激ニブ星の恋人?
チョコレートを食べ終わった銀時が、桂を見た。
眼が合う。
銀時の手が伸ばされてきた。
頬に触れた。
だれかを護ろうとする大きな手。
信頼できる、力強い手。
身体が寄せられてくる。
近くにある顔に浮かんだ表情は優しい。
それを見て、自分の中でなにかが溶けていくような感覚を味わった。
たぶん、したいことは相手と同じ。
距離を無くしてしまいたい。
触れあいたい。
それから先のことも、したい。
が。
しかし。
銀時が動きを止めた。
表情を凍りつかせている。
「……どうかしたのか?」
桂は小首をかしげた。
直後、銀時は立ちあがった。
腹を押さえている。
「ちょ、ちょっと、トイレ……!」
早足で歩いていく。
姿が見えなくなってから、あせっているように廊下を駆ける足音が聞こえてきた。
部屋に残された桂は銀時の帰りを待つ。
だが、なかなかもどってこない。
気になって、桂はトイレに向かった。
銀時はまだトイレの中にいるらしい。
心配になる。
「おい、大丈夫か」
桂は戸の向こうへと声をかけた。
しばらくして。
戸が開けられた。
そして、銀時が姿をあらわした。
ゲッソリとやつれている。
桂は眼を見張った。
「まさか、俺の贈ったチョコレートのせいか……!?」
「いや、そりゃー違うだろー」
弱々しい声で銀時は否定する。
「食ってすぐには、腹ァくださねーよ。犯人はアレだ。ここに来るまえに食った危険物のうちのどれかだ」
娘たちの真心によるものらしい。
桂との約束どおり、それらをちゃんと食べた証拠でもある。
「うっ」
銀時が顔をしかめた。
「また、だ」
そう言って、銀時はトイレの戸を勢いよく閉めた。
どうやら腹の異変が治まらないようだ。
桂はトイレの戸をまえにして、ぼうぜんと立ちつくす。
結局、銀時は長いあいだトイレにこもりきり、ようやく出てきたときには疲れ果てていた。
今回も、やはり、関係が進展することはなかったのだった……。