二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

INDEX|31ページ/42ページ|

次のページ前のページ
 

ねこの三角はこの前、俺が本田さんとうさぎさんとムキムキさんを連れて行ったケーキ屋さんの店名だ。ちなみに店名の由来は猫の顔が三角だから。パテェシエさんが猫好きを隠すのを止めたらしく、最近の店内は猫グッズ塗れになっていた。そのうち、喫茶スペースが猫カフェになるんじゃないかと俺はwktkしている。

「いいね」

と、言う満場一致の賛同を得て、それぞれの畝に空のコンテナを配備し、ムキムキさんが腕時計のアラームをセットし、芋掘り競争が始まった。

「アーサーには負けないんだぞ!」
「ハン!吠え面かかせてやるぜ!」

闘志を燃やしているひとが、ふたり。髭さんが「またか」苦笑する。バチバチ火花を散らすふたりはさておき、作業に入る。慣れているのか、本田さんと髭さんのコンテナの積み方が早い。意外にも堅実な作業でコンテナをいっぱいにしているのはうさぎさん、真面目にこつこつとやっているのはムキムキさんと眉毛さんで、勢いで作業を進めるのはハンバーガー君。何か、性格出てるなと思いつつ、俺も負けじと芋を掘る。皆が自分のペースで黙々と作業に励んでいるとアラームの音が鳴り響き、顔を上げた。

「集計を始める」

ムキムキさんが畝に並んだ芋が満載になったコンテナの数を数える。

本田さん、髭さん、五箱。
ムキムキさん、四箱。
俺、うさぎさん、三.五箱。
眉毛さん、三箱。
ハンバーガー君、二箱…。

「お前の負けだな」
「Booooooooooo!!」

ハンバーガー君からブーイングが上がるが負けは負けである。ハンバーガー君の肩を眉毛さんが実に爽快な顔をして叩いた。

「俺に勝とうなんざ、千年早いわ!」
「ムキー!!リベンジを要求するんだぞ!!」

悔しそうに地団駄を踏むハンバーガー君をまるっと無視して、ムキムキさんは軽トラにコンテナを積み始める。それを俺も手伝う。フハハハハと御機嫌な眉毛さんにムキー!となるハンバーガー君のファビョりぷりが可笑しい。それを宥め、残りの畝の芋を収穫していると、アキ婆が畦の枯れ草を集め、近くの雑木林から枯れ枝を拾ってきた。軽トラに積んでいた古新聞を使って、火を点ける。掘ったばかりの芋をアルミホイルに包んで、焚き火の中へと投下した。

「おお!これが伝統に則った焼き芋か!」
「そうなりますね。昔はどこでも見られた光景だったんですけどねぇ」

テンションの上がったうさぎさんに本田さんが懐かしそうに目を細める。芋が焼けるまで、時間が掛かるので、作業に戻る。暫くすると、アキ婆が皆を呼んだ。芋が美味しく焼けたらしい。

「熱いから、気をつけてね」

アルミホイルを剥いて、手のひらで転がしながら、二つに割る。ほくほくとした果肉があらわになる。それに食いつく。

「うめめー!」
「おいしんだぞ!!」

小学生のようにがっつく大人がふたり。それを見やる皆の目が微笑ましく見える。なんつーか、「しょうがないわねぇ」って感じ。本田さんは完全に孫を見ているような感じだ。

「おばあちゃん、おちゃもってきたよ!!」

ププーと再び、車の音に振り返れば、あかりさんとあかりさんの息子で五歳になる翔平君。車を降りて、駈け出して来ようとした翔平君は畑の真ん中で焼き芋を貪る外国人ズを見て、固まった。
「お、ぼーず、いいとこ来たな。芋、焼けてんぞ!こっちに来い」
手招きするうさぎさんにおっかなびっくり翔平君は寄ってくる。うさぎさんの横で芋を食ってたムキムキさんにびびりつつ、コンテナをひっくり返した即席の椅子の上に腰を下ろした。
「ほら、食え。お前の婆ちゃんの芋、美味いぞ」
うさぎさんは焚き火の中から?き出した芋のアルミを剥いて、半分に割って、翔平君に差し出し、笑う。それに釣られたか翔平君も笑い、うさぎさんから芋を受け取ると頬張り始めた。
「おー、流石、子育ての成功者は子供扱いが上手いやね」
髭さんの言葉に、眉毛さんが太い眉を寄せ、ムキムキさんが複雑そうな顔をした。本田さんはそれをニコニコと眺めている。ハンバーガー君はおかわりの芋を焼くのに余念が無いようだ。それを見やり、髭さんが口を開く。
「この芋でスイートポテト作ったら、美味しいかもねぇ」
「いいですね。是非、ご相伴に与りたいです」
「俺も!俺も!」
「俺も食べたいんだぞー!!」
芋を食いながら漏らした髭さんの言葉に本田さんが賛同し、食いしん坊のふたりが集る。その横で、翔平君がじいっとムキムキさんを見つめている。怖くなくなったらしい。それに居心地悪げにムキムキさんが身動いだ。
「…何だ?」
それに耐え切れなくなったムキムキさんが口を開く。
「メリーゴーランドしてください!」
キラキラと目を輝かせ、翔平君がムキムキさんに言う。ムキムキさんは眉を寄せた。
「メリーゴーランド?」
「メリーゴーランドって、腕にぶら下がって、ぐるぐるするやつ?」
俺が聞くと、翔平君はこくりと頷いた。
「おとーさんにやってもらうんだけど、すぐにヘバっちゃうの」
ムキムキさんならバテないと思ったのか、ムキムキだからか。子どもの期待に満ちたキラキラ光線の視線に負けたムキムキさんがしゃがんで、翔平君に腕を差し出さす。それに嬉々として、翔平君がしがみつく。

 ぶわっと、軽々、五歳児の体が宙を舞う。「きゃー!」と言う歓声に何事だと、皆が視線をくれる。「おお!」と漏れる声が聞こえる。

 ゆるやかに回転を止めたムキムキさんが翔平君を着地させると、うさぎさんとハンバーガー君がすっ飛んできた。
「ヴェスト、今の俺にもやれ!」
「ルイス、今の面白そうなんだぞ!俺にもやるんだぞ!」
あんたら、いい年した大人ですよね?…俺が突っ込もうか迷っていると、ムキムキさんは大きな溜息を吐いた。
「藪まで投げ飛ばしても構わないならしてやるぞ、兄さん。それとアルフレッド、兄さんは軽いからまだいいが、お前はな…」
うさぎさんをバサリと躱し、態とらしく嘆息し、ムキムキさんはハンバーガー君の腹回りを見やる。
「ひどいんだぞ!」
ハンバーガー君がまたもや、ムキーとなる。…やれやれ、今日は喜怒哀楽忙しい一日だ。






 収穫したコンテナを軽トラに積み、畑を撤収。アキ婆と共に戻れば、広い庭先は炊き出し状態になっていて、何事だと駆けつけたご近所さんも集まり、プチ宴会状態になっていた。準備が出来るまで時間が掛かるから、お風呂をどうぞと勧められ、トモ爺ご自慢の広い露天風呂に皆、ハイテンションで入浴。風呂後、お疲れさん会は交流会みたいになった。髭さんに近所のおばちゃん達はメロメロ状態(脱がなきゃ、髭さんはイケメンだからな…)、眉毛さんは戦時中海軍に仕官していたと言う爺さんと何やら意気投合し酒を酌み交わし始め、ハンバーガー君は出される食べ物を美味しそうに食べて、婆ちゃん達を和ませ、本田さんはアキ婆から糠床を分けてもらって、漬物談義に花を咲かせている。ムキムキさんは翔平君他、近所の子ども達に取り囲まれ困惑しつつも少し嬉しそうだ。そんな、ムキムキさんを眺めるうさぎさんの目がやさしい。

(連れてきて、良かったな)