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スカート

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【スカート】

「アキナさんの普段着ってどんなの?」
「……普段着?」
オブリビア地方のレインボ島にあるタルガの家でポケモンレンジャーであるアキナはパネマに質問をされた。
パネマはこの家の家主であるタルガの娘だ。
『ピチュ』
ウクレレを背負っているピチュー、ウクレレピチューがアキナと共に小首を傾げる。
「まさかこの服でいつも居る訳じゃ無いよね」
パネマに更に聞かれたことでアキナは何故パネマに普段着について聞かれたのかについて解った。
オブリビア地方に来てからと言うもの、アキナはポケモンレンジャーのユニフォームばかりを着ていて、
それ以外の服を着ていない。
ポケモンレンジャーのユニフォームは開発部が作り上げた最新の素材が使われている物であり、
暑さや寒さに強い。アキナがこの服を着ているのはモニタリングのためでもあった。
「家では普段着だよ。ポケモンレンジャーの仕事があるから着ているだけで」
「でも、今日は休みなんでしょう。私服のアキナさんが見たい」
「見たいとか言われても、服はユニフォームしか持ってきてないし」
レンジャーユニオンからオブリビア地方に派遣されて、オブリビアの危機を救ってから一度、ユニオンに戻り、
三ヶ月ほどして帰ってきたアキナではあるが、前と同じように手持ちの服はユニフォームだけだった。
荷物を軽くするためである。
「今日は休んでも良いってナツヤさんから言われたんでしょう。パネマの三つのお願いのうちの一つで、
ソピアナ島に買い物に行って、服を買おう!!」
ナツヤはアキナの従兄であり、同僚だ。
共にオブリビア地方に派遣されている。アキナが働き過ぎと言うことでナツヤは自分がアキナの分まで仕事をやると
アキナに休みをくれたのだ。
「タルガさんとレイラさんに頼まれた留守番は?」
「留守番についてはポケモンをキャプチャーして代わりに置いておけば良いんだよ」
タルガとレイラはパネマの父母であり、タルガはオブリビア地方のエリアレンジャーで、レイラは考古学者だ。
二人は今日、遺跡の方に出かけていてパネマが留守番を頼まれていた。
キャプチャーはポケモンレンジャーがキャプチャ・スタイラーを使って、ポケモンと気持ちを通わせることを言う。
心を通わせたポケモンはポケモンレンジャーの助けになってくれた。
アキナの右手首に着けている腕時計型のキャプチャ・スタイラーが電子音を鳴らす。
『置いておくならば、フシギバナが良いと想います』
「……Halloween」
『ピチュ!』
「決定! 準備するからアキナさんはキャプチャーをよろしくね!」
アキナがHalloweenと呼ぶのはキャプチャ・スタイラーに組み込まれている自動ナビゲーターだ。
これも試作品であり、アキナがモニタリングをしている。
遙か遠くの地方に来て、万が一本部であるレンジャーユニオンと連絡が取れなくなった時の対策として、
ナビゲーターシステムがアキナのスタイラーに組み込まれた。ウクレレピチューも買い物には賛成している。
やる気になったパネマは止められない。
「手元にいるのはチェリムとムウマージと……」
外で遊ばせているキャプチャーしたポケモンの名をアキナは呟いていく。
手元に任せられるポケモンが居ればキャプチャーはしなくてもすむ。名前を言っていき、任せられそうなポケモンが居たので
アキナは留守番を頼むことにした。



家の外に出るともうきんポケモン、ムクホークをキャプチャーしてから、パネマを乗せて、レンジャーサインをスタイラーで描き、、
むげんポケモン、ラティアスを喚び出す。ラティアスに加減をして飛んで貰いながら、アキナとパネマ、ウクレレピチューは
ソピアナ島に向かった。オブリビア地方は島々の集まりだ。レインボ島とミロンダ島にはブッカー大橋がかかっているが、
他の島々に行くには船や空を飛ぶぐらいしかない。
「着いたー!」
『ピチュ』
「ありがとう。ラティアス。ムクホーク、またよろしくね」
「服屋さんに行って似合う服を選ぼうよ」
アキナはラティアスとムクホークをねぎらう。二匹は空へと飛んでいった。
ソピアナ島にはアクアリゾートがあり、リゾート地として発展している。オブリビア地方で一番賑やかなところだ。
パネマがアキナの腕を引く。
「アキナちゃん、服を買いに来たの?」
「ツバサちゃん。パネマに連れられて……」
金髪に白と水色の長い耳のようなものが下に着いた帽子を被った白を基調とした服を着た少女がアキナに声をかける。
彼女はツバサ、鳥ポケモンが大好きであり、笛を使い鳥ポケモンを呼び寄せることが出来た。
「私もアキナちゃんの服を選ぶのを付き合いたいな」
「歓迎だよ!」
(女の子通しで買い物に行くのって久しぶりかも)
『ピチュ!』
特定の地域に在住しているエリアレンジャーも居るが、アキナのように任務が下れば各地で単独で任務を行うレンジャーも居る。
たまにチームを組むことがあっても、人数は少ない。休みなんてものは合わなくて、買い物にも出かけられない。
レンジャースクールに通っていた頃は同級生と買い物に行っていたが一人前のレンジャーになってからは買い物も一人で
行ってばかりだった。
ツバサの案内でブティックに行く。
「アキナさんは給料を何に使っているの?」
「……半分ぐらいはナツヤの家に振り込んで、もう半分は自分で使うけど、このところ使ってないかな」
「それならここで洋服をいっぱい買っちゃおう」
「こういうワンピースとか似合うんじゃないかな」
アキナよりもパネマやツバサの方が乗り気である。ツバサが手に取ったのは白いシンプルな半袖ワンピースだった。
「着慣れないから……動きやすい服にした……」
「ポケモンレンジャーのユニフォームとは違ったのにしたいよね」
「そうだよね」
白い半袖ワンピースが選ばれる。パネマとツバサは止まらない。
アキナも自分の服は自分で選ぶべきだと、服選びに入る。これがいい、あればいいと予算と相談しながら……使ってないので、
有り余っていたが……買っていった。
「着てくるから」
『ピチュピチュ!』
支払いを終わらせてからアキナは試着室に入る。
買った服を着てみることになった。
休日なのだし服も買ったのだからポケモンレンジャーのユニフォームで居てはいけないと言うパネマの意見に
ツバサも賛成していた。
二人と一匹が試着室の前で待っていると、数分してからアキナが着替え終わる。
試着室の扉が開いた。
「……どう?」
アキナはトレードマークのゴーグルや黄色いマフラーを外していた。
服は白いノースリーブの上着にピンク色のパーカー、赤いチェックのスカートで、足下は白のハイソックスだ。
着ていたポケモンレンジャーのユニフォームはブティックの紙袋に押し込んでいる。
「似合うよ。アキナさん、いつもと違う感じ」
「後は靴も替えたら完璧」
「靴も?」
「こうなったらとことんやるべき」
「靴屋さんはブティックから少し離れたところにあるし」
ウクレレピチューがアキナの足下に寄ってくる。
作品名:スカート 作家名:高月翡翠