずつだがざわざわと戸惑いの声が聞こえ始めた。

「・・・なんで?」
「別に、気が変わっただけだ」

やや怒り混じりのキリトの小声に銀時はあっけらかんと答えた。
銀時はヒースクリフの恰好のまま、鼻に左手小指を突っ込み、右手の細身の剣をキリトに突きつける。

「俺がこのまま負けちまったらよぉ・・・『あいつ』の思いに背いちまうんじゃねぇかなって思っただけだ。だからよぉキリト。お前ぇには悪いが・・・手加減無しで『本気』で行かせてもらうぜ」
「っ!」

ビリビリ・・・と、銀時の威圧に身体が痺れてしまう。
あぁ、まただ。―――あの『眼』だ。
キリトは鬼のような眼をした銀時に圧倒されないように再び足に力を込める。
「あいつっていうのは・・・ヒースクリフのことか?」
「お前らガキにはまだわかんねぇよ」
「わかんないって言うなら教えろよ」
「やだね。時間の無駄だ」
「どっちが子供だよ」
「少なくともお前ぇよりは大人だ」
「そうか?意外と子供っぽいんだな、ギンさん」
「俺の心はいつだって少年だ」
「だったら・・・・十分子供じゃねぇかァァァァァァッ!!!!」


キリトは初撃の時に比べ更に倍は加速したであろう自身の身体を滑空させ、再び銀時の懐に入る。盾を捨てれば二刀流の剣をガードするのは不可能だ。キリトの左手の剣が右斜め上からの斬撃に対し銀時は両手でそれをガード、叩きつけられた衝撃で地面に振動が走る。キリトは狙ったというばかりにコンマ一秒遅れで銀時の脇腹目掛けて右手の剣を滑り込ませようとした。
(よしっ、これで!)
「甘ぇなッ!!」
「はぁッ!!?」
だが、それも届かなかった。
左手で叩きつけた銀時の身体は押し返すと言わんばかりに腕力だけでキリトの剣を弾き返し、その一瞬の隙が生まれたキリトの腹部に左足が入り、大きく吹き飛ばされた。
キリトがそれに気が付いたのは、大きな砂埃をあげて地面に叩きつけられた時だった。

「はあ゛っ・・・はあ゛っ・・・・」

再び立ち、呼吸を整え、二本の剣を構え直す。
やはり、この人は強い。
この人はまるで、俺たちが今まで御遊びで剣を振るっていたように見えるのだろうか・・・。
俺は、ギンさんに遊ばれている。

「キリト。俺ぁアナログだからソードスキルとかそういう類の事はわかんねぇ。だがな、システムとやらに身体を任せきっているから相手に剣の軌道を読まれるんだ。だから『それを知っている』相手に対してはお前の剣は届かねぇ」
「っ!!」
「己の剣の型を作れんのは、他の誰でもねぇ。てめぇだけだ」

(・・・やはり、この人は俺達が御遊びで剣を振るっていたように見えていたのか。・・・おもしろい。俺が単純なソードスキルだけで今まで生き残ってきたと思っているのか?見せてやる。ソードスキルとソードスキルを掛け合わせた応用技を!)
「ふぅ〜・・・」
キリトは深呼吸をし、右手の剣を前に、左手の剣を後方に、今まで誰にも見せたことのない構えをする。銀時はキリトも本気で来るのだな・・・と、自身の剣を構え直した。


その最中、観客席では先程からのヒースクリフの豹変ぶりに戸惑いの声が益々大きくなっていた。中には「あんな野蛮な人だったか?」とか「ああいうワイルドな戦い方もあるんだ」など、目の前で繰り広げられる激戦に誰もが驚きを隠せきれなかった。
「ギンさんもキリトくんも何考えているのよっ!あぁもう!!」
「ど、どうしたのアスナ!落ちていて、ね?」
「ごめん、リズ・・・はぁ〜・・・」
アスナは落胆する。
せっかく今まで上手く行っていたのに、この状況は何事か。
何故、銀時はあそこで負けなかった?
何故、キリトはこの試合を楽しんでいるのか?
2人の行動に、全く理解ができなかった。


「来なよ、ギンさん。俺も『本気』でやるよ」
「へっ・・・最初から本気だと思っていたが、なっ!!」
(速いッ!だけどッ!!)

銀時のでたらめな乱撃がキリトの身体に叩きつけらようとするも、両手の剣を駆使して全て受け止める。―――余計な動きは一切せず、あえてシステムのみでキリトは身体をアシストする。余計な動作を付け加えれば、自信に無駄な動きを発生させてしまうからだ。
(動け!止まるな!身体は全てシステムに任せれば良いッ!ギンさんの身体の動きだけを見続けるんだッ!そして食らいつけッ!!)
キリトはソードスキルを使用せずシステム補助によるガードをしながら銀時の隙を見つける。どのような玄人だろうが、必ずそれが生まれる。その、ほんの少しの隙の間に強力な一撃を与えるのだ。その時、銀時は強烈な一撃をキリトに与えようと言わんばかりにやや大きく身体を捻る。
(見えた!ギンさんが生んだほんの少しの『隙』ッ!)
「へあ゛ァァァァァァアアアッ!!」
キリトは左手の剣で銀時よりも早く右足に剣先を伸ばす。それに気が付いた銀時は回避行動をとるも間に合わず微かに当ってしまい、微量ではあったもののHPを減少させた。だがキリトはその勢いにのせ銀時に大きく体当たりする。
「うお゛ッ!?」
「まだだッ!!」
体勢を崩した銀時にキリトは間髪入れず右手で単発重攻撃『ヴォ―パル・ストライク』を放った。
「う・・・ら゛ぁ!!」
ジェットエンジンめいた金属質のサウンドとともに、赤い光芒を伴った突き技が放たれる。だが、銀時も負けじとその剣先を自身の剣の数センチもない鍔で受け止め、轟音が鳴り響きながら銀時は跳ね飛ばされた。再び銀時のHPを減少させられたが勝敗を決するほどの量ではない。

「おいおい・・・本当に大人顔負けだな、ったく」
「ちょっとは、危機感を持ってくれたか?」
「それでも、俺にはまだまだ届かねぇよ。ったく、てめぇの覚悟ってのはその程度だったのか?」
「・・・ッ!まだまだこれからだッ!!」

言いながらキリトは地面を蹴った。銀時も剣を構え直して間合いを詰めてくる。
2人の剣は超高速で互いの身体を切り刻んでいく。
キリトの剣は銀時の四肢で阻まれ、銀時の剣はキリトの小柄の身体に当たらず、二人の周囲では様々な色彩の光が連続的に飛び散り、衝撃音が闘技場の石畳を突き抜けて行く。
じわじわと2人のHPが減り続けていき、既に半分を下回る直前まできていた。強攻撃が命中しなくとも、どちらかのバーが半分を下回れば、その時点で勝者が決定する。

だが、キリトの脳裏にはそんな勝ち方は微塵も浮かんでいなかった。