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a-o-wのボツ作品集

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『とある化学の幻想世界−ファントムサイド−』



−序盤−

-いいかい?夏也。…この世界には『幻想』なんてものはないんだ。身に起こる事はすべて現実。あの「科学の街」ならそれを証明してくれる。-


僕が小さいころ、よく父さんが話してくれた口癖だ。

この世界に、『幻想』なんてものはない。
すべて…現実。


そして、僕は…科学が発達した街、「学園都市」に入った。





いや…











「捨てられた」









………


「『春日 夏也』−はるひ なつや−っていいます!皆、これから宜しくお願いします!」


僕は、小学校、中学校の一般過程を終了し、高校生となった。
学園都市の第7学区にある、とある高校。
学校自体の偏差値も全体的に平均的、もしくは若干劣るぐらいの普通の高校。
名門校でもなければ、不良のたまり場でもない、普通で平和な高校だ。


−ねぇ、あの人の髪、茶色じゃない?−
−うそぉ不良?−
−でもでも、かっこよくない!?−


今は、高校に入学してから最初のホームルームの時間…自己紹介の時間だ。
僕は席を立ち、最低限の自己紹介をした…あまり目立ちたくなかったのだ。


−おいおい…不良と一緒のクラスかよ…−
−正直、かかわりたくないものだな−


もうすでに、僕の特徴的な髪色を見て、他のクラスメイト達の注目を浴びてしまった。


「ちょっとお前達、夏也の髪の毛は親の遺伝によるものなんだ、皆、仲良くするじゃん?」


担任の黄泉川 愛穂先生が僕をフォローしてくれた。…よかった、この学校には親身になってくれる先生がいるんだ。少し、気が楽になった。


僕の叔母は外国人で、僕の母親は日本人と外国人のハーフらしい。それで、僕の父親と結婚し、僕が生まれた。…つまり、僕は「クォーター」という存在らしい。
父親の遺伝子が強かったのか、顔立ちはほぼ日本人で、母親の茶髪が僕に遺伝してしまった。

髪を染めている訳じゃないけど、結構勘違いされて、昔から僕を見ただけで「スキルアウト」と馬鹿にされたり、避けられたりされてきた。
そんな気は、ないんだけどな…。


………


−あぁ!その学校に私の友達も行ったんだ!!−
−お前サッカー上手いんだってな!?今度、一緒にサッカー部覗いてみようぜ!!−


休み時間、初めて出逢う者達が交流し合う時間だ。
もうすでに友達ができたり、メールアドレスを交換している人たちの姿が見える。
うん…でも僕は…。



「はぁ…やっぱりこの学校でもダメか…」



僕を恐れて、…もしくは偏見を感じたのか、僕は皆から距離を置かれていた。
ちなみに、僕の席は教室の一番後ろで窓際の席だ。
…まぁ小学校でも中学校でも同じような事、されてきたから、もう慣れちゃったな…。



「大丈夫…いつも通り…いつも通りなんだよ…僕は…」

「僕は…なんだってぇ!!?」

「っ!!う、うあぁ!!!!」


突然、背後から勢い良く誰かが僕の肩に腕を乗せてきた。
いきなりだったので、僕は情けない声を上げてしまった…恥ずかしい。


「なぁなぁ!お前のその髪、染めてるの!!?かぁっこ良いねぇ!!!!」

「な、なんだよ急に!!染めてないよ!!」

「なぁんだ…つまんねぇーなぁ!!」

「つまんないって言われても…」


僕に話しかけてくれた人は、いかにも元気で活発そうな人だった。
特徴は…室内なのに何故か黒いニット帽を被っていて、鋭い目つきをしている割には愛想が良い…ちなみに顔立ちも良い。


「なぁなぁ、お前の名前なんだったけ!?」

「え、えっと、春日 夏也って言うんだ。君は?」

「ハルヒナツヤ?ハル…ヒナツヤか?それとも、ハルヒナ…ツヤ?」

「ハルヒ ナツヤだよ!!と、いうか今の下り、絶対わざとだろ!!」

「まぁなんだっていいだろ!!俺の名前は『緑陰 奏多』−りょくいん かなた−!!これからよろしくな!!夏也!!」

「えっ…う、うん!!よろしく、奏多君!!」


…とりあえず、高校生活は昔よりは充実した生活を送れそうだ。



−−−



「はぁ…はぁ…っ!!」


夕方…路地裏を全力で駆ける女子中学生の姿があった。
その女子中学生の後を、3人の男性が血相を変えてその中学生の後を追っていた。
…スキルアウトだ。


−まてゴラァ!!!−
−逃すとおもってんのかぁ!!−


「はぁっ…はぁっ…」


その女子中学生は数ある名門校の一つ、「常盤台中学」の制服のスカートと、特徴的な長い黒髪なびかせ、見た目とは裏腹にゴミ箱や障害物を華麗に避け、徐々にスキルアウトから距離を取っていった。


−クソ!あの女速ぇ!!−
−お、覚えていやがれぇぇぇ!!!!−










「はぁ…はぁ…逃げ切れ、た?」

常盤台中学の制服を身にまとった女子中学生は、路地裏から脱出し、人ごみに紛れながらスキルアウトから逃れていった…。

歩いていると、頬に一滴の水が空から落ちてきた。








「あ…今日は雨だった……」





−−−−



放課後、奏多は「バスケ部の活動を見学してくるわぁ!!」と、僕に残し、そのまま教室を後にした。
…僕は得意なスポーツなんて無いし、何かの才能があるわけでもない。
…いわゆる、平凡な人間だ。


それに…






僕の持つ『超能力』も、何の取り柄もない。






僕は「レベル3」…平均的な数値。
…でも、この高校では高い方らしい。







まぁ、この前に出会った『常盤台中学のあの子』のお陰で、少しまともな能力にはなったけどね。





とりあえず、僕は学校に残る理由なんて何もなかったから、そのまま下校することにした。

−ねぇねぇ、あれ見てよ!!−
−うっわぁ…マジかよ…−
−チっ…一年の分際で調子に乗りやがって…−


「…うぅ……視線が……」


全方向から他の生徒の視線が一気に僕に向けられた。
僕は怖くなり、一気に階段を駆け下りて、自分が住んでいるマンションへと全力疾走した。


「はぁっ!はぁっ!…あ」



突然、自分の頭上にポツリと冷たい感覚が広がった。
次第に空から止まることなく雨が降り注ぎ始めた。


「あはは…そうだ、今日は雨だったんだ。樹形図の設計者−ツリーダイアグラム−が予言していたのに、肝心な傘を忘れてたよ…はぁ…」


僕は仕方なく、どこか雨宿りできる場所を探した。
しかし、どこを探してもなかなか見つからない。


「はぁっはぁっ…あ、あそこが丁度良いかも!」


走っていると、バスの停留所を見つけた。
僕はこれ以上、濡れるのが嫌だったので、迷わずそこに入ろうとした…。


すると、そこには既に先客がいた。
…あの制服は…常盤台中学?



「はぁ…はぁ……あ…」



「……えっ……」





その子も雨宿りが目的だったのだろう。
肩の部分が多少湿っていた。
ちょっと前にこの停留所に入ったらしい。

その子は、綺麗な黒の長髪で、綺麗に分けられた前髪、…そして整った顔立ち。
まさに、お嬢様だった。


お互い、初対面同士。
そして、平凡な僕と、お嬢様な彼女。
作品名:a-o-wのボツ作品集 作家名:a-o-w