ゆわとポケモンと仲間の物語
崖に座っていた少女――ゆわは身体をビクリとさせてから恐る恐る後ろを振り返る。
何せ彼女はこの場所は自分ともう一人しか知らない特別な場所だと思っていたからで。
さっきの言葉からしてこの特別な場所に何十分もいたことが知られてしまってるみたいで。
特別な場所と言っても自殺するために用意した場所じゃなくて。
恐る恐る振り返ったのはその声がいつも自分に嫌なことをしてくる女の子のものだったからで。
想像通り、いつの間にか後方5mに女の子――あけみちゃんとその子のポケモンのチコリータが立っていた。
「無視してるつもり?何かしゃべったら?
それともこれから自殺するのにビビッて声が出ない?それなら手伝ってあげようか?」
「・・・」
さっきも言ったが、自分はこれから崖から飛び降りて自殺を図ろうとはひとつも思っていない。
ここは自分がたまたま見つけた場所で、この場所を知っているもう一人と待ち合わせをするための特別な場所なのだ。
実際、今も待ち合わせるためにここで腰掛けて待っているのだ。
けれどあけみちゃんにそれを伝えようとはしなかった、伝える気力がない。
なぜなら自分とあけみちゃんとの関係は一般論でいういじめられっこといじめっ子の関係なのだから。
作品名:ゆわとポケモンと仲間の物語 作家名:ゆめうつつ