続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 5
「ミオ…」
第一艦橋からサーシァがその様子を見て涙を流していた。自分はイスカンダルまでずっと両親と一緒だから別れは近付いているけどもうしばらく一緒にいられる…
「長官が戻られる…出航準備はいいな?第一艦橋に戻ったらすぐ出航だ…よし、
タラップ、錨を上げろ。」
島はそう言うとそっとサーシァの肩を叩いて
「ここはいいからご両親の部屋に行って…一度月面基地に寄るまで一緒に
いて…スターシアさんを頼む。」
サーシァは涙をふくと敬礼をして第一艦橋を出て行った。…と入れ替わりで藤堂が入ってきた。
「YUKI出航準備完了です。」
島が報告すると藤堂はうなずいた。
「YUKIイスカンダルへ向け発進!」(藤堂)
「YUKIイスカンダルへ向け発進!」(島)
藤堂の命令を島が復唱してYUKIは出航して行った。
「ミオ…」
ミオの肩をユキの母が抱いた。
「お母さん…行っちゃった…。」
ミオは涙を拭きながら言った。
「そうね、行っちゃったわね。」(母)
「地球に住む、って言葉を期待していたの。私、お母様の事やっぱり理解
しきれないみたい。」
ミオがドッグの水面を見つめながら話す。
「お姉様はお母様を理解してる…。私はイスカンダルより地球が好き。
お父さんとお母さんのいる地球が好き。だからお母様にも地球にいてほし
かったけど…お姉様の言った通りお母様はイスカンダルへ帰って行った…」(ミオ)
「スターシアさんは地球の事、好きだと思うわ。」
母の言葉にミオが振り向く
「だって…愛する人が産まれた星ですもの…ただ今はひっそりふたりで暮ら
したいのよ。いつでもこちらは受け入れられる…それでいいじゃない。」(母)
「お母さん…。」(ミオ)
「二人がいない時にゆっくり話できたから聞いたけどヤマトがイスカンダルに
来た時“地球へ行く事”を拒んだ、って話してらしたわ。だけど娘のために
イスカンダルを留守にする勇気を持てた、って。自分でも信じられないって
言っていたわ。それでいいじゃない。イスカンダルも大事だけどそれ以上に
あなたたち二人がとても大事だ、って事なんだから。さぁ戻りましょう?
係りの方も私たちがいたらいつまでも帰れないでしょ。」
母はそう言うと係員に案内してもらってドッグを出た。
「ミオ…」
軽い振動でYUKIが出航した事を感じたスターシアはミオの名前を呼んだ。
「スターシア…下りるなら今だよ」
守がスターシアを見つめる。…が、スターシアは静かに首を振った。
「あの子は大丈夫…強くなりました。」(スターシア)
「そうだね、あの頃と随分変わったね。」(守)
「ミオはお父様とお母様に地球に残ってほしかったの。もちろん、私も同じ。
だけどお母様はイスカンダルの女王…」(サーシァ)
「えぇ…こうしてここにいる事自体許される事なのかわからないわ。」(スターシア)
「スターシア、許す、許さない、はイスカンダルが決める事じゃない。
キミ自身が決める事だよ。こうして地球に行く事を決めた…スターシアは
自分を少しイスカンダルから解放したんだ。すごい事だと思うよ。ただ…」(守)
「ただ?」(サーシァ)
「スターシアには賑やかすぎる。イスカンダルで静かに暮らそう。」
守がそう言うとスターシアは静かに頷いた。
しばらくすると大気圏を脱し、月へ向かって航行していた。
「月基地で荷物を下すから少し滞在するの。そこで積むものもあるから…
2時間滞在してヤマトの消滅地点で少し時間を取るわ。少しあわただしい
けど…じゃぁ私第一艦橋に戻るわ。何かあったら呼んでね。」
サーシァは二人を部屋に残し第一艦橋へ向かった
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 5 作家名:kei