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もかこ@久々更新
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親友で継母。

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おめぇにも言った方がいいかと思ってな。



思い出す度ざわざわする、久しぶりのサディクの声。
父、と言っていいほどの存在。
私は否定したいけど、事実がどうしようもなくそうなのだ。
宗主国、それだけよ、とは、言い難い。
そんなあいつが、妙に照れたような声で、電話をしてきた。
その土地を踏むのだって、家に入るのなんて、あぁ、じんましんが出てきたわ。
嫌な思い出も、いい思い出も、たくさん詰まった、サディクの家。

「じゃあローデリヒさん、行ってきます。」
「えぇ、気をつけて。何かあったらルートヴィヒの携帯電話に連絡を。」
「はい。」

サディクん家までなんて、迷ってたどり着けないものね。
ローデリヒさんは笑って、私を送り出してくれた。
春の空、暖かいお昼間の陽射し。
澄み渡る暖かい空気。
いい天気。
一人で出歩くなんて、どれくらいぶりだろう。
いつもはフェリちゃんを連れていたり、菊さんとお喋りしながら歩いて、歩く範囲なんて近所の市場くらいよね。
いつもは行かない方向の道を歩く。懐かしい。悔しいけどその言葉が出た。
私は何百年かぶりに、その正面の門を開けた。
庭に咲くのは、可愛いチューリップ、春の風に混じる、どこかスパイシーで、思い出深い香り。
庭いじりが好きなのよね、色とりどりの花。
そこに大きな桜が、一際目立って咲いていた。
綺麗。
大きいのに、儚げで控えめで、どこか誇らしく見える。だから目立つのね。
一瞬、強い風が吹いて。その薄ピンク色の花びらを風がさらっていく。
綺麗ね。
私は前庭をゆっくりと歩きながら、玄関のベルを鳴らした。

「おう、来たか。まぁ入れ、ゆっくりしてけよ」

一瞬叫び出しそうになった。
久しぶりに見るサディクの顔。
相変わらず仮面野郎。
何だっけ、老眼鏡なんだっけ。
私がこの家に来るよりも前から仮面はしていて、老眼鏡の代わりらしい。
その頃は、眼鏡ってなかったのかしら?

「そこ座ってろよ。」

何で目だけ年取るのよ、って聞いたら、

(あの頃は今みたいにちゃんと女言葉じゃなかったわね)

知るかよ、遠くが見えねぇんでぇ。
だって。
そんなこと言ってたような気がする。
近くのものは見えるから、近くだけ見ればいいときは仮面外してもいいんだけど、
あいつ妙にジジイなところがあって、
俺ぁ最近のメールだか何だかは扱えねぇ!
って言って、覚えようともしないんだって。
だから近くを見ていなくちゃいけないことなんて滅多にないから、仮面は付けっぱなし。
ローデリヒさんだって、メールくらい打てるのよ。すごく遅いけど。
ウチで一番早いのは、やっぱりルートヴィヒかしら。
ケータイメールもパソコンメールも早いけど、パソコンメールの方がいいみたいね。
あのゴツい太い指にケータイのボタンは小さすぎるのよ。

「・・・・・・エリザ・・・早く、早く帰ろう・・・・死ぬ・・・」
「あらヘラ。あんたも呼ばれてたの?」
「好きで来た訳じゃ・・・ない・・・・拉致られた・・・・」
「あ、あぁそう。でも私もあんたも呼ぶなんて、本当に何の話かしらね。」

何となくお醤油の香りがしたような気がして、気のせいかな、と流す。
ヘラは頭に猫を乗せて、イライラしていた。
ヘラはサディクん家のすぐ近くだから、すごく仲が悪い。
まぁ、サディクのことを好き好んで一緒にいる人なんていないと思うけどね。
小さいときからそうで、ヘラはサディクの話を聞くことなんてなくて、ワガママで。
今の穏やかな人格を見ていたら、全然想像できないわよ。

「・・・・しょうゆ・・・・・」

やっぱり醤油の香りがした。
今のは気のせいじゃない。
キッチンから。
あの独特の香りがしてくる。
そう言えば、私たちをダイニングテーブルにつかせて、
サディクはキッチンから出てこない。
嫌な予感しかしない。
寒気しかしない。

「さぁ、お食事できましたよ。いただきましょう」
「菊さん!?」
「きく?」

うふふ、じゃねぇわよ。

「へへへ、まぁ驚くのも無理はねぇわな。座れ、お前らに話してやる」

似合わない緑色のショールに、何だっけ、サディクん家の民族衣装なのよ、あぁ、忘れた。
それはちょっと浅黒くてナイスバディな女性が着るから似合うのよ、菊さん似合ってないわよ。
だって菊さんの体平面だもの。
私とヘラクレスの正面に、サディクと菊さんは並んで座る。
そっと目を合わせて、ふふっ、なんて、
うえぇっ、気持ち悪い。
サディクの顔はね、菊さん、昔は、見るだけで人が逃げていくくらいだったのよ。

「私からお話させていただきます。
エリザベータさん、ヘラクレスさん、私、本田菊は、
昨日をもって彼、サディク・アドナンさんと結婚し、菊・アドナンになりました。
サディクさんが自分の子供のように育ててきたというあなた方二人には、
まずお話しなくてはいけないと思い、お呼び付けしてしまいましたが・・・・ご納得いただけますでしょうか。」

私、菊さん家のアニメも同人誌も好きで、しょっちゅうビデオ借りて見てたの。
たまにすごく切ない恋愛ストーリーがあったりして、大好きだったの。
それから、菊さん家のドラマも見てみたりして、それも面白くて好きになったわ。
意地悪な姑が溺愛しすぎな息子のためか自分のためか、嫁を虐めるのよ。
木馬に乗ってう〜〜〜とか言いながら息子が気持ち悪くて、
でも息子は最後自分の妻のためか、自分のためか、母親を殺すの。
それの再現ドラマみたいなのをフェリちゃんと二人でやって、大爆笑だったわよね。
まぁ何って、ルートヴィヒにその気持ち悪い息子の役をやらせたのが一番面白かったんだけど。
笑いすぎてお腹痛くなったもの。
それ以来か、元々そういうつもりだったのか、忘れたけど、
私が姑でフェリちゃんが嫁、ルートヴィヒが息子、って言う家族構成になったような気がする。
あ、ローデリヒさんはお父さんね。私の旦那さん。
で・も。
姑楽しすぎる、とか思ってたんだけど。
大ピンチだわ。
私。
継母ができちゃう。
ママハハと言えば娘を虐めるようにできてんのよ、そういう決まりなのよ。
継母が私を虐める→私が嫁をいじめる→嫁はどうしようもない、と。

「私、幸せです。やっとこの人と一緒になれた。
私たちの前には障害しかなかったけど、それも今思えば愛を深めるためのスパイスだったのだと、
お話していただいて解りました。
今までよりも、もっと仲良くしてくださいね。
私たち、家族ですから」

にっこり、菊さんが笑う。
きれい。
さっきの桜みたい。
私のどうでもいい妄想なんて本当にどうでもいいくらい。

「・・・この年で再婚っつーのも、どうかとは思ったけどな。
悪ぃな菊、こんなでけぇガキが2匹もいてよ」
「いいえあなた、私、家族に憧れていたのです。
やっぱりあなたと一緒になって良かった。」

けーっ。
何があなただ寝言は寝て言えってんでぃ。

「で、でもずっと一緒に暮らす訳じゃないんでしょ?
ど、どうするの、国は?」
「半年ごとに双方を行き来することにしたんです。
夏と秋はサディクさんのところで、春と冬は私のところで。」
「・・・・・・普通・・・春夏と秋冬じゃないか・・・・サディク死ね」
「満開の桜が見れねぇだろ。
作品名:親友で継母。 作家名:もかこ@久々更新