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年上の男の子

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 尋ねれば、アルはまず壁の時計を見た。それから少し考える素振りを見せる。…そして。
「あの、大佐」
「ん?」
 ロイは、床に膝をついた格好でエドにブランケットをかけながら、アルを見上げた。アルはアルで、そのロイの優しげな手つきをちらりと見遣る。
「…宿そのままですし、…僕だけ帰ります」
「…?」
 ロイは不思議そうに小首を傾げた。
「…じゃあ、鋼のが起きたら私が送って…」
 彼は、わからないなりに一応そのように申し出てみた。と、最後まで言わせることなく、アルが首を降る。
「申し訳ないんですけど。…なかなか寝ろと言っても寝ない兄なので。折角寝てるんで、このまま今夜は預かっていただけませんか?」
 勿論、大佐がご迷惑じゃなければ、ですけど。
 付け加えるアルに、ロイは目を瞠った。
「…………。それは…かまわないが」
 全部は思い出せないが、アルとは昨夜随分派手にやらかした覚えがある。…エドを取り合って。それなのに、とロイの顔には困惑が生じていく。
「なら、よかった。…すいませんけど、…お願いしますね」
 だがアルフォンスはといえば、笑っているような声でそう言って、軽く頭を下げたのだった。
「………。…家族公認だ…」
 閉まるドアに向かって、ぽつりとロイは呟く。つまりこれはそういうことだと考えていいのだろうか。
 しばらくそうして余韻に浸っていた彼だが、はっとしてエドを見に行く。彼は変わらず丸くなって眠っていた。子供らしいまろい頬が微かに色づいている。暑いのかも知れない。よく寝ているけれども。
「…………」
 ―――最初に。
 ロイは少し苦く笑った。目にはただいとおしさだけを詰め込んで。
 最初に好きになったのは、何だったろう。瞳の強さ?伸びやかな態度?一途さ?目的に対する謙虚さ?弟への強い愛情と責任感?
 どれもが正解であり、またどれもが不正解であった。
 ロイは、床に膝をつく。そしてソファに肘を突くようにして、エドの顔を飽かずのぞきこむ。うるさげな前髪をはらって、そして見る者のない微笑をその面にたたえる。
 強い輝きに惹かれる虫のように、この子供に惹かれた。そこに恋という名前を与えたのは、自分が彼より大人だからだろう。もしも彼と同じなら、もっと違う気持ちでいられたのかもしれない。だが、現在そうでない仮定になど、何の意味も力もない。
「…君が好きだよ」
 ぽつり、繰り返し、眠るエドの手に顔を沈め、その額をつけた。祈るように。
「………っ…?」
 と、しばらくして、ロイの頭に撫でる感触が。恐る恐る目を上げれば、そこには眠そうな半目のエドの顔があった。とても近くで、エドは赤ん坊のように無心な顔をしてこちらを見ている。そして、空いた片手でロイの頭をそっと撫でていた。
「…はがねの…?」
「…。たいさ?」
 幾分舌っ足らずに呼んで、エドはあふ、と欠伸を殺した。
「…どした?…腹減ったのか?」
 言っていることは見当外れだったが、彼が自然に自分を気遣ってくれていることがわかり、ロイの顔が笑みに崩れる。
「…いや。…君が起きてくれないから、寂しくて」
 この答えに、エドはきょとんと目を瞬かせて。それからふわりと笑った。
「…ばかだな」
 いとおしむような手に、ロイは目を閉じてしまいたくなる。それでも、その続きを聞きたくて、それを言うエドの顔を見ていたくて、目を閉じないでいた。
「…拗ねるなよ。大佐は男の子なんだから。それに、オレならここにいるだろ」
 ゆっくり言ってから、エドはにこりと笑った。


 翌日東方司令部で「もうお泊りまでこぎつけたなんて、大佐もやる時はやるんですね」なんて言われるとも露知らずなその時の二人は、ほんわかと幸せだったり、した。その後二人の仲が進展したかどうかは、今のところ神のみぞ知る、ということで。
 ―――神ではなく、ホークアイ中尉とアルとした方がいいのかもしれないが?

作品名:年上の男の子 作家名:スサ