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もかこ@久々更新
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ベッドサイドストーリー

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何か、変だった。
眠れなかったんだ。
いつもは眠れないなんてこと、あり得ないのに。
シエスタし過ぎたのかなぁ、それで眠れないのかなぁ。
隣で、さっきまでエッチしてたドイツは、ぐっすり眠ってる。
プーは、俺たちが眠るまで大体起きてるから、ぼんやり俺を見てた。

「眠れねぇの?イタリアちゃん」

背中向けてたけど、寝返りを打って、プーの方を見る。
プーはすぐ俺に気づいて、頭を撫でてくれた。
大きな手。ドイツのより頭を撫で慣れてる、大人なんだなぁ、って思った。

「・・・うん・・・・何でだろ、こんなこと滅多にないんだよ。」
「だよな。珍しいよな。よっしゃ、俺がお話してやるぜ」
「お話?」
「そ。ヴェストもけっこう寝付きの悪いガキでよ、よくよくお話してやったもんだぜ。」

ベッドから出て、プーは隣の自分の部屋から、茶色、かな?革張りの本を持ってきた。
結構年季が入ってそうな感じ。見たことのないそれに、俺は少しわくわくした。
お話読んでもらうなんて、子供の時みたい。
ハンガリーさんが、シンデレラとか、白雪姫とか、いろんなお話を読んでくれたんだ。

「昔々、あるところに、魔物の国の王様が住んでいました・・・・」

そうそう、こんな下り。何でいつも昔なんだろうね、未来の話とかはしないのかな。
想像できないからかな。
昔って言っても、大体そのときの今と同じようなシチュエーションでお話って、書かれてるんだもんね。

「魔物の国の王様は、ある人間界のお姫様に恋をしていました。
お姫様は美しく、飴色の髪、キャラメル色の瞳、ホワイトクリームのようなきめ細かく白く淡い肌。
その声は甘く柔らかく、はちみつのような声でした。
あぁ、愛しの姫よ、この胸に君をいだきたい。
しかし私は醜いけだもの、一度私を見れば、あなたは怯え隠れてしまうに違いない。
どうすればよいのだ、この愛を。
神よ、何故私にばかりこのような試練を与え給うたのか!」
「や〜だ、近い。そのお姫様、俺?」

お話、読んでないじゃん。革張りの本は開かれない。
覚えてるのかも。プーだから、絶対アレンジしてると思うけど。
お姫様の基本はね、金髪で青い瞳の白人なんだよ。

「へへっ、さぁなぁ。
王様は、不器用で魔法を使うことができません。
魔法を使えれば、お姫様が好きになってくれそうな男の姿にもなれるでしょう。
でも、王様は魔法が使えないのです。
でも、お姫様と仲良くなりたい。王様はそればかり願いました。」

美女と野獣とは、違うのかな。野獣は本当はかっこいい王子様なんだ、
俺は何か、その結末が気に入らなくて、あんまり好きじゃなかった。
野獣のまんまでも愛せるんだから、野獣のまんまでもいいじゃん。何でそこでイケメンに変わっちゃうの。
そう思ってた。

「お姫様は、それはそれは美しく、周辺各国から毎日のように求婚されていました。
お姫様は純粋無垢な人で、病気がちの王様を支えてくれるような人と結婚したいと思っていました。
魔物の国の王様も、他の国の王子様たちと同じように、お姫様の優しくて純粋なところが大好きでした。」

じゃあ何でもっと早く結婚しないの。
きっとね、他の国のお姫様たちからしてみれば、迷惑なんだよ。
だって誰も自分の方は見てくれないんだもん。
それよりプー近いよ、キスしちゃうくらいの距離だよ。
目を閉じて、ゆっくりと語るプーは、ドイツにはないかっこよさがあるような気がした。

「王様は、いつかお姫様が、誰かのものになってしまうかも知れない。
という現実的な恐怖に駆られるようになりました。お姫様と一緒にいたい・・・・」



「おはようイタリア、眠れなかったんだってな。兄さんに聞いたぞ」

気づくと、朝だった。
プーは寝てて、革張りの本はベッドサイドに置いてあって、
下に降りたら、ドイツがコーヒー飲みながら新聞読んでた。
コーヒーの香ばしい香り。
最近アフリカの、貧しいけどコーヒー栽培が盛んなところで、
いい豆が作られるようになったんだ、そこの試作品のコーヒー豆なんだって、喋ってたっけなぁ。
もうスーツを着てて、もう行く直前って感じだった。

「おはようイタちゃん。今日はいい天気よー、家中のカーテン洗うから手伝ってちょうだい」

朝食を作るハンガリーさんが、外を眺めながら言う。いいお天気、有効活用しないともったいない空だった。
でも俺まだ、眠いんだ。
まだプーの、お話の世界にいるような気がするんだ。

「おはようハンガリーさん・・・ふあぁ」
「もーっ何あくびしてんのよ!今日は忙しいわよ!」
「そうがなるなハンガリー。昨日眠れなかったらしいんだ」
「おや、珍しいですね。怖い夢でも見たのですか?」
「ううん、そうじゃないんだ。シエスタしすぎたのかなって。」
「ふふ、そうですか。それは気をつけなさい。」
「はぁ〜い。」

オーストリアさんは、いつでも穏やかだ。
ドイツが忙しそうに朝食を取るのを横目に、ナイフとフォークでゆったり食べる。
別に、お仕事がないわけじゃないけど、俺たち、ドイツみたいに現場仕事な訳じゃないし、
仕事なんてしなくてもいいくらいなのにね。
ドイツは忙しいね。
あ、そう言えば、あのお話、どうなったのかなぁ。
魔物の国の王様は、どうやってお姫様と結ばれるんだろう。
プーがお話してくれるイメージって無かったから、意外だったしね。

「すまんが今日は遅くなる。飯はいらん」
「はいはい。気をつけてね」
「いってらっしゃいドイツ、キスして?」
「あぁ、・・・・・行ってくる。」

スーツのドイツはかっこいい。すごく好き。
玄関までお見送りして、俺はオーストリアさんとハンガリーさんと並んで、朝食を取った。
プーが起きてくるのはきっと、12時過ぎだから、
そうしたら、お話の続き、聞いてみようかな。



何かあんまり、小さい頃と変わってないような気がするんだよね。
ハンガリーさんと俺は家事をして、オーストリアさんが家の中で一番偉くて。
あの子とドイツは違うけど、真面目に働いてくれて。
あ、プーは、相違点の一つかなっ。

「うぅ〜〜ああぁ〜〜〜ねみ〜〜〜」

プーはたまに、すごく親父臭い。
お腹ボリボリ掻きながらリビングに来たり、歯磨きしながらトイレ行ったり。

「おはよ、プー。」
「おはようイタリアちゃん今日も可愛いぜ!」

今日はちょっと早い。12時前。

「てゆーかイタリアちゃんマジ腹減ったんだけど何か食うもんねぇ?」
「これからお昼ご飯にするから〜。待ってて」

ほんと、フリーダムだよね。基本的にドイツの代役か、
ドイツと一緒に会議に出るかくらいしかないから、プー。
あれ、何だっけ、ニート?ドイツももう少しプーを連れていってあげればいいのに。

「う〜ぇ〜い。飯できてねぇのか、もう少し寝るかな・・・」
「寝たら永遠に目覚めないようにしてやるわよ」

もちろんそんな態度は朝からせこせこ働いてたハンガリーさんの逆鱗に触れる。
せっかく2世帯住宅にしてさ、オーストリアさんとハンガリーさん、
俺たちの分で、玄関まで分けたんだから、こんなに入り浸らなければいいのにね。
ハンガリーさんは当然のように、ハンガリーさんの最強武器フライパンを向けた。