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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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ハンバーガー君と眉毛さんとカレーのお話。





 今日はバイト先の話ではない。某カレー屋でばったりと会ったハンバーガー君と眉毛さんの話をしたいと思う。

 その日は学校は休みで、前夜にはバイトもなくぐっすり久しぶりに爆睡して、昼前に起きて来たら、いつもはいるばあちゃんもじいちゃんもいないし、鍋にも炊飯器にも昼飯がない。かといって何かを作るのも面倒だし、カップめんを食うのも嫌で、駅前のマックにでも行こうかと着替えて家を出た…のだが、カレー屋の前を通ったら無性にカレーが食いたくなって来た。ハンバーガーにするか、カレーにするか?…俺が暫し悩んでいると後ろからぽんと肩を叩かれ、驚いた俺はその場で「ぎゃ!」と悲鳴を上げて、背後を振り返った。俺の叫び声に驚いたのか手を浮かせたハンバーガー君と太い眉を上げた眉毛さんがそこには立っていた。

「…こ、こんにちは…」

どう反応しようかと悩んで、取り合えず挨拶が先だろうと俺は口を開く。それにハンバーガー君はほっとしたように笑った。
「君が悲鳴をあげるから、人間違いしたかと思って、びっくりしたよ!君、コンビニのバイト君だよね?」
「はい。そうです。…お客様は何故、ここに?」
「そんなの、カレーを食べに来たからに決まってるじゃないか!!君は違うのかい?」
HAHAHAHAと何故かアルファベットに聴こえる笑い声を上げて、ハンバーガー君が俺の肩をバシバシと叩いた。…痛い。
「ハンバーガーにしようか、カレーにしようか迷ってるところなんです」
俺が言うと、ハンバーガー君はニカっと笑った。
「迷う必要なんかないんだぞ!カレーを食べて、おやつにハンバーガーを食べればいいじゃないか!!」
カレー食って、おやつにハンバーガーはちょっと胃がもたれる気がします。
「バーカ。主食をおやつにするな。だから、お前はメタボなんだよ」
隣で今までずっと黙っていた眉毛さんが馬鹿にしたようにハンバーガー君を見やった。
「うるさいなぁ。俺が何を食べようが俺の勝手じゃないか」
「三時にはアフタヌーンティーで、スコーンとかケーキとかサンドウィッチとか軽いものを食うのが当たり前だろうが」
「悪くはないんだぞ!君のスコーンさえなければだけど」
ピシッと空気に罅が入るような音が聞こえた気がした。眉毛さんの口端がピクピクと痙攣しているように見えるのは俺の気のせいだろうか?
「本当に不味いんだぞ。ゴリゴリするし、石炭食べてるみたいだし、外見は真っ黒なのに、中は生焼けって、本当に不思議で仕方がないんだぞ!君もそう思わないかい?」
何で、俺に話を振るんスか!見たことないし、食ったことないから同意を求められても困るっての!!
「いや、俺は実物見たことも食べたこともないんで…」
「一度、食べてみるといいんだぞ!あれを食べた後は何を食べても美味しく感じられるんだぞ!」
「…はあ」
ハンバーガー君にそこまで言わせるスコーンって食べ物は俺の知ってるスコーンを違うんだろうか?ウチの店でチョコチップ入りのスコーンを売ってるが少々、口に粉が残るような感じがするが牛乳と一緒に食すと美味しかった記憶があるのだが。
「…てめぇ、」
低い声でハンバーガー君を睨むちょっと涙目の眉毛さんに俺は慌ててフォーローを入れた。
「たまたま、失敗しちゃっただけなんですよね?本当は凄く美味しいんでしょう?」
その言葉を俺が死ぬほど後悔する羽目になるのは一週間後の話だ。…俺のフォーローもどきに眉毛さんは違う感じに緑色の瞳を潤ませた。
「そ、そうなんだよ!…ちょっと、焼き過ぎちまっただけで!本当は、凄く美味しいんだからな!!」
「…嘘ばっかり…」
小声でぼそりとハンバーガー君が言う。
「今度、持ってきてやるよ!…べ、別にお前に食べさせたいとかそう言うんじゃないからな!」
…初めて、ツンデレを生で見たよ、俺。…某スレでイギリス人は大概ツンデレな描写だが、マジだったのか。
「楽しみにしてます」
社交辞令だろうとそう言えば、ハンバーガー君が俺に小さく耳打ちしてきた。
「…俺は知らないんだぞ。…死なないでくれよ!」
死なないでくれよって、そんなにヤバいもんなの?…まあ、実際、その場で卒倒して、救急車を呼ばれそうになったのだが、それはまた別の話だ。…何だか、眉毛さんにいいヤツ認定された俺はハンバーガー君と眉毛さん共に、カレー屋に連行された。




店内に入り、それぞれ注文を済ませ、何でこんなことになったのかと思いながら、おしぼりで手を拭く。袖触れ合うも多生の縁とか言うし、どこの出身なのか思い切って聞いてみよう。

「えーっと、おふたりはどちらのお国の方なんですか?」

俺の予想を言おう。ハンバーガー君は絶対、アメ人、眉毛さんは英国人だ。

「アメリカなんだぞ!」
「UKって、言って解るか?」

…まんま、だ。俺は頷いた。

「遠い所からいらしてるんですね。…よく、一緒にご来店されますけど、仲いいんですか?」
その質問は鬼門だった…らしい。

「良くねぇよ!」
「心外なんだぞ!!」

と、言葉が返ってくる。仲良くないんだったら、何で、一緒にコンビニ来たり、こうして飯食いに来てるんだ?…と、思いつつ、次の言葉を探してると注文していたカレーが運ばれてきた。俺のはオーソドックスにカツカレー、ハンバーガー君はチーズカレーにフライドチキン、海老フライ、メンチカツ、ハンバーグをトッピングの大盛り…、高校球児だって今時こんなに食わねぇだろうな高カロリーなボリューム。皿から海老の尻尾がはみ出してる。眉毛さんはエビ煮込みカレーだ。
「…お前、食いきるのかよ?」
そのボリュームにげっそりした顔で眉毛さんが言う。
「勿論なんだぞ!」
食いきるのか、これを。揚げ物てんこもりじゃないか。確実に胃に負担を掛けそうだよな。ハンバーガー君の胃袋はどうなってるんだろうか。…俺がそんなことを思ってると、眉毛さんがブザーを鳴らした。店員さんが呼ばれてやって来る。
「野菜サラダを追加で」
「かしこまりました」
店員さんがすぐに野菜サラダを持ってくる。それをハンバーガー君の前に眉毛さんは置いた。
「野菜も食え」
「本当に君はお節介だな。…まあ、口直しには悪くないんだぞ」
…本当に仲、悪いのかな?…なんと言うか、微妙な感じ。俺は自分の皿に手を付ける。

「…それにしても、日本はすげぇなぁ」

ルーとライスを掬い、口に運んだ眉毛さんがぽつりとそう言葉を漏らした。
「何がですか?」
「知ってるか?カリー・アンド・ライスの発祥は元はウチなんだぜ。インドからウチに渡って、海軍経由で日本に伝わったんだ」
「…あ、聞いたことあります。横須賀の海軍カレーとか有名だし」
「元はビーフシチューだったんだぜ。それにカレー粉混ぜたヤツを海軍の糧食として使ってたんだ。それが、肉じゃがになったり、このカレーになったりよ。ホント、どうなってんだ?」
「どうなってるって言われても…。カレーって普通、こんなのじゃないんですか?」
「ウチで一般的に言うカレーはチキンティッカマサラが一般的だが、これは煮込み料理でこんなに焦げまくったチャウダーを、ぶっかけたって感じじゃねぇし、こんなにドロドロしてねぇよ」
スプーンでルーを掻き混ぜ、眉毛さんが言う。