二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

INDEX|12ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

第59章 アレクスの軌跡


 アネモス神殿の最奥にて、アレクスは目を閉じ、静かに瞑想していた。
 スターマジシャン、シレーネにより魔術の訓練をしている最中であった。
 シレーネと同じ様な力を得るためには、自らの属さないエレメンタルのエナジーを扱うことが必要であった。
 アレクスをはじめとしたエナジストは、自らのエレメンタル以外のエナジーはどうあっても使うことができないことは彼自身周知であった。しかし、そのような法則をもねじ曲げる事のできる力があった。
 魔女による魔術。これこそが理を変えてしまう要素だった。
 アレクスが魔術の修行を始めてから、およそ一年の月日が経っていた。その間に、アレクスは魔女から様々な魔術を授かることができた。
 一つは空中浮遊。もう一つは。
「マインボール!」
 突如として、アレクスの頭上から大きな光球が振り返った。
 巨大な光球は、地に着弾すると爆発を起こした。強力な爆風が辺りに吹き荒れる。
 爆発し、消滅した光球の下には、アレクスがいるはずだった。しかし、そこにはアレクスがいた痕跡も残っていない。
 光球が落とされた場所から少し離れた所に、空間に水泡が集まり人型が作られていく。やがて人型は完全な姿になると身に纏う水を弾き、本来の姿を露わす。
 アレクスのもう一つの魔術、それは己が身を水へ変え、気体となり一瞬にして空間を移動するものだった。
 空間に再び現れたアレクスに、今度は三つの赤く、黄色のまだら模様のある、人の頭ほどの大きさのボールが襲いかかる。
 アレクスは一瞬念じると、風を纏って空中を浮遊した。襲いかかってくるボールは三つ互いにぶつかると、爆発した。
 アレクスの動きは止まらない。
 次に襲いかかって来たのは、紫色に染まった、先ほどと同じ大きさのボールである。
 ボールはパリパリと帯電しており、アレクスにねらいを定めると、電撃を放った。アレクスは前後からの電撃を再び空間移動でかわした。ボール同士の電撃はぶつかり合い、バチンと音を立て弾けた。
『アイス!』
 アレクスは地に下り立つと、エナジーを発動し、氷柱のような尖った氷を出現させ、ボール目掛けて投げつけた。ボールは氷柱に射抜かれると、力を失って地に落ち、すぐに霧散した。
 次に登場したのは、緑と藍色の、それぞれマーブリング模様を持つボールだった。しかし、今度のものは攻撃を仕掛けてこない。
 それは必然だった。何故ならアレクスはこれらのボールの性質を知っていたからである。
 これらは防御、回復の役割を持つボール。では次の攻撃はボールの操り主本体。
 アレクスは攻撃が来る前に、本体の潜む位置を探った。
 空間のあちこちにボールが散りばめられており、操り主のエナジーが込められている。四方八方を囲まれているようだ。
 しかし、どのボールも防御特化で攻撃力はない。となれば、操り主はこれらを、気配を隠すために設置していることになる。操り主を仕損じれば、大きな隙を晒すことになるだろう。
 アレクスは集中し、エナジーが僅かでも違う存在を察知するようにした。
 後方、斜め左上空に、力の流れを感じた。捉えた。
『スラッシュ!』
 アレクスは手に風の刃を作り出し、感じた方向へ投げつけた。
「そこです!」
「きゃっ!」
 数多のボールに身を潜めていた操り主が小さく悲鳴をあげると、ボールは全て一瞬にして消え去った。
「ついに見切りましたよ、先生」
 アレクスは、先生と呼んだ、頬から血を流すプラチナ色の髪を持ち、群青色のローブを身に着ける女に歩み寄った。
「いたたた……、もう、顔は無しって言ったじゃない! 女は顔が命なのよ!」
「それはすみませんでした。ですが、あれほどのボールに気配を隠されていては、流石の私にも手加減はできませんよ……」
 アレクスは、まるで子供のようにむくれる魔女、シレーネの血の流れる頬をさすり、小さく笑った。そしてエナジーを発動する。
『プライウェル』
 シレーネの頬をさする、アレクスの手が明るい青色に輝いた。光を受けたシレーネの傷口は塞がり、元の艶やかな肌に戻った。
「これで治りましたよ。さあ、修行の続きを……」
「いや!」
「は……?」
 シレーネの機嫌までは治癒できず、彼女はまだ子供のように駄々をこねていた。
「もう何も教えてあーげないっ!」
「はぁ、そうですか……」
 アレクスは諦めてため息をついた。今日の修行はこれで終わりである。アレクスの修行はほぼいつも、シレーネが機嫌を損ねた瞬間に終わっていた。
「先生、傷痕が残らないように治療したのですから、そう怒らないでくださいよ」
「ふーん、謝ったって許してあげないもんね!」
 でも、とシレーネはアレクスににじり寄った。
「……あれ、してくれたら許したげる」
 これも毎回の事だった。アレクスは心底面倒であったが、最近はもう諦めて彼女の言うとおりにすることにしている。次なる修行の為と割り切っていた。
「……仕方がありませんね」
 アレクスは腹を読まれぬよう、微笑を携えながら、シレーネの顎先を指で優しく掴み、自らの顔を近付けた。
 シレーネが目を閉じた瞬間を見計らって、アレクスも目を閉じると、二人は唇を合わせた。
 シレーネが口を開けば、アレクスは舌を彼女の口内へと侵入させ、何度も舌を絡め合った。
 くねくねと動くせいか、シレーネのローブはするすると落ちていき、ふくよかな胸元が大きくはだけた。
 一頻り口づけを交わすと、アレクスは唇を離した。舌先からは自身のものか、シレーネのものか分からない唾液が糸を引く。
「……これで許していただけますか……?」
 アレクスは静かに訊ねるも、シレーネの紅潮しきった頬と、虚ろな灰色の瞳が全てを語っていた。まだ足りない、と
 シレーネは甘い声を漏らしながら、アレクスに身をゆだねた。身を包むローブはもう役に立っていない。
「……寝所へ行きましょうか……」
 アレクスは念じると、シレーネ共々空間から消滅した。
「……そう言えばさぁ……」
 少しの間行為に及んだ後、まだ息を絶え絶えにしながら、シレーネは言った。
「あんたの……、利用してるやつら……、北の何とかってやつ? ……あれはどうなったの?」
「プロクス村の一族、北の火の一族ですね? 彼らはどうやら、失敗したようです」
 対称的にアレクスは疲労の色をみせていない。シレーネが身をすり寄せてくるようならば、抱きしめ、彼女が喜ぶであろう事をするようにしていた。
「もとより、彼らには一切期待などしてませんでしたから」
 アレクスは以前、プロクスの地へ赴き、北の火の一族と呼ばれる戦士団に、エレメンタルスターを手に入れる為の手がかりを与えていた。
 しかし、そのような行動をしたのは、彼らを利用し、エレメンタルスターを手にするに当たってどのような危険が生じるのか。どのような手段を講じるべきか、という事を調べるためであった。
 古に封印された、錬金術の鍵となる媒体である。そう易々と手に入れられる代物ではないことは容易に想像できた。
 精々どのような罠が仕掛けられているのかが分かればよい、アレクスはそう考えていたのだ。
「アレクス、あんた随分腹黒いのねぇ……。ホント惚れちゃいそう! でもあたしには悪魔様がいるし……」