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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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 この日、俺は夜中まで付き合わされるんだろうとバイトのシフトを変わって貰った。お土産に節分フェアで買った塩豆大福を土産に、本田さん宅へと向かう。いつもの顔なじみが既にもう揃って、卓袱台が二つ並んでその真ん中には豆を大量に盛った大皿がふたつ。空の皿と箸が四人分並べられていた。
「お、来たな!」
俺に気づいたうさぎさんが箸を動かしつつにんまりと笑う。俺は手にしていた紙袋を本田さんに預け、ムキムキさんが空けてくれた席に着いた。
「あの紙袋の中身は何だよ?」
「塩豆大福ですよ。好きでしょう?」
「おう!アレ、美味いよなぁ。お前、気が利くな!」
うさぎさんは更に御機嫌になった。…そして、問題の席順だが、隣の卓袱台のメンバーがかなり不穏過ぎる。ちなみに席順はこんな感じだ。

俺       うさぎさん       髭さん    眉毛さん
     豆皿                 豆皿
本田さん   ムキムキさん     親分さん  ハンバーガー君

何事も起こらなきゃいいんだけど、マジで不穏過ぎ。うさぎさんが仲間にいない分マシなんだろうけど、眉毛さんとムキムキさんをチェンジした方がいいんじゃ…と、思うが、うさぎさんとムキムキさんが「絶対、勝つ!」「俺は負けない!」と和気藹々と仲睦まじいことをやってるのを見ると、何か引き離せないし。…ってか、眉毛さんがそれをすげぇ羨ましそうに見つつ、ハンバーガー君をチラ見してるんだが、それをガン無視するハンバーガー君がある意味凄い。流石、世界のAKYは伊達じゃない。

「じゃあ、メンバーも揃いましたし、始めましょうか。…制限時間以内にお箸でお皿に大豆を移してください。一番多く、豆を移すことが出来た上位三名の方には賞品を準備してありますので、頑張ってくださいね」

本田さんの声に色めき立つ。
「菊、ソレって、菊とリツに有利な条件すぎないかい?不公平なんだぞ!!」
握り箸なハンバーガー君が抗議の声を上げた。それに髭さん、親分さんが同調する。
「そうだね。だって、使い慣れてる訳だし?」
「そや!ハンデが必要やで!!」
「…ハンデですか、…終了後に皆さんには二十粒づつ合計するということでどうでしょう?律君、構いませんか?」
「俺はいいですよ」
「皆さんは?」
異議なし!と言うことで、本田さんがタイマーをセットする。
「ポチくん、お願いします」
「わん!」
控えてた本田さんの犬がタイマーのスイッチをえいと押した。よく躾けられてるってか、賢けーと感心している場合ではない。俺は大皿に箸を伸ばす。

 まずは、一粒。

俺の対面に居る本田さんの箸さばきは物凄く華麗で、皿には豆がどんどん増えていく。意外にも上手に箸を使っているのは、うさぎさん。ムキムキさんも大きな手に細い箸は使いにくそうだが、善戦している。これは負けられないと俺も集中する。…でも、隣の卓袱台が気になって仕方がない。こちらはひたすら無言なのだが、向こうが物凄く、喧しい。

「あ、俺がソレ取ろう思っとったのに!」
「はっはは!早いもん勝ち!」
「ああっ、もう!全然、掴めないんだぞ!!」
「お前ら、うるせえ!エビフライぶつけんぞ!!」

エビフライぶつけんぞって、どこでそんな日本語、覚えてきたんスか、眉毛さん!!…突っ込み入れたいのを我慢しつつ、俺は気にしない様に「集中!集中!」と念じるがどうにも難しい。

「もー、親分怒ったで!!喰らえ、ふそそそそそそそそそ〜」
「何、それ?意味わかんないしー。ってか、お兄さん、脱いじゃう!!」
「もー、君たち、ウザい、アーサーよりも激しくウザいよ!!もー、全然、掴めないじゃないかー!!俺はヒーローなのに!」
「お前ら全員、黙れ!呪うぞ!!」

キラキラと星が飛び、衣服と薔薇の花弁が舞い、バキッと箸が折れ、どす黒いオーラが渦巻いていく。俺は助けを求めるように、本田さんを見やるが本田さんは気にもせず、豆を盛って行き、ムキムキさんもうさぎさんも我関せずで作業に集中している。

(駄目だ!俺はこの三人みたいに無我の境地には辿り着けない!!)

俺の心がぽきりと折れた所で終了のブザーがなる。それに「はー」と本田さんが顔を上げた。
「いや、爺、つい、夢中になってしまいましたよ」
「菊は流石だな。一番じゃないのか?俺も頑張ったんだが、及ばないな。兄さんはどうだ?」
「俺?…うーん、まあまあだな。…ってか、リツ、お前、たいしたことねぇのな」
俺の皿を見やり、うさぎさんが言う。
「…隣が気になって…」 
「甘いな。そんなもん気にしてたら負けるぞ。遊びとはいえ、勝負事には真剣にやらねぇと。な、ヴェスト!」
「そうだな。…でも、仕方ないだろう。あんなに五月蠅くてはな」
ゲームは終わったが、何やらモメている四人をちらりとムキムキさんは見やる。本田さんはそれを見やり溜息を吐いた。



 さてさて、勝負の結果だが、

一位 流石の圧勝で、本田さん。
二位 意外なことに、うさぎさん。
三位 堅実が物を言い、うさぎさんと二粒差だったムキムキさん。
四位 辛うじて、日本人の面目躍如な俺。
五位 エビフライぶつけんぞな、眉毛さん。
六位 ふそそそそ、謎の呪文な、親分さん。
七位 何で脱ぐ必要があるんだ? 髭さん。
最下位 箸、破壊。ハンバーガー君。

…と、なった。



「…さて、賞品ですが私は主催者ですので、辞退させていただきます。二位から四位の方に賞品を授与したいと思います」

二位のうさぎさんには虎屋の太棹羊羹セット、三位のムキムキさんにはリラックマの対面写真立て(正月に撮った皆の集合写真&うさぎさんとムキムキさんが仲睦まじい写真入り)が本田さんから手渡され、うさぎさんは「菊、愛してる!」と叫んで、本田さんにハグするわ、「ドイツに来た際には全領邦を上げて、歓待する!何でも言ってくれ!!」と、ムキムキさん。それに満更でもない顔な本田さん…。…ってか、賞品のセレクトから見るに結果を多分予測してたんだろうなと思う。

「さて、律君にはこれを。古いもので悪いんですが…」

本田さんが俺に差し出して来たのは一冊の古いアルバムだ。そのアルバムを受け取り、本田さんを俺は見やる。口を開きかけた所で、うさぎさんが首を突っ込んできた。
「お!コレ、キュウゾーが居た時、作ったアルバムじゃん。ウチにあったのは空襲で焼けて、今は坊ちゃんとこにしかねぇんだよな」
「懐かしいな。後で、見せてもらっていいだろうか?」
「…はい。…でも、これ、本当に頂いていいんですか?」
本田さんを見やると、本田さんはにっこりと笑った。
「私はもう既にデータ化しましたので。よければ、ルートヴィッヒさん、データを差し上げましょうか?」
「それは助かる」
アルバムを開く。色褪せた写真の中にはうさぎさん、本田さん、ムキムキさん、ここにはいない貴族さんや姐さん、イタリア君がいる。その中に若かりし頃の爺ちゃんが居た。それを見て、俺はとても不思議な気分になった。昔は爺ちゃんが、今は俺が皆の輪の中にいる。それは本当に偶然が生んだ奇跡に近いことなんだろうと思う。