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スノースマイル

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「なんだ、やっぱさぼってやがったか。てか、えー、なんだよ、オレも腹減った!」
 残念だったな、と言ったロイに、エドは頬を膨らませる勢いで詰め寄る。
「こら、殴るな」
 手を上げるエドから逃げながら、ロイは笑う。
「また行こう。しばらくここに滞在したらいい」
「え?あ、えー、あー、…うん」
 常になく暖かい笑みを浮かべたロイに、エドは一瞬目を見開いて、…それから、照れくさそうに頷いた。
「さて。じゃあ君が迎えに着てくれたことだし、…司令部へ帰るか」
「うん、そうしろよ。もー、中尉がすごい怒ってたぜ」
「…なんだか、帰りたくなくなってきたんだが」
「いや、早く帰った方がいいんじゃねー?あれは一分遅くなるごとに怒られる度合いが深まると思うね。…アルと一緒だもんよ」
 同情たっぷりに、エドは渋い顔でロイに進言した。だが語尾がどうにも情けないのは…ご愛嬌、といったところか。
「……君も何か怒らせたのか?」
 エドは、ロイからの問いかけには答えず、そっぽを向いた。…何かやらかしたらしい。
 それにはふぅ、と小さく溜息をついて、それから、エドの顔をちらりとのぞき見る。すると、エドもその視線に気付いたのだろう。ちらりと顔を上げ、ばつが悪いような様子で小さく笑った。
「…ふふ」
「…はは」
 やがて、どちらともなく笑い出し、その笑い声は軽やかに冬の街角に響いていくのだった。


 そして、司令部への道すがら。
 やはり去年と同じように、ロイのポケットに左手をさらわれて、エドは歩いていた。気恥ずかしくはあったけれど、…今だけは甘んじることにする。暖かいのは本当だったからだ。
「…しかし、今日は冷えるね」
 半歩ほど先を行くロイが、不意に声をかけてきた。
 さっきから気になっていたのだが、ふたりの歩幅は大分違うのに、…やはり、ロイが先に行ってしまうことはない。だが、無理して合わせているという風でもない。ごく自然に、並んでくれている。
去年と、同じだった。
「ああ、すっげー冷える。もしかして今夜雪とか降るんじゃねーのかな?」
「さぁ、雪はどうだか…まだ早いんじゃないか」
「えー、そうかー?」
 ロイの苦笑混じりの答えに、エドはいささか不満気に口を尖らせる。
「オレは降るんじゃないかと思うんだけど!」
「君、それは…、降って欲しい、の間違いじゃないかね?」
 笑いを堪えながら尋ねるロイに、エドは「違う」と言い張る。しかし、空を見上げるその幼い横顔を見れば、―――どちらが本心かなど、考えるまでもなかった。
「…降るかもしれないね」
 いつかロイも、エドに並んで空を見上げていた。そして、穏やかに追従する。
「…降るといいね」
「…。だからぁ、オレはそういうんじゃなくてー…」
 子供扱いするな、とばかり、エドはロイを睨みつけたが、ロイにはそんな反応すらも楽しくてならないのだ。
「…ったく、違うっつーの…」
 ぶつくさ言うエドの頬が微かに赤くなっていて、ロイは、もう一度今度は心の中で繰り返した。
 雪が降ればいいね、と。
 雪が見たいと言う、君の願いのままに、と。
「さて。…じゃあ雪が降る前に、司令部へ帰ろう」
「へ?あ、うん。あ、大佐、絶対あのタルト食べに連れてけよ」
「勿論だとも。マダムも君に会いたがっていたよ」
「え?マジで?」
「ああ。マジだ」
「…大佐がマジとか言うとなんか変…違和感が…」
「ひどいな君は。私はこれでもまだ二十代なんだぞ」
「……そういうこと言っちゃうのがもうおっさんなんだよ、大佐」
 はぁ、とエドは溜息。そんな少年の手をきゅっと握りなおして、ロイは笑う。
「…君と会えてよかったよ」
「…は?」
 唐突に切り替わった話題に、エドは目を瞬かせる。
「行き違いになっていたら大変だっただろう?」
 そんなエドに、ロイはさらりと説明した。
 ああそのこと、とエドは軽く頷く。
「まあな。あんたの守備範囲広いからなー、探すのきっと大変だったぜ」
 それにはひどいな、と返しながら、ロイは思う。掛け値なしに、心から。言い訳にしたようなそんな、理由ではなくて―――、

 君と出会えて、よかった、と。





 そしてイーストシティの街路が白く染まるのは、もう少し先のお話。


おしまい


ちょっとしたよた話。

※1「スノースマイル」
 バンプ・オブ・チキンの歌より。アルバムだと「ユグドラシル」に収録。シングルで出て聞いたときはそれほどでもなかったのだけれど、聞いているうちにバンプマジックにはまったもの。そして最近アルバムが出て聞いていたら、もうこれ、ロイエドだよ!とまた勝手に盛り上がり、勝手に拝借。この場を借りて改めて申し訳なく…ほんとオフィシャル禁止に加えてバンプ禁止でもお願いします。「僕の右ポケットにしまってた思い出は、やっぱりしまって歩くよ/君のいない道を」っていう最後が切ないのにあったかい。曲をご存知の方は、ああ、スサさん…と遠い目をしていただくのも一興かと(どんな遊び方だよそれは…)。

※2枯葉→?
 スサさんは恐ろしく文系なので、化学変化とか全然わかりません。エドが教えてくれるって言っても多分無理(そもそもエドの教え方がうまいとも思えないが)。わかんない。宇宙の言語です。なんか…まあでもほら…枯葉とか水分飛んで粉々になるじゃないですか…そういう感じです。ご都合主義です。理科わかんなくてすいません。ちなみに数学も全然わかりません。

※3マスタングヒーター
 温室の仕掛け。
 マスタングがなんか、ちょっとした細工をして、冬でもあったかい温室にしてあります、という設定です。でもどんな仕掛けかはスサさん理科わかんないので以下略。いや、なんつーか、すごい単純に、彼はその焔の錬金術師なので、部屋とかあったかくするのなんか朝飯前かなあという…。そんだけ。ていうかやさしさとかをストレートには顕さないタイプだと思うわけなんですよ、ロイにしてもエドにしても!そこが似たもの同士っていうか。

※4「タルト・ポワール」
 洋梨のタルト。でも作中で洋梨というのも変(「洋」にあてはまらないというか…多分この世界には二十世紀梨とかこそないと思われる)だと思い、ポワール。なんだ、フランス語か?ほんとはタルト・オー・ポワールとかそんなんになるんですかねシャンゼリゼ?(はい?)なんか、どっかのお店で、十一月の間しか毎年洋梨のタルト作らない店がある、と新聞の日曜版かなんかに載っていて、そこから…。そういうわけで、お話の舞台は晩秋です。ちなみに私は洋梨のタルト大好きです(そんなことは聞いていません)。

※5喫茶店
 単なる趣味です。こういうお店があったらいいなあという趣味です。ほんとは喫茶店というか、コーヒー専門店です。でも、軽食を始めたらそれが口コミで広がって、という感じです。あんまり高いお店じゃありません。頑固親父とぽややんおばあさんが経営者です。パイがどうとかいうのは、深い意味はなくて、単に最近弟がやってたテイルズの中でピーチパイがどうとかこうとか言っていたのを脇で見ていたのが印象に残ったからでした(そんなもんなのか…)。ちなみに私はミートパイも好きです(何でも好きなんじゃねえか…)。

※6温室
作品名:スノースマイル 作家名:スサ