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スカート

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服一式はブティックで揃えられたが靴はブティックで良さそうなものが無かった。アキナが履いている靴はユニフォームと同じ、
赤と青の靴だ。
「パネマもツバサちゃんも自分の服は選んでないような」
「選んだよ。シャツとスカート」
「私も」
アキナの服ばかりを選んでいてパネマもツバサも自分の服を買おうとしていなかったようだがそうではなかったらしい。
ブティックを出ると次は靴屋に行き、靴を買ってから、ソピアナリゾートで遊んだ。
ゆっくりと休んだのはアキナも久しぶりであり、ツバサから穴場の店を教えて貰ったりもした。
荷物は少ない用にとアキナは心がけていたが荷物は増えた。
一息ついた時には買い物に出た時は昼過ぎだったはずなのに夕方になりかけていた。
「夕方だし、帰った方が良いよね」
「またソピアナ島に遊びに来て。パネマちゃん、アキナちゃん」
「近いうちに来るよ」
ムクホークやラティアスの力を使えばひとっ飛びではあるが、帰るなら早めに帰るべきだった。
ツバサと別れて、アキナはムクホークをキャプチャーしてからラティアスをレンジャーサインで喚び出す。
行きと同じことをした。
帰り際にツバサに手を振り、アキナとウクレレピチューとパネマは空に飛び立った。
荷物があるためそこそこにゆっくりと飛び、家に帰る。レインボ島へと二人と一匹は戻る。
「ただいまー」
「おかえりなさい。パネマ」
「アキナ。休めたか?」
パネマが家に帰るとレイラとタルガが出迎えてくれた。家にはチェリムとムウマージが居た。
ご苦労様、とアキナが言うとチェリムとムウマージはそれぞれの場所へと帰る。
「休めました」
「夕飯は出来ているけれど、アキナも食べる?」
「アタシは遠慮します。ニックくんが落ち込むので……」
レイラの申し出をアキナは遠慮した。
アキナはオブリビア地方では、ブッカーじいさんの家を拠点としている。ドロップ島で出会ったのが縁で世話になっていた。
ナツヤも拠点としている。家にはブッカーじいさんの弟子であるニックが居てニックが食事を作るのだが、アキナが帰ってこないと
酷く心配してネガティブになってしまう。以前よりはまだ改善されたが。
「食べてけばいいのに」
「今度、ごちそうになるから、今日はありがとう。パネマ」
「また買い物に行こうね!アキナさん」
『ピチュ』
タルガ達と別れて、アキナは家の外に出た。
夕方から夜になろうとしていて、空気が冷えて行っている。ブッカーじいさんの家までは徒歩で十分ほどあれば着いた。
荷物を両手で持つ。
「……ニック君を理由にしちゃったけど、駄目だな……」
『駄目……食事を遠慮したことですか?』
Halloweenの機械音声にアキナは答えない。ウクレレピチューが心配そうにアキナを見上げた。
オブリビアを襲った一連の事件が解決してからアキナはタルガ達と過ごすことを躊躇っている。食事を一緒にしたりするのが
苦手となっていた。
「誰かと想ったらアキナか……?」
歩いて居るとアキナの前に金髪の髪の一部分に赤メッシュが入った青年が居た。
「レッドアイ?」
「服が違っていたから誰だろうとか想ったが」
「……服で人のことを判断しないで」
青年の名はレッドアイという。
オブリビア地方に暗躍していたポケモンナッパーズのリーダーの一人だったが、ナッパーズはアキナとナツヤが壊滅させた。
今のレッドアイはポケモンナッパーズを止めて、何でも屋のようなことをしている。
アキナはブティックで着ていた服のままだ。
「アクアリゾートで買ってきたのか……そこぐらいしか買うところはないだろうが」
「今日は休日だったから、この服はヨスガのブランドがデザインした服だって」
「……ヨスガ?」
「シンオウ地方のヨスガシティ。小さい頃に行ったことがあるけど、大きな都市だよ」
シンオウ地方はオブリビア地方から離れた場所にある寒い地域だ。
ヨスガシティはシンオウ地方の中では大きい都市であり、住みやすい都市ともされている。
「スタイラーはつけたままかよ」
「ポケモントレーナーのボールベルトみたいなもので無いと落ち着かないの」
「……ポケモントレーナー……か……お前はポケモントレーナーが居る地域出身なのか?」
ポケモントレーナーはポケモンをモンスターボールに入れて育てたりポケモンバトルをする人々の総称だ。
レッドアイはアキナの例えにピンと来ていない。シンオウ地方などでは普及しているように見えるポケモントレーナーだが、
オブリビア地方やアルミア地方ではポケモントレーナーは殆ど居ない。
「小さい頃はシンオウ地方に住んでたの。お父さんとお母さんが居なくなってからナツヤの両親に引き取られたんだ」
「居なくなった?」
「……シンオウの遺跡を調べていて行方不明になったの。アタシはその時のことは覚えていないんだけど……お母さんは考古学者でね……」
普段はアキナは自分のことについては話さないようにしているのだが、何故かレッドアイには話してしまった。
アキナは五歳までは両親と共にシンオウ地方で暮らしていた。父親がポケモンを調べている学者で、母親が考古学者だった。
優しい両親だったが、ある遺跡を調べていて、二人は行方不明となり、一人残されたアキナはナツヤの家族に引き取られた。
アキナの母親とナツヤの母親が姉妹だったのだ。遺跡にはアキナも居たと聞いているが、記憶がない。
何が起きたのか、覚えていない。
ナツヤの両親はアキナを本当の子供のように可愛がってくれたしナツヤとも友達や兄妹のように過ごした。
「お前の母親の職業、パネマの母親と同じだったんだな」
「……そうなの……偶然……オブリビアに来るまでは家族のことは考えなかったんだけど」
(それでか……)
レッドアイはアキナが落ち込んでいる理由を察した。アキナは無理に笑っている。
記憶がないと言っているアキナではあるが、徐々に想い出してきているのだろう。パネマやレイラ、タルガはいい人であり、
アキナにも優しくしてくれているがそのたびに両親を失ったアキナには幸せだった頃の記憶が浮かび上がろうとして、哀しくなるのだ。
『ピチュ……』
ウクレレピチューが背負っているウクレレを前に移動させて手に持って、ウクレレでメロディーを奏でだした。
アキナを励まそうとしているのだろう。長く長くウクレレを鳴らす。
「励ましてくれてるんだ。大丈夫だよ」
アキナは屈むとウクレレピチューの頭を撫でた。ウクレレピチューは何度か飛び上がる。
「帰るんだろう。送ってく。ついでに飯も頂くか」
「……レッドアイはレインボ島に何のよう?」
「雑用だよ。ナッパーズの仕事はもうしてないから睨むな」
「食事を頂くって厚かましい……」
送って貰わなくてもアキナは一人で帰れた。アキナがレッドアイの態度に呆れているとレッドアイはアキナに笑いかける。
「アキナ。その服、似合ってるぞ。スカートもたまには良いな。今度、デートでもするか?」
軽い調子のようで優しくレッドアイに言われ、アキナは黙り込む。
顔を赤くしてアキナは告げた。
「そんな暇はないから!」
作品名:スカート 作家名:高月翡翠