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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

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「落ち着いてください。一応私は敵ではありません」
「敵ではないだと? 信用できるか!」
「死にたくなかったら、さっさとここから立ち去れ!」
 戦士達は聞く耳を持たなかった。
「だから話を……」
「問答無用!」
 アレクスがため息をつく間に、戦士の一人が剣を抜き、アレクスに斬りかかった。
 アレクスは振り下ろされる剣にはものともせず、片手を突き出した。
『クール』
 詠唱すると、手のひらから鋭利な氷が出現した。
 その刃は戦士の剣を弾き、そのまま真っ直ぐに戦士の頬を掠め、顔の横へと伸びていた。
 アレクスに斬りかかった戦士は、驚きの余り、頬から血を流したまま硬直していた。
「……私はお話をしに来たと言っているのです。これ以上攻撃するのなら、次は顔面を貫きますよ……」
 アレクスは氷のように冷たい視線を向けた。
 アレクスがエナジーを解除すると、戦士は恐怖に顔をひきつらせながら崩れ落ちた。
「貴様!」
「待て、こいつはお前達でどうにかなる相手ではない……」
 続くように剣を抜きはなった戦士を止めたのは、蒼白の顔をした、他の者と較べると貫禄のある男だった。
 アレクスは、シレーネの魔術により、北の火の一族について見聞きしていたので、この男こそがサテュロスとすぐに分かった。
 しかし、実際に会うのは初めてである。故にアレクスは知らないふりをした。
「次の相手は貴方ですか?」
 アレクスは挑発するように訊ねた。これで乗ってくるようならば、利用できぬだろう。
「いや、まずは仲間の非を詫びたい」
 乗ってこなかった。どうやら先ほどアレクスに斬りかかった戦士よりは冷静なようだった。
「構いませんよ。先ほどから申しているように、私は戦いにきたのではありません。あれはただの防衛行為です。それに、私のような見ず知らずの者が突然現れたのでは、あのようになるのは仕方ありません。ここはおあいこ、という事で」
「そうか、では取りあえず名を訊こう」
「アレクス、と申します」
「私はサテュロスという。一応、この戦士団の長を勤めている」
 シレーネから聞いた通りだった。
「サテュロスさん、ですか。良い名ですね」
 アレクスは努めて知らない者として、サテュロスを扱った。
「名前のことはもういい。それよりもアレクス、貴様の話とやらを聞かせてもらおう」
 多少想定外の事態があったが、事はアレクスの思い通りに運び始めた。
「いいですよ、では……」
 アレクスは話し始めた。
 世界には四つの、異なるエレメンタルの灯台があり、その灯台を灯せば錬金術が復活する事を話した。
 更に、その灯台を灯すために必要なものとして、エレメンタルスターが必要である事、それから、エレメンタルスターはアンガラ大陸の中央部、アルファ山の麓のソル神殿にある事。と灯台解放に必要であろう情報はみな話した。
「それは真か?」
 アレクスの話を聞いても、サテュロスはまだ半信半疑であった。
「わざわざ、でたらめを言うためにこの様な所には来ませんよ」
 アレクスは敢えて、相手のかんに障るような物言いをした。サテュロス、という人物をじっくり観察するためだった。
「ふん、妙に気に食わんな。しかし、貴様の言うの事も尤もだな。血の気の荒い戦士団の所に、それも丸腰で来るのだ。大嘘をついた所で貴様に得があるようには思えん……」
 アレクスはここで確信した。どうやらこのサテュロスという男は、この中では冷静で、頭の切れる者のようだ。利用価値は十分にあると見て構わないだろう。
「エレメンタルスターのあるソル神殿は高山を越えていかなければなりません。そこで、私はその力のある北の火の一族の皆様にご助力頂きたく参りました」
 戦士団がいくら脳筋の集まりであろうが、長がしっかりしていればそれなりに統率がとれる。サテュロスにはその力が見えた。
 サテュロスがアレクスの話を信じた時点で、サテュロスに異を唱えるものはいなくなるであろう。
「ふん、助力か。どこで我々の事を知ったのかは分かりかねるが、それほどまでの情報を持っていると言うことは、私達の事を知っているのも必然か……」
 サテュロスはほとんど掌握したも同然だった。
 しかし、やはり突然現れた余所者に、まだ疑念を見せる者もいた。
「サテュロス、まさかこんな怪しい男の言うことを信じるつもり!?」
 想定していた、サテュロスに異を唱える者であった。想定し得なかったのは、その戦士が女であった事である。
「落ち着け、メナーディ。確かに疑う気持ちも分かるが、状況を考えて見ろ」
 サテュロスの言う状況とは、アレクスの出現の理由である。
 彼の出現が戦士団を騙くらかす事であるとは、アレクスの損得を考えると益など全くない。
 サテュロスは冷静に考えて、アレクスの言うとおりにするのが最善だと考えたのだ。
「どの道、灯台を灯す手段は雲をつかむようなものだった。そこへ可能性のある話が舞い込んだ。少し冷静になれ、メナーディ」
「くっ、しかし……」
 メナーディはまだ信用するのをためらっていた。
「メナーディさん、ですね? 長がこう言っているではないですか。それに逆らうというのですか?」
 言い争いをするサテュロスとメナーディに、アレクスは口を挟んだ。
「黙れ! 人の名を気安く呼ぶな! それに私はサテュロスと同じ立場、女戦士団の団長だ!」
 冷静沈着であるサテュロスとは対照的に、メナーディは非常に感情的な人物であった。
 計画が上手く行き始めた所でメナーディはアレクスに噛みついてきた。アレクスは表情は変えないながらも、心では厄介だと舌打ちした。
 しかし、アレクスは何とか懐柔策に出る。
「そうでしたか、それは非常に失礼いたしました。しかし、サテュロスさんと同じ立場だと仰ってましたが
、それが本当ならば貴女はかなりの力になり得ます。私が疑わしい人物であるのは、自身で重々承知しております。ですが、どうか私の話を信じてはもらえないでしょうか?」
 アレクスは、メナーディの気分を害さぬよう、サテュロスの時とは打って変わって一切挑発するような事は言葉にしないようにした。
「確かに、貴女のような綺麗なお方を危険な所へ行ってもらうような、お願いをするのは気が咎めます。ですが、戦士団を統率するほどのお方であれば必ずや、エレメンタルスターを入手できると信じ、こうしてお願いしているのです」
 アレクスは、メナーディの容姿を褒める言葉も付け加え、更に頼み込んだ。
「なっ、貴様! 何を言っている!」
 メナーディは、あまり容姿を褒められる機会がないのか、アレクスの突然の賛美に慌てた。
 シレーネといい、女は単純な生き物だ、アレクスは思うのだった。
「ふん、メナーディを綺麗だとは、貴様の目は節穴か?」
 サテュロスはからかうように言った。主にそれはアレクスにというよりはメナーディに向けられた言葉に聞こえた。
「サテュロス!」
 元が感情的なぶん、メナーディは表情を隠すのが苦手なようだった。
 メナーディが赤面した様子を見て、アレクスは二人は恋人同士、もしくはそれに準じる関係であるのではないかと勘ぐった。