激ニブ星の恋人?
夜もふけ、いっそう寒くなってきた。
外は相変わらず雪がひどく降っている。
それでも。
家の戸の鍵を開ける音が聞こえてきた。
居間にいた桂は立ちあがり、玄関のほうへ行く。
「スッゲー寒かったぜ〜」
銀時が三和土でブーツを脱いでいる。
その身体にも雪が積もっている。
鼻が赤い。
ずずっと、銀時は鼻をすすりあげた。
かなり寒かったのだろうな。
そう桂は思った。
「早くあがれ」
「ああ」
銀時が桂の横に来た。
床に水滴がぽたりと落ちた。
銀時の身体から散った、溶けた雪である。
ふたり並んで廊下を歩く。
居間に到着すると、銀時は暖房の近くに行った。
「あ〜、あったけーなァ」
凍えていた身体がやわらかくなっていくように見える。
その桂の視線を感じたらしく、銀時が眼を向けた。
「……ちゃんとアイツらからのチョコレート受け取って、全部、食ったぞ。どれも、スゲー味だったけどな」
ニヤと笑う。
しかし、桂は堅い表情のままでいる。
「そうか」
それから、机の上に置いてあった小さな紙袋の持ち手をつかんだ。
「約束の品だ」
手提げ袋を銀時に差しだす。
すると。
「おう」
銀時は受け取った。
その手を袋に入れて、中のものを取り出す。
さらに、梱包を取り去った。
あらわれた箱を開ける。
箱に入っているのは、もちろん、チョコレートだ。
それを見て、銀時は告げる。
「ありがとうよ」
その顔が。
ぱっと明るくなった。
嬉しいのだ。
それが伝わってくる。
たかがチョコレートなのに。
こんなにも喜んでいる。
どうかしている。
銀時は。
そして、自分も。
さっき銀時が顔を輝かせたとき、自分の心臓は跳ねた。
たかがチョコレート。
それを自分からもらって銀時が喜んでいるのが、自分は嬉しいのだ。
「うめェ」
さっそく銀時はチョコレートを食べている。
この男は自分の恋人だ。
つくづくそう感じる。