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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

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 アレクスは最早、悪魔も恐れをなすような行動をしてきた。
 作戦失敗の報を受けに行ったとき、男女合わせて五十は超えそうな人数だったプロクスの戦士団は、半分以下になっていた。
 聞くところによれば、彼らは無事ソル神殿へたどり着くことはできた。しかし、アレクスの予想していた通り、神殿には罠が仕掛けられており、見事に彼らはそれに引っかかったのだ。
 その結果、ソル神殿を中心とする地域に大嵐を起こし、戦士団の団長、サテュロスとメナーディ以外の現地に行った戦士全員が命を落とした。
 しかし、サテュロス達には失ったものばかりではなかった。嵐によって氾濫した川に流されたハイディア村の民を助け出し、そのまま人質としたのである。ソル神殿の近くに住むハイディア村の民ならば、罠を解く術を知っているのではないか、そうした考えから彼らを助けたらしかった。
「馬鹿は馬鹿なりに知恵が働くようで、どうやら彼らは全く使えないわけでは無いようです。もうしばらく利用させてもらうつもりですよ」
「用が済んだらどうするの? やっぱり、前の師匠みたいに殺しちゃう?」
 シレーネはすり寄った。
「別に殺しはしませんよ。まあ、私の邪魔になるようなら容赦しません。排除しますよ、私の考えを否定した、あの愚かなかつての師のように……」
 アレクスは、シレーネを抱き抱えると、彼女の胸から下腹部にかけて優しく這わせた。その感触が良いのか、シレーネは喘いだ。
「……もちろん先生には彼らのような扱いはいたしませんよ。私を立派なウォーロックにして頂けるのですからね……」
 アレクスはシレーネの耳元でそっと囁いた。ほとんど息を吹きかけるような呟きに、シレーネはすっかり骨抜きにされていた。しかし、油断していたアレクスは不意打ちを受けた。
「せ、先生……!」
 下半身を、シレーネに舌先で舐められた後、指先で弄くられたのである。
「うふふ……、お返しよ。あんたなら立派なウォーロックよ……、だってこんなに立派なモノを持ってるんだもの……」
「全く関係ないと思うのですが……」
「悪魔と交わった女は魔女になるのよ。魔女と交わった男は魔男、ウォーロックになれる、どうかしら……?」
 アレクスの目指すものは魔女もウォーロックも、果ては悪魔も超える存在であった。
 しかし、アレクスはいかなる時も
その野望を読まれぬよう、従順なふりをして、微笑んでいた。
「そうですね……、シレーネ……」
 この時だけ許されている呼び捨てで彼女を呼ぶと、二人は再び交わり合った。
    ※※※
 年中猛吹雪のプロクス村に、アレクスは再び足を運んでいた。
 行き先はサテュロスの率いる戦士団の集会所である。
 最初に来たときと比べると、だいぶ士気が低下していた。ソル神殿突入作戦に携わった戦士のほとんどが犠牲となったため、戦士の間に恐れをなす者が現れてしまったのだ。
 どうせ死ぬ運命ならば、より長く生きたい、そう考える者が相次ぎ、戦士を辞める者が続出した。今や残る戦士は、十数名の者。幹部のアガティオ。メナーディの妹であり、同じく幹部のカースト。そして団長のサテュロスとメナーディであった。
「随分と寂しい集まりになってしまいましたね」
 アレクスは円卓に座り、がらがらとなった集会所を一通り見渡すと、苦笑して言った。
「貴様のせいだ……」
 戦士の一人がアレクスを睨んだ。
 アレクスは彼の名は知らなかったが、初めてここへ来た時から、ここにいる者だと分かっていた。
「貴様が妙なことを吹き込んだばっかりに、俺達の仲間は死んだんだ! 貴様が仲間を殺したようなものだ!」
 先のソル神殿への遠征から、およそ三年の時が経っていた。戦士団の心の傷を癒すにはこの時は短かった。
 おまけに、アレクスは三年前に作戦失敗の報を受けてから、一度としてここを訪れなかった。
「そうだ、この死神が! 今更何をしにきた!?」
「とっとと失せろ! さもなくば、仲間の無念、晴らしてくれる!」
 戦士達はアレクスに完全に敵意を剥き出しにしていた。
「落ち着いてください、私も、自らの進言から、あの様な悲劇を生みだしてしまった事は、申し訳ない事と存じております。ですが、私を殺すことで、死んだ方々がお喜びになるとお思いですか? むしろ、私が死ねば、二度と灯台を灯すことはできなくなりますよ」
 アレクスは遜って、戦士達を宥めようとした。しかし。
「黙れ、このハッタリ野郎! お前だけは絶対に許さねえ!」
 戦士は聞く耳を持たず、とうとう武器を取りだした。
「少し落ち着け、お前達。確かにアレクスは我々の仇敵とも言える、だが、今になってこうして現れたのだ。何か理由があるのではないか?」
 アレクスが言っても分からない戦士が、サテュロスの言葉によって動きを止めた。さすがに今になっても残った部下にとってサテュロスとは、最も信頼できる人物であったらしい。
「そうであろう、アレクス?」
 サテュロスはアレクスへ視線を向けた。
「ええ、もちろんですとも……」
 アレクスはこの三年の間に、ソル神殿について徹底的に調べていた。
 シレーネから授かった魔術の内、あらゆるものを見通す力によってソル神殿内部を詳細に調べ上げた。
 プロクスの戦士達を捨て駒として、策を労さずに向かわせた事で
、アレクスは神殿に仕掛けられた罠を知ることができた。その罠を解く方法を、何度も魔術で見通す事で探り続けたのである。
 そして、ついにアレクスはその方法を見つけ出した。
 アレクスは魔術の事や、戦士達を捨て駒に利用した事はひた隠しにして、サテュロス達へはありとあらゆる文献を読み漁って見つけた、と告げた。
「三年もの間そのような事をしていたのか。随分と勤勉なことだ……」
 サテュロスはアレクスを賞賛するような事を口にした。しかし、額面通りに言葉を信用しきってはいなかった。
「解除法とやらがあるのは分かった。しかし、我々は三年前に貴様の提案により半壊した。私に信用してほしくば、相応の行動をしてもらいたい」
「もちろん、今度は私も作戦に参加いたしましょう」
 もとよりそのつもりであった。解除の方法を教えたところで、三年前戦士団を崩壊させるほどの罠にかかった彼らだけでは、同じ轍を踏む事態になりかねない事は目に見えていた。
「作戦決行は……、いつにいたしましょうか? 早い方がよいのですが」
「待て、戦士達を集める必要がある。少し時間がほしい」
「いえ、そんなに人数は必要ありません。私を含め、後三名ほど出ていただければそれで十分です」
 多人数で行けばまた同じ失敗を繰り返す。それを危惧してのことだった。
「三名か、では私は出るとして、後二名……」
「サテュロス、当然私も出るぞ」
 メナーディが参加を表明した。
「姉さんが行くなら、私も!」
 メナーディの妹、カーストも参加を求めた。
「いえ、カースト、並びにアガティオには残ってもらいます」
 頭数が揃ったかと言うところで、アレクスが幹部には参加しないように言った。
「何でよ!? 姉さんが行くんだから私も行く! あんたは私の上官じゃないんだ。指図は受けないわよ!」
 当然のようにカーストは食い下がってきた。