学パロ時京・屋上
どうして前は、なにも思わずに時雨に手紙を渡したり出来てたんだろう。
なんで僕は、手紙を受け取った時雨に、怒ってほしいなんて思ってるんだろう。
怒ってほしい。
なんでこんなもの受け取るんだよ。なんでお前がそれを俺に渡すんだよ――
そう言って、詰ってほしい。
でもきっと、時雨は怒ったりしない。
だって時雨は、僕と付き合ってるわけじゃないんだから。
体の芯だけは熱いまま、泣きそうな気持ちでそっと目を開けた。
唇を離すと同時に、冷たい指先をポケットに差し込む。かさり、紙の感触。
時雨は怒ってくれるだろうか。そして、僕に言ってくれるだろうか。
言って?何を?
僕は時雨に何を言ってほしいんだろう?
自分が訳の分からない生き物になったような感覚がもどかしくて。早く、それを振り払ってしまいたくて。
僕は、時雨に封筒を差し出した。