コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ
神社を後にし、神社の裏山に登る。遊歩道があるお陰で歩きやすいが塗装されているわけではない。着物の皆は大丈夫かと足元を見やれば、本田さんを除いて、流石に靴を履いていた。…日頃の運動不足に息を上げつつ、山頂を目指す。空は徐々に白み始めて、黄色い帯が広がる。裏山は御来光を拝もうと俺らの他にもカップルや家族連れがいる。日の昇る方向に視線を向け、日の出の瞬間を待つ。
「…日の出ですねぇ」
ゆっくりと遠くの山並みから太陽が顔を覗かせ、ゆらゆらと上がっていく。それを皆で眺める。
「やはり、元旦に見る日の出は格別なものがありますねぇ」
「だな。身が引き締まる思いがする」
世界が平和でありますように。
昇る太陽に柄じゃないけれど、そんなことを俺は祈った。
さて、初詣を済ませ、御来光を拝み、どれ、帰って寝るかと思ってたんだが、うさぎさんに「雑煮を食ってけ!」と本田さん家に連行された。…まあ、家に帰っても、爺ちゃん婆ちゃん、親父に母さんは婆ちゃんの親戚の旅館に親族で集まるとかで泊りにいってしまっていないし、兄ちゃんは最近、彼女が出来たらしく、大晦日は彼女の家にお泊りらしい(リア充爆発しろ!)。…まあ、いっかと本田さんの家にお邪魔する。
「お雑煮は和風と洋風がありますが、どうしますか?」
本田さんに聞かれ、洋風って?と尋ねると、髭さんが特製ブイヨンを持ち込み、雑煮の出汁になるスープを拵えたらしい。それなら、そっちを食わねばと思う。庭では七輪でハンバーガー君とムキムキさんが餅を焼いている。この餅、クリスマスの翌日に餅つき大会を決行したときのものだ。
「餅が焼けたぞ」
漆器の美しい汁椀に餅を入れて、出汁を注ぐ。和風はすまし汁仕立てで、鶏肉にかまぼこ花形に繰り抜いた人参、三つ葉、椎茸のシンプルな雑煮だ。洋風は野菜が色々と入り、鶏肉が入っている。トマトの赤が目を引く。
「いただきます」
スープを一口。
「ウマー」
体も心も温まる美味さだ。雑煮を食し、今度こそ、お暇しようかと思ったが、今から皆、寝るのでお前も菊に風呂借りて、寝ろ。起きたら、耐久人生ゲーム大会をやるから、お前も参加しろと言う。大晦日、除夜の鐘を聴き終わった後、皆でずっと人生ゲームをしていたらしい。帰るに帰れなくなり、結局、本田さんのところで雑魚寝で爆睡。バイトの時間が始まるまで、白熱した人生ゲームに付き合わされる事になった俺だった…。
まあ、そんな感じで、今年一年も始まり、振り回されながら過ぎていきそうです。
作品名:コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ 作家名:冬故