激ニブ星の恋人?
「銀時」
それでも、桂は立ち去らなかった。
「おまえは、いいかげんで怠け癖があって、その上、屁理屈でごまかそうとするところがある」
「説教なんざ聞きたくねェって言ったはずだ」
「だが」
桂は声を強めた。
「おまえは、侠気があって、苦境に陥っている者がいれば、それが見ず知らずの者であろうが、それがどれほど危険なことであろうが、その者を護るために戦う」
「俺ァ、そんな立派な人間じゃねーよ」
「そうやって、おまえは自分のしたことを打ち消して、相手に恩義を感じさせないようにする」
「ちげーよ」
顔をあげないまま、否定する。
落ち着かない。
けなされているほうが、まだマシだ。
すると。
「違わない」
桂は断言した。
「おまえは、おまえが思っているのより、ずっと優しい」
「そりゃ、テメーの思い違いだ」
また否定する。
けれど。
「おまえには、いろんな欠点もある。だが、それも含めて、俺は、おまえを信頼している」
揺るがない真っ直ぐな声で、桂は告げる。
「俺は、おまえを、大切に想っている」
視野に、桂の右手が入ってくる。
あぐらをかいた足の上に無造作に置いていた手の上に、その手が重ねられた。
自分と異なる体温を感じる。
顔をあげた。
眼が合う。
切れ長の眼が見返してくる。
それは、幼い頃から変わらない、生真面目で、嘘のない眼だ。
大切に想っているって、友人としてってことだろ。
そんなこと、わかっている。
わかっていても、心は大きく揺れ動いた。
手を動かす。
左手のほうにあった桂の右手が離れる。
その直後、腕をあげた。
桂のほうに、伸ばす。
伸ばして、その身体をつかまえる。
「銀時」
その身体を抱き寄せる。
「……酔っているのか?」
友人だとしか思っていないから、桂はそんな解釈をする。
酔っているのは、確かだ。
それが抱き寄せた理由ではないけれど。
「ああ」
しかし、桂の望む返事を、した。
抱きしめる。
その理由を。
知らなくてもいい、今は。