激ニブ星の恋人?
近藤、土方、沖田に向かってフラッシュがたかれている。
彼ら三人にカメラを向けているのは、大勢いる記者たちである。
記者会見が開かれているのだ。
「えー、指名手配犯の桂小太郎を逮捕したとお伝えしましたが、まったくの別人であることが判明しました」
近藤が淡々と説明している。
「それは誤認逮捕ということですね!?」
「別人を逮捕って、大問題ではないですか!」
記者たちから厳しい声が飛んできた。
それに対し、沖田が平然と答える。
「この世にはソックリな人間が五人いるって言いやすからねェ」
「いや、総悟、それは違うだろう」
近藤が間違いを指摘する。
「ソックリな人間は百人だろう」
「………三人だよ」
ボソッと土方が訂正した。
真選組屯所から、桂が出てきた。
桂小太郎とは別人であったとして釈放されたのである。
しかし、別人ではなく本人であるので、桂は事態がよくわからないといった表情をしている。
その桂の眼のまえに。
銀時が立っていた。
桂が釈放されて屯所から出てくるのを待っていたのだ。
気づいたらしく、桂は眼を見張った。
さらに、桂が駆けてくる。
銀時はそれを受け止めるために、腕を大きく広げた。
感動の再会……!
「心配かけて、すまなかったな」
桂は待っていた相手の胸に飛びこみ、抱きついて、そう言った。
その表情はやわらかい。
ただし。
抱きついた相手は、エリザベスだ。
エリザベスは「いえいえ、桂さんがご無事でなによりです」と書いたプラカードを持っている。
その横で、銀時が腕を広げたまま凍りついている。
だが、桂は近くに銀時がいるのに気づいていない様子だ。
「じゃあ、エリザベス、家に帰ろう」
エリザベスも銀時は眼中にないようで、「そうですね」と書いたプラカードで桂に返事をした。
桂とエリザベスが歩きだす。真選組屯所からどんどん離れていく。桂が潜伏先として借りている家に帰るのだろう。
ふたりの姿が見えなくなる。
道に銀時はポツーンと残された。
ふと、銀時はハッとした表情になる。
その眼を屯所へと向ける。
屯所の門の陰に、近藤、沖田、土方がいて、様子をうかがっている。
三人はきっと今までのことを見ていたのだろう。
近藤は慈愛に満ちた温かな眼差しを銀時のほうに向けている。
沖田はうずくまっている。
うつむいているので顔は見えない。ただ、全身が小刻みに震えている。笑っているのだ。
そして、土方は銀時と眼が合うと、サッと眼をそらした。
「いい天気だ」
空を見あげ、つぶやいた。
何事も無かったかのように装っている。
……装っているということが、バレバレなのだが。
土方は踵を返し、去っていった。
彼なりに銀時を気遣ったのだろう。
銀時は叫ぶ。
「俺ァ、誕生日で、主役のハズだろ!? なんなんだ、この扱い! ひどすぎるーーー!!」
そのあと、銀時は新八と神楽に回収され、万事屋で盛大に祝われた。