コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ
「ウチのカレーもスープぽいし、こんな感じじゃないなぁ。初めて、菊のところで夕飯で出されたときグロテスクなこれが食べ物なのか疑ったよ」
と、ハンバーガー君が言葉を続けた。
「グロテスク…すか?」
見慣れている所為か俺にはそうは思えない。
「嫌だなって思ったけど、思い切って、騙されたと思って食べたら凄く美味しかったんだ。信じられないよ!ホントに、コレだけでも十分美味しいのにフライをいれると更に美味しいなんて、詐欺だよ!」
ハンバーガー君がカレーに塗れたエビフライを二口で片付けた。
「どうやったら、こんなにクリーミーになるんだよ。理解出来ねぇ!ライスも美味いし、何か、同じ島国なのに、何でウチとこうも違うんだ?…腹立つぜ」
…そんなの、知らんがな。文句を言いながら食べ進める眉毛さんに思う。
「なんて言うか、この味が忘れられなくてさ。地元にこの店のチェーン店が出来たときは、一ヶ月くらい通ったよ」
「一ヶ月?」
「トッピングに辛さを変えれば、三食いけるぞ!」
ソレ、自慢げに言うことじゃない。なんかもう、中毒ですよね?
「三食はキツイでしょ」
「そうかい?…でも、やっぱ、菊の作ったカレーが一番美味しいよね、アーサー」
「だな。…一体、どんな秘密が。…前に作ってるとこ見てたんだが、普通だったし。…あ、でも何か固形の茶色いヤツ入れてたな。アレはなんだったんだ?」
それはスーパーで売ってる固形のカレールーだろう。あれと玉ねぎ人参、鶏でも豚でも牛肉でも箱裏の説明書通りに作れば、日頃料理をしない俺やちょっと小さな子どもだって、おいしいカレーが出来るのだ。
「市販で売ってるカレールーじゃないですか。スーパーに行けばいっぱい種類がありますよ」
「そうなのか?」
「へー。それを使えば、菊が作るカレーの味になるのかい?」
俺は何と言おうか、迷う。
「似た味になるとは思いますが、菊さんが作るカレーとは違うものになるんじゃないですか?」
「何でだ?材料が同じでも違うのか?」
店で食べるカレーはいつも同じ味でも、家で作るカレーは店のカレーとは違う。それは、何故か?
「作ったひとの愛情が入ってますから。俺もこの店のカレー好きですけど、一番は母さんの作るカレーだと思ってるし」
…あ、俺、今、何か、スゲー恥ずかしいことを言った気がする。…引かれたか?そう思いつつ、俺は顔を上げた。
「…あー、だからか…」
それにぽつりとハンバーガー君が呟いて、それに俺と眉毛さんは首を傾けた。
「だからって、何だよ?」
「何でもないよ。それより、早く食べなよ。冷めちゃうんだぞ!」
がつがつと勢い良く食べ始めたハンバーガー君につられるように俺と眉毛さんもカレーを食べることに専念した。
「…あー、何かアイスが食べたいんだぞ!」
ハンバーガー君は一皿目を平らげた後、オムエッグカレーにクリームコロッケをトッピングしたカレーを注文し、眉毛さんを呆れさせていた。…見ていた俺は、何かもー、腹いっぱいで胸焼けがする。夕御飯入りそうもない。
「お前、まだ食うきかよ!!」
「アイスは別腹なんだぞ!!」
ん、確かに別腹かもしれないが。…ハンバーガー君に引きずられるがまま、デザートまでお供するハメになった俺だった…。
作品名:コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ 作家名:冬故