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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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「ケセセ、だろ?先、食ったけど、フェリちゃんのラザニアとボロネーゼが美味かったぜ」
「ヴェー、これだよ。食べて!」
「お兄さんのテリーヌも美味しいよ」
「本場のパエージャやで!」
俺の前にはいつの間にか各国の料理を盛られた皿がずらりと。うまうま言いながら食べた。

「俺のも食えよ。ローストビーフだ。別に、お前に食べさせたい訳じゃないんだからな!」

眉毛さんに差し出された皿の上にはローストビーフ。それを受け取る。…前に壊滅的に料理が下手なのを身を持って実感させられた俺としては、ちょっと大丈夫かと引く。…食っても大丈夫だよな?焦げてないし、普通にいい匂いするし…。…ってか、期待に満ちた目で見つめられて、いやー、ちょっとなんて絶対に言えない。
「食べても大丈夫。俺と菊が付ききりで見張って作ったやつだから」
「…そうですか。では、いただきます」
小声で髭さんにそうい言われ、口に運んだそれはぱさぱさしていたもののソースのお陰か思いの他、美味しい。
「美味しいです」
素直にそう言えば、眉毛さんはちょっとだけ目を見開いて、嬉しそうにへにゃりと笑った後、はっとした顔をして、
「当たり前だろ!!」
と、ツンに戻った。でも、俺の言葉が嬉しかったのか、まだ食えと寄越してきたのでパンに野菜を挟んで頂いた。うまい。

「そういや、バイト君、年、いくつなの?」

俺の食う様を眺めつつ、ワインを紙コップに注ぎ、髭さんがキャビアの乗ったカナッペを摘みながら訊いてきた。
「十八です」
「十八?ウソ、お兄さん、十四、五歳くらいかと思ってたわ」
「俺もや。本田といい、東洋人は年齢不詳やな」
どばどばと紙コップにシェリー酒の瓶を傾けた親分さんが言う。…俺から言わせるとこの人たちのほうが余程、年齢不詳だ。
「十八なら、ビール飲めるじゃん」
ずいっとうさぎさんがビール瓶を俺に寄越して来た。
「いや、日本の飲酒年齢は二十歳ですから、飲めません」
「ドイツでは十六から可だぜ。アルコール度数の高いスピリッツ類は十八からだけどよ」
「ウチも州に寄っては十八からだけど、十六でビールやワインは飲めるで」
「俺のところも飲酒は十六から。まあ、細かい規定があるけど、十八になったら全部大丈夫になるよ」
「ウチもだな」
「俺んとこは、二十一になってからなんだぞ!まあ、別に飲めなくてもコーラがあるから俺には必要ないけどね!」
「ヴェー、オレんところは十六歳から飲酒出来るよ」
「随分、早い年齢からアルコール可なんですね」
「お祝い事や祭りにアルコールは必須だからな」
「どこでも、お酒の事情は一緒ですね。でも、アルフレッドさんのところが二十一歳からと言うのは驚きました。もう少し飲酒年齢が低いと思っていましたが」
「禁酒法って昔、あっただろう?それの名残か、ウチはプロテスタントの厳格な保守的キリスト教を信じる人が多くて、飲酒そのものを罪悪であるという考え方が多いんだよ。それで基本的に未成年の飲酒は禁止。IDカードがないと酒は買えない決まりになってるんだ。後、飲ませたり売ったりしたら、罰則が科せられるんだぞ」
「へぇ」
勉強になるなぁ。…まあ、酒、飲んでみたいと思わないこともないけどどうしても飲みたいって感じじゃないしな。
「あの悪名高き、禁酒法か。…お前んとこは極端過ぎるよな」
「酒場でパブって裸で、大暴れするよりはマシなんだぞ!」
「っ!!」
ああ、顔合わせれば眉毛さんとハンバーガー君はこの調子だ。一体、何があってこんなんなんだろう?…まさか、独立戦争が原因とか言わないよな。すげー、昔の話だし。そう思っていると、それに髭さんが割って入った。
「裸はいいよ!開放的になれるし!」
「お前の場合は開放的になり過ぎなんだよ!」
「いいじゃない。裸、最高!もっと皆、解放的になるべきだと思うの!!」
「…お前の場合は行き過ぎだと思うが」
「だよな。股間、バラで隠してるだけじゃねぇか。よく捕まらねぇよな」
「ヴぇー、でも裸で寝ると、気持ちがいいよ」
「フェリシーアノ君、もしも火事が起きた場合、裸では色々と支障があるかと思います」
「同意だ。…と、言うか、裸で俺のベッドに潜り込んでくるのはやめろ!!」
「フェエリシーアノちゃん、俺のベッドに来ればいいぜ!」
「俺のベッドでもええで。ロマーノとふたりおったら、楽園みたいやんなぁ」
…内容がカオス過ぎて、とても俺にはついていけないので俺はやり取りを眺めつつ、食うことに専念する。本場のフレンチ、イタリア、スペイン、ドイツ料理とかって滅多に食えるものじゃないしな。

 しこたま食って飲んで、腹が膨れて、気がつけば日もとっぷり暮れて、夜間ライトアップされた桜の花がぼんやりと白く発光して見える。暫し、それに見とれていると、どんと衝撃が来た。

「何、見てんだ?」

右肩にすっかり赤くなった酔っ払いなうさぎさんが寄って掛かって来た。重さによろめきつつ、俺はその場に留まった。
「桜です。昼間見るのと違って、夜は夜できれいだなって」
「んー。だな。発光して見えるな。…ってか、日本人はこの花が好きだな」
「そうですね。ぱっと咲いて、ぱっと散る潔さがいいんじゃないですかね?」
「…菊もそう言ってた。潔いいのもいいけどよ、やっぱちょっとくらいは生き汚くねぇとな」
何に対してそう言ったのか解らない。だけど、随分と遠い目をしてうさぎさんは言う。
「俺は生き汚いお陰で、楽しい思いをさせてもらってるしな」
「…そうですね。生きてれば辛いこともありますけど、楽しいことのほうが多く感じられますよね。ギルベルト君」
いつの間にやら、うさぎさんの隣に本田さんがやって来て、桜の花の隙間から覗く真ん丸い
月を見上げていた。
「辛いことが多ければ、その分喜びもでかくなるからな」
「本当に。…六十年前は皆でこうして、お花見をすることなんて考えられませんでしたから、時代は変わったなとしみじみ思います」
「俺もだぜ。…変わったよな。…ホント、いつまでもこうしていられたらいいよな」
にへらとうさぎさんが笑い、本田さんが微笑む。なんとも穏やかな雰囲気に和んだのも束の間だった。

「コラー!!フェリシアーノ、こんなところまで来て、ナンパしてるんじゃない!!」

「えー、だって、日本のベッラ可愛いんだもん!!」
目をやれば仕事帰りに立ち寄りましたな風情いのナイスバディの美人OLさんを捕まえ、口説いているイタリア君に雷を落とすムキムキさんが。ムキムキさんの剣幕に驚いたか、OLさんは足早に立ち去ってしまった。…なんつーか、流石はイタリア男、パネェです。
「おやおや」
「結構、美人だったな。フェリシアーノちゃん、流石だぜ!」
いつものことなのか、ガミガミとイタリア君に説教を始めたムキムキさんを微笑まげにふたりは眺めている。

「お兄さん、暑くなって来ちゃったな!脱いでもいいかな?」
「おう、脱げや!脱いだれ!!」

ちょっと離れたところではストリップショーが始まろうとしていた。それに気付いたムキムキさんがまた怒鳴る。

「フランシス、公共の場で、服を脱ぐな!!」
「お兄さんの美しい裸体を皆に見てもらいたいだけよ?裸、最高!」