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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

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 女は、アレクスの困惑などどこ吹く風とばかりに、背伸びをしていた。
「……ふあーあ、まあいいわ、助けてもらった事だし、教えたげる。私は悪魔様のしもべの一人、スターマジシャン、シレーネよ……」
「悪魔の、しもべ?」
 何を言っているのか分からなかった。
「あんたは、なんていうの? まあ、あんたみたいな人間には、別に興味はあんまりないけど」
「わ、私はアレクス、です……」
 戸惑いは隠しきれなかった。
「アレクスね……、あら? うふふ……、あんたなかなか非道い事してきたのね。恩師を殺すなんて」
 シレーネはケラケラとおもしろそうに笑った。
 アレクスは目を見開いた。
「どうしてそれを!?」
「あたしには見えるのよ。相手の過去、未来、果ては寿命までね」
 シレーネは更にアレクスの過去を読み、語る。
「なるほどねぇ、錬金術を……。神を超えるほどの力が得られるのね。まあ、神を超えたところで、我らが主には届かないでしょうね」
「……心を読まれているような感じが致しますね、非常に不快ですよ」
「アハハ……。まあまあ、そう怒らないで、何もあたしはあんたに敵意を持ってる訳じゃないし」
 シレーネはプラチナ色のカールのかかった髪を指先でいじっていた。
「確かに、戦うつもりはなさそうですね。ですが、貴女の目的が分からない」
「目的ぃ? うーん、そうね。あんたなかなか見所があるし、どうあたし達と組まない?」
 シレーネはアレクスに視線を向けることなく、髪いじりを続けていた。
「あたし達? 貴女の他にも仲間がいるのですか」
「いるわよ、ムサーい召喚師とすかした剣士の二人がね。多分世界のどこかであたしと同じようになってるだろうから」
 シレーネは髪いじりを止め、アレクスに視線を戻した。
「練習すれば、あんたもあたしほどにはいかないでしょうけど、なかなか腕の立つウォーロックになれるわよ」
 あたしがみっちり指導したげる、とシレーネはニヤニヤと笑った。
 シレーネと話している間に、アレクスはだんだんといつもの冷静さを取り戻していた。
 自らのやってきたことは完全に見透かされ、旅の目的をも正確に言い当てていた。この女の力は本物らしい。
 更に、シレーネはアレクスを気に入ったような口振りであった。魔女の力を貰えるのなら、この先役に立つやも知れない。
 ただ一つ、気になったことがあるとすれば、シレーネが主と呼んだ者の存在である。彼女が言うには、例え錬金術により、神に等しい力を得てもその者には及ばないという。最強の力を手に入れる、これこそがアレクスの野望である。かの者に及ばないのであれば、最強にはなれない。
 しかし、アレクスは少々考え方を変えてみた。自分一人の力では勝ることができないとあれば、知恵を授けてくれるらしいシレーネより魔術を得ればよい。他の仲間からも盗める力は盗めばよい。アレクスの中に更なる野望が生まれた。
 あらゆるものから得た力を錬金術と合わせれば、どうなるであろうか。シレーネの主とやらの力も得られれば、あらゆる者を超えた存在となるのではないか。
「ねえ、さっきから何を黙り込んでいるの? あたしと組まないの?」
 シレーネはしびれを切らした。どうやらこの女には、過去や未来が見えても、心までは読めないようだった。野望を知られる心配もなくなった。
「すみません、貴女のようなお方から、私に素質があるなどと言われて、つい戸惑ってしまいました。ですが、じっくり考えたら、とても光栄な事だと分かったのです」
 アレクスは最高の笑みを見せた。内には途轍もない野望を秘めていたが、もとより演技の得意なアレクスにとって不自然でない笑顔を作るのは容易であった。
「ふーん、なかなか分かってるじゃない? あたしが最高の魔女だって」
 アレクスはさらに、シレーネの容貌にも賛美した。
「しかも、貴女はとても麗しい女性ですよ。そのような美しき方に魔術を教えていただけるとは、この上ない幸福です」
「あーら、アレクス。あんた、あたしと会って間もないってのに、口説いてるの? 残念ね、あたしの心は全て悪魔様のものなのよ」
 シレーネは簡単にのってきた。魔女にしては、いや、魔女だからこそ高飛車なのか。ともかく、アレクスにはとても扱いやすい女だと感じた。
「いえ、私は貴女、いや、先生よりご指導いただけるだけで十分ですよ」
「まあ、先生だなんて! 口が本当に上手いのねぇ、アレクス。いいわ。あんたのその敬意に応えて、見事なウォーロックにしてあげるわ」
「誠にありがとうございます、先生。ではまず他の仲間を探すことから始められてはいかがでしょうか?」
「それもそうね、それじゃあいつらがいる位置をさぐるから、あんたは……、まあ、適当に見てなさい」
 言うと、シレーネは不思議な光に身を包み、エナジーとは違う魔術を使い始めた。
 アレクスは従順な教え子を演じながら、心中でほくそ笑むのだった。
    ※※※
 アレクスが魔女と接触してから、半年の月日が経った。
 アレクスとシレーネは、かつて悪魔のしもべであった、更に二人のしもべを見つけだした。しかし、まだ完全に元に戻す事はせず、石化した姿のまま、アレクス達の根城とする悪魔の封印されているアネモス神殿の奥に置いた。
 アレクス達が見つけ出した悪魔のしもべは、野獣のような姿をした召喚師と、甲冑に身を包み、顔はいっさい窺えない鉄仮面を付けた剣士であった。
 野獣の召喚師はバルログといい、甲冑の剣士はセンチネルといった。しかし、剣士の名は、シレーネのスターマジシャン、という異名であり、本当の名は彼女にも分からない
とのことだった。
 彼らを完全復活させなかった理由は、悪魔復活に余分な時を要してしまうというシレーネの言葉からだった。
 悪魔復活まで表立った事はアレクスにしかできず、あらゆるものを見通せるシレーネの指示の下、アレクスは様々な事をしてきた。
 まずは、灯台解放の為の下準備である。解放の為にはエレメンタルスターが必要であることは古文書から知っていた。しかし、それがどこにあるのかまでは知りえなかった。
 そこで、シレーネは魔術によりエレメンタルスターの在処を探った。その結果分かったのは、霊峰アルファ山の麓の神殿、ソル神殿であった。
 アレクスはシレーネに代わり、エレメンタルスターを手に入れる役を担った。その時、北のプロクスの民も灯台解放を目指していることが分かった。
 アレクスは彼らを上手く利用する事にした。元来用心深い男であったアレクスは、自ら手を下す事なくエレメンタルスター入手、ひいては灯台解放する手段を思い付いたのだった。
 それが、サテュロス、メナーディといった北の火の一族と手を組むふりをすることだった。
 策を練ると、アレクスは急ぎプロクスの地へ向かった。
「お忙しいところ、失礼しますよ」
 アレクスはプロクス村にたどり着くと、村を守護する役目を持つ、戦士団の集まる集会所を訪れた。そこでは何やら会議が開かれていた。
「何者だ貴様!?」
 戦士の一人が突然現れた怪しい男に敵意を向けた。その戦士に続いて、戦士団は武器に手をかけた。
 それに焦る様子もなく、アレクスは戦士達を宥めた。