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銀魂 −アインクラッド篇−

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「…あ?」

気がつけば銀時は見たこともない平原に立っていた。
無論、長い間住んできた歌舞伎町にこのような場所は無い。
それどころか、自分は先程万事屋に居た筈だ。
どういう経緯でこのような場所に来てしまったのか…意味がわからなかった。

「なんだよこれ、訳わかんねぇよ。銀さん天パーのままだし、ここどこよ」

冷や汗が身体中に流れていく。心拍数が高くなる。
次第に…己の状況を理解していく。

「あ、もしかしてあれ…あれか?あのヘルメットから流れている映像か?いや〜凄いね感服だわ!最近は3Dが流行っているけどこれ完全にリアルだよね〜360度振り向くことができるし、ほら、…土だって触れることできるし…いや、無い。これは絶対無い。無い無い無い!!」

冷や汗の量が多くなる。心拍数が更に高まる。
次第に己の状況の重大さが強くなる。

「いやこれ絶対無い!!!!だってあれじゃん!!?あれはあれだったわけだし、これはこれで絶対無い!!あ、きっとこれは夢だ!!そうだこいつぁとんでもなくリアルな夢なんだぁ!!!!ほら!だって頭にあのヘルメット着いてないし!!そうだこいつぁ夢だ!!!!」

笑ってはいるが実際この状況を一番理解しているは紛れもなく、自分自身だった。認めたくが無い故に自暴自棄になり宛も無く走り始める。

「うるせぇェェェェ!!!!あんたさっきから何様なんだァァァ!!!!偉そうに今の銀さんの状況を説明しやがって!!大体これ夢なんだよ!!あんたが何言おうとこれ絶対夢だからね!!?ほら!あそこに可愛らしい猪がいる!!お〜い猪ぃ!!もう動物でも良い!!一人じゃ心細いから銀さんの元にお〜いでぇェェェェ!!」


今の銀時が欲した物、自分と同じ生き物だった。
銀時は平原のを彷徨いていた猪のような生物に大きく手を振りこちらへと呼ぶ。
するとどうだろうか、猪のような生物はこちらに気がついたのか、走り寄ってくる。


「か、可愛い奴じゃねぇか〜欲言えば同じ人間が良かったけどまぁ良い。取り敢えずあいつ捕まえて一緒に誰かいそうな街か村でも行って…ん?」

銀時は気がついた。
猪はこちらに走り寄ってくる…が、あまりにもスピードが早すぎる。
本当に直前で止まれるのか?
いや、待て。よく見たらあれ…随分興奮しているように見えるが…。

「あれ、ちょっとやばくね?完全に銀さん狙われてね?」

猪は一向にスピードを緩めるつもりは無かった。
それどころかまるで銀時に突進するかのように更にスピードを高める。

「まぁ落ち着け。そう、これは夢なんだよ!!全く良い歳して変な夢ばっか見てよぉジャンプの見過ぎかなッ…」
銀時に何かが横切った。
汗をだらだら流し、自分の左腕を凝視する。
銀時の特徴の一つとも言える一張羅が綺麗に引き裂かれていた。
そしてこの時銀時はやっと自覚したのだ。

今、自分が立っているこの空間。

夢でも…3D映像でもない。

仮想空間-バーチャル-のような、現実空間-リアル-だということを。


次の瞬間、銀時がとった行動は一つ。

「逃げるんだよぉぉぉォォォォォッ!!!!何あれ!!?完全に銀さん殺す勢いだったよね!!?というか最近の3Dは凄いねェェェ!!!ホントッいやホント凄いわ!!凄すぎるァァァァァァ!!!!本当に命落とすとこじゃねぇかァァァァァ!!!!」

全速力で猪のような生物から銀時は逃げるが一向に距離は遠のかない。それどころか最初は1匹だったものが2匹…いや、3匹!さらに4匹へと増えていたのだ!!
反撃をしようにも腰には使い慣れた「洞爺湖」の木刀が無くなっており攻撃手段が一つも無い!!つまり、銀時の選択肢は一つ、逃げることだった!

「畜生!!抵抗しようにも手段がねぇ!!くそッ!!」

銀時は足元に転がってあった木の枝を持つ、苦肉の策だが何の抵抗もしないよりマシだった。だが…。

-Not Item-
「は?なんだこれ」

目の前に訳のわからない文字が浮かび上がり木の枝は結晶が割る音をたて消滅してしまったのだ!

「おいィィィィ!!ホントどういうことだこれ!!?なんだ!?俺は攻撃するなってことか!!?」

気がつけば周りには沢山の猪のような生物に囲まれていた。
つまり、八方塞がりだ。
何度も説明しているが銀時には攻撃どころか防衛手段が一切無い。
---絶対絶命だった。

「チっ。仕方ねぇなぁ。まぁいつまでも逃げてどうにかなるって訳じゃあなさそうだ。剣が無いのは辛ぇが…素手で相手だ」

猪のような生物は腹を空かせているのか図太い声が周りから響き渡り、地面を足でざっざ引っ掻く。銀時は逃げるのを諦め、腕まくりをし肉弾戦へ持ち込むこととした。

「おいおい腹減ってるのか?俺ァ糖分で出来てるから最高の食材かもな…けど…」

その時、猪達は一斉に銀時へと襲いかかった!!

「俺はてめぇらが思っているほど、軟弱じゃねぇぇぇェェェェェェ!!!!」








-「動かないでっ!!」-
「っ!!?」



ふと、後ろから声が聞こえてきた。
優れた己の反射神経を使用し、その言葉通りに身体を静止させる。
するとどうだろうか…自分を襲おうと迫っていた猪のような生物達が次の瞬間、空中を舞っていたのだ。

銀時は目を大きく開ける。

自分の耳に入るのは断末魔と斬撃音。

目に映るのは、『黒い一筋の閃光』


そして数秒と経たず、宙を舞っていた猪達は地面へと落ち、結晶が割る音を立てて消滅してしまった。


-「あんた…怪我はないか?」-

「あ…?」


今の状況を理解する。
おそらく自分へと訪ねているのか?少年の声が耳に入ってくる。
声が聞こえた方向へと身体を動かすとそこには一人の剣士が立っていた。

全身を覆うような黒い服装、大人しいスタイルの黒い髪、長めの前髪の下の柔弱そうな両目。そしてまるで女性のような細い顔。

「…女?」
「男だ」

可愛げの無い返答。
取り敢えず銀時は助けられた。
目の前にいる、少年に。

「へ、へへっ悪いな兄ちゃん。助かったわ」
「あ、あぁ…それより…あんたよくそんな剣も装備せずにいるな。いくら一般プレイヤーでも楽に攻略できるからといっても流石に丸腰装備じゃモンスター達の餌食になるぞ。あんた、レベルは?」
「は?」
「いやだから、レベルを…」
「……。」
(おいちょっと待て、何こいつ。一体何言ってるの?もしかしてちょっと痛い人?)

「なぁ、聞こえてないの?あんたのレベルは?」
「レベルっつうか、人生というレベルなら20代後半だけど?」
「おちょくらないでくれ。というかあんた、剣どころか僕具すら装備してないじゃないか。本当に大丈夫か?」
「…おほん、悪いちょっと状況が理解できねぇんだけど…というかお前誰だ。人の名前聞くんだったらまず自分から言いやがれ。銀さんがもしお前の親だったらこの時点で叱ってるからね」
「あ、あぁ。悪かった…。



俺の名前は『キリト』。一応ソロプレイヤーだ。ギルドには所属していない」



「………は?」


「いや、だからキリトだ。あんたは…今、『ギン』って言ったか?」


「………。」