続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1
島が大きく息を吸った
「長官が記者会見に向かう時…私も同席します」
島がきっぱり言った
「島…」
藤堂が答えに困ると
「土方さん、古代、真田さんがいないとなると…私しかいません。私が乗組員を
護ります。でも…」
「でも?」(藤堂)
「もうしばらくここで養生したいです。地球よりここはあの地点に近いから…ここに
いた方があいつの声が聞こえてきそうな気がするんです」(島)
「島…」(藤堂)
「多分みんなもそう思っていると思います。家族は…クルーの申請で戻してやって
ください。私は帰ってほしいのですがまだ帰ってほしくないクルーもいるかもしれ
ないので…」(島)
「もう、帰ってもらっていいのか?」(藤堂)
「えぇ…向こうも気を使ってるのがわかるので…無事だとわかればいいでしょう。
私の仕事はそういう仕事です。」(島)
「わかった。それは私から伝えよう。戻るときは軍の特別機を用意するから」
藤堂はそう言うと“コーヒーは嫌いか?”といいながら自分のコーヒーを飲んだ
「少し…いろんな事を聞いていいか?」
藤堂の口調が変わったのがわかる。島がコーヒーを飲みながら“はい”とうなずくと
「ユキと真田くんの事は聞いたかね?」(藤堂)
「真田さんがユキの後見人だったという事ですか?」(島)
「そうだ、聞いてるか…実は…真田くんにお姉さんがいた事は知ってるか?」
島は何の事を話すのか想像できず藤堂の話に聞き入った
「真田くんがいたら話せない事なんだが…真田くんの両手と両足は義足だと
それは知っているよな?(島がうなずく)それが月面基地で起きた遊園地での
最初の事故だったんだ。真田くんに非はなかったが遊園地側の管理不足で…
その事故で真田くんはお姉さんを失った。
真田くんの成績は群を抜いていて当時訓練予備生があったらおそらく選ばれて
いただろう、というくらいの成績だった。ただ義手、義足、と言う事と科学に対し
て貪欲な研究が功を奏して…
でも当時は地球防衛軍は本当に勝てなかった。彼の友人はどんどん戦死して
逝った…
それは真田のせいではなかったんだが真田くんはそれを自分が勝てる武器を
開発できないせいだと思っていたようで…決してそんなことはないんだがな。
私は気分転換になればと思い当時医師になるために大学に通っていたユキを
真田くんに預けたんだ。ユキは医師になる予定だったが看護士が不足してるの
をどこからか聞きつけて看護士に志望変更するといい、その時すでに看護士と
しての知識は充分だった事と予算が余る事で軍の特別訓練に参加できるよう
手配したんだ。
真田くんは最初断って来たが私がどうしてもキミに指導してほしいと押し付けた
そうでもしないと真田はお姉さんの影を常に見ながら生きて行く、と思ってね。
カンは的中したよ。ユキが思いのほかいい方に働いてくれた。真田の様子も
ユキを預けてからすっかり変わってね…まるで恋人のようにそばに置いて自分
の知っている事全てを教えていたからね。
私がユキの事を知ったのは訓練予備生を選抜してる時だった。本当は訓練予備
生として軍に呼びたかったのだが本人が医者になりたいと、その意思が強すぎ
てとてもじゃないけど予備生として呼ぶ事が出来なかったんだ。医師になれな
いなら普通の中学に行くと言ってね…彼女はキミ達の学年のトップだったんだ。
運動神経も群を抜いていた。なれないものはない、んじゃないかと言うくらい…
それはすばらしいものをもっていたよ。
シークレットだったがヤマトは箱舟計画の艦だった。ユキは看護士として乗る
予定だったんだ。でも島と古代が持ってきたカプセルによって箱舟計画はなく
なりイスカンダルへ行く艦に変わったんだ。箱舟計画の時は真田くんは乗らな
いと断言していたがイスカンダルへ行くと変わった時ユキと一緒に行く決意を
したんだ。あれほど地球に固着していた真田くんが行くと聞いた時は驚いたよ
それで私は個人的に真田くんんとユキはこのままいい関係を築くのではない
かと想像していたよ。(笑)まさか古代とはな…すまん、話が反れたな」
「でも私も真田さんとユキは付き合ってると思いましたよ。第一艦橋で初対面なの
は真田さんとユキと徳川さん。ユキは病院で会っているけどほぼ初対面…その
せいか真田さんとユキはいつも一緒にいてユキも俺らといる時より楽しそうだっ
たんですよ。」
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1 作家名:kei