親友で継母。
やっぱり本場物のやつは風情があっていいぜぇ」
「やっぱり、ずっと一緒にいたいけど、お互いに譲れないところというのはありまして。
ふふ、私のわがままです。」
あぁ、何かしらこれ、新婚さん?
おかしいわ、ルートヴィヒとフェリちゃんにはいい加減慣れてたはずなのに。
新婚さんなんていらっしゃいよこの野郎、ぐらいだったのに。
何なの、このオノロケ、この新婚さんだけど新婚さんと言い難い空気。
素直に「バッカみたい」といえないこの空気は何?
「・・・じゃあ、菊さん。あれね、私菊さんのこと、
お義母様って呼ばなきゃいけないわね。」
同い年くらいなのにね。
「ふふっ、じゃあ私は、フェリくんのおばあさんですね。
それもいいかもしれません。」
「あぁ、そういやぁお前ら、仲いいんだよなぁ。
何でぇ今のはよぉ」
「何でもないわよ。」
「またあとでお話します、サディクさん。
今はみんなでお食事を楽しみましょう。」
その後のお食事?
楽しかったって言わせたいの?
どうしよう。
私。
菊さんと友情を保っていけるか自信がない。
だって、何よ、あれ。あんなきれいな格好して、きれいで。
いつもの赤ジャージにダサ眼鏡の菊さんはどこに行っちゃったのよ。
赤ジャージにダサ眼鏡、原稿中の菊さんなんて、汚いじゃない。
3日もお風呂に入ってないとか、
エロゲばっかりしててヤンデレたまりませんねとか言うじゃない。
うひひ、って笑うじゃない。
ドゥフフ、って、マジキモいのよ。
それでこそ菊さんじゃない。
何よ、口元に手を当てて、ふふ。って。似合ってないのよ。
あぁ、たまに演技で見せるわよね、そういう「清楚」なフリ。
どうなのよ、それ。それをサディクの前では自前のキャラにしてるの?
犯罪よ、そんなの、結婚詐欺よ。
何がおばあさまよふざけんな。
「俺はエリザ、お前は人のことを言えた立場ではないと思うがな」
「何ですってぇ!」
「夫婦とは、どこかしら自分を偽りながらも一緒にいるものなのだろう。
偽り続け隠し続けても、それを見られたくないのは、相手を愛しているからだ。
相手に嫌われたくないからだ。
それに疲れ、本性を顕しだしてからが本番なのかもしれないが、
その前に、既に疲れているのだ。
耐えられなくなって、そして別れてしまう。
そうしたものなのだろう」
「でも俺ルートのエロビデオどこに隠してあるか知ってるよ。
サディクも判っててそれでも好きだから、結婚したんじゃないかなぁ。
汚いもんね、菊の修羅場中の部屋。
臭いし」
「・・・・俺はこの通りだが、そう、それを踏まえた上で愛しているからこそ、
パートナーの気にしていることをあえて口に出さない。大人なんだな」
何あんたたち、私を諭してんのよ。
そんなこと、判ってるわよ。
あんたたちはそんなこと言っちゃうからガキなのよ。
フェリちゃんは口に出しちゃってるじゃない。それを怒るあんたもあんたよ、自作ビデオのくせに。
ただ、何か、何かムカつくのよ。
誰に対してかも、何に対してかも、うまく説明できないけど。
「・・・・私、もう寝るわ。」
「う、うん・・・お休みエリザさん。」
「あぁ、お休み」
本当に、何で腹が立ってるのかも、よく判らないの。
菊さんが、私の好きじゃない菊さんになっちゃうから、とか、
今まで通り遊べなくなっちゃうとか、色々考えたけど、どれも違う。
ビデオでも見よう。
最近、ブルーレイに起こしたばっかりの、昔の映画。
昔だけど、素敵な恋の話。
胸が締め付けられるような。
最後、泣けるのよね。
号泣する用の枕を抱きしめて見よう。
ローデリヒさんはもう寝ちゃったから気にしなくてもいいけど、朝は気にしなきゃね。
ローデリヒさんの朝は早いから。
「・・・ふう」
もう、ルートヴィヒたちは、ベッドに入るのかな。
二人は若くてラブラブで、毎日みたいにセックスしてる。
フェリちゃんの声は大きいから、下手なホテルになんて行くと隣にまで声が聞こえる。
可愛くて、セクシーで、男を誘うのにぴったりな声。
愛され系?みたいな?
フェリちゃんを嫌いな奴なんて、偏屈のスイスくらいなもんでしょ。
私って、嫉妬まみれで、汚いのかなぁ。
菊さんが、羨ましいのね、きっと。
私。
いつもは私より地味なのに、ブスのくせに、とか、
考えちゃってんのかなぁ、さいてー。
菊さんのそういうどうしようもないところを知って、
その上で、好きで一緒にいる、か・・・羨ましいんだ。やっぱり。私。
私は、完璧よ。
ローデリヒさんは私が腐女子だってこと知らないもの。
オタクなのも隠してるし、部屋の中はいつもだいたい可愛い布で隠してるけど、
本当は荒れ果てててすごいのも、ローデリヒさんは知らないのよ。
私そう言うところは自信あるもの。
本当に知らないのかしら。
本当は、特に興味がないから、知らんぷりしてるだけとか?
どうなんだろう。
・・・・興味がないとか・・・寂しいじゃない・・・・
「聞いてみようかな・・・」
でもそれで私の汚いこの部屋の話、するの?どんだけ地雷なのよ。
ローデリヒさんに、
ローデリヒさんでオナニーしてることとか、
ローデリヒさんによく似た眼鏡男子が輪姦されてる今の原稿とか、絶対見せられない。
枕元に菊さんが書いてくれた私が男でローデリヒさんが女でガンガン犯してるやつとか絶対見せられない。
「やっぱり聞けないわぁ・・・」
私。もう少しノーマルな性癖だったら良かった。
彼としてるだけで幸せvみたいな、フェリちゃんみたいな感じだったら良かった。
そしたら、大好きな人と一緒だから、何も恥ずかしくない。
菊さんは、どうやってあんな風に、野郎とラブラブでいるのかしら。
映画はもう、エンドロールを流していた。
菊さんはしばらくサディクの家で過ごすらしい。
菊さん家の犬も、きゃん!って、可愛い声で鳴いていた。
ふわふわもふもふで可愛いのよね、意外に芸達者だし。
アスターたちにはない可愛さ。
本当に愛玩用って感じの。
「改めておめでとう菊さん。念願の結婚よね。」
「はい。ありがとうございますエリザさん。
私今、とっても幸せです。」
そうよね。
今まで、イギリスやらアメリカやら、勘違い野郎に絡まれてばっかりだったものね。
イギリスに至っては、菊さんを監禁直前、いや、マジ監禁まで行った。
今でもそんな幻想抱いてんじゃないかしら。
始末に負えないわね。
「綺麗な服ね。もうジャージは着ないの?」
「えぇ、サディクさんと一緒にいるときは絶対に着ません」
「原稿は?」
「私のPCはセキュリティも万全ですよ」
勝手にPC見られたくないから、私は静脈認証のログイン装置を使っている。
それがなくてもPCは使えるけど、私の個人データは見えない。
見られちゃ困るもの見えるようにしておくなんてバカのする事よ。
まぁ、何もかも菊さんが教えてくれたことなんだけどね。
「イベントはどうやって出るの?」
「そうですねぇ、委託が多くなるかもしれません・・・会場に行けないのは寂しいですね。」
「大リーグ、見に行けなくなるじゃない。」
「年に数回ですから。
それに、パソコンからも見れますし、そのためのプロジェクター買っちゃいました。