銀魂 −アインクラッド篇−
・・・
『ソードアート・オンライン』
・第五十層 アルゲード エギルの店の銀時の部屋
「な・・・なんだこれ!!?」
「何って、見たとおりよ。さ、早く立って!」
アスナがキリトに強引に着せ掛けたのは新しい一張羅だった。キリトが好んでいた黒のコートと形は一緒だが、それとは真逆の純白。背中にひとつ巨大な真紅の十字模様が染め抜かれている。言うまでもなく血盟騎士団の制服だった。
「地味な奴と頼みましたが」
「地味よ?すごく地味。まるで道端にあるお地蔵さんぐらい地味なもんよ」
キリトは全身脱力して椅子に倒れ込むように座る。
―――あれから二日が経過していた。
銀時と戦い、最後の最後でヒースクリフが参戦、消耗しきった自分たちは彼に手も足も出せず敗北。銀時は案の定、血盟騎士団に拘束され連絡も一切とれない状態。副団長であるアスナであっても団長権限により面会をすることが出来ないという。一応、本日をもって拘束が解除となる見通しなのだが、その後の処分については一切不明である。
また、キリト本人も令に従って血盟騎士団の一員として七十五層迷宮区の攻略を始めることとなる。
「ギンさん大丈夫かな。何も無ければ良いけど」
「人の命まで奪うようなギルドじゃないから命の保証はあるわ。ただ、団長も相当怒っていたから、とりあえず解放された後から合流して事情を聞きましょう。あ、ちゃんと挨拶してなかったね。ギルドメンバーとしてこれから宜しくお願いします」
「よろしく・・・って、言っても俺は平社員でアスナは副団長様だからな」
ギルド・・・か。
キリトのかすかな嘆息に気付いたアスナが、向かいからちらりと視線を送ってきた。
「・・・なんだか、すっかり巻き込んじゃったね」
「いいんだ。俺が決めたことだ。それに・・・正直、勝ち負けはどちらでも良かったんだよ」
「なんで?」
「なんでって、それはもちろん―――」
アスナと一緒に居られるから。
「ッ!!んぐっ・・・」
「ど、どうしたのよキリト君」
俺は――――今、何と言おうとした?
キリトは口から出ようとしていたその言葉を両手で飲み込み、胃に戻す。
自分が無意識に言おうとしたその言葉が無性に恥ずかしくなり、次第に頬が赤くなったことを自覚した。
そんなキリトにアスナはぽかん、としてしまう。
「まあ、そう言ってもらえると助かるけど・・・」
「えッ!!?そう言ってもらえるって、俺にどう言ってもらったっけ!?」
「どうって、自分から『俺が決めた事だから』って言ったじゃない」
「そ、そうだったけか!!?あ〜そうだったそうだったッ!ははは〜・・・」
いつからだろうか?
こんなにも彼女を意識し始めてしまったのは。
ふと、キリトは無意識にアスナを見つめてしまう。
栗色の髪に透き通るような瞳。ぷくっとした唇に卵型の小さな顔・・・誰がどう見ても美人。そんな彼女と自分はずっと一緒にいる・・・あれ、俺ちょっとキモくない?なんかアスナを意識し過ぎてない?一方通行過ぎじゃない?さっきの説明何?ぷくっとした唇とか普通出てこなくない!?
なんか、ただの変態じゃない!?
ただのクラディールじゃない!!?
「俺っておかしいのかなァァァァッ!!?もう今まで状態変化起こりまくったせいか感情パラメーターがおかしくなっちゃったのかなァァァァッ!!?」
「はい!十分に君おかしいから今すぐその行動止めようっ!ねっ!?」
壁に何度も何度も勢いよく頭を打ち付けるキリトを見ていられなくなったアスナはキリトの右肩を掴み、静止させた。我に戻ったキリトは途端に恥ずかしくなったのか、顔を伏せつつ再び椅子に座った。
「全く、ギンさんと出会ってから本当に変わったよね、君。昔は・・・言って申し訳ないけど、そんなに明るくはなかったと思うよ」
「そ、そうかな・・・ずっと一緒にいたおかげで俺も少し変わったのかも」
「昔・・・か。ねぇキリト君。前々から教えて欲しかったんだけど、何故ギルドを、人を避けるのか・・・。ベータテスターだから、ユニークスキル使いだからってだけじゃないよね。キリト君優しいもん」
その言葉に、伏せていた視線をゆっくり上げる。
いずれは、話す事になるのかもな・・・そう思いながら心を許せる彼女には話そうと決心し、重い口を開いた。
「もうずいぶん昔・・・一年以上前かな。一度だけギルドに入っていたことがある、いや、あったんだよ・・・」
自分でも、意外なほど素直に言葉が出てきた。この記憶に触れる度に湧き上がってくる疼痛を、アスナの眼差しがとかしていくような、そんな気がした―――。
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w