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もかこ@久々更新
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novelistID. 3785
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ベッドサイドストーリー

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あのフライパンは使い込まれてて、鍛えられた鋼で出来てる。だからすごく堅くて、すごく重い。

「うおぉっこえぇ!てめぇ起き抜けにそんなもん向けんじゃねーよ!」
「うっさい!馬鹿みたいに寝てんじゃないわよ片づかないでしょ!」

重すぎて、俺はそれでフランベはできない。
フランベって、炎を巻き上げてから、お鍋を振って中の材料を絡めなくちゃいけないでしょ。
重すぎて無理なの。
ハンガリーさんはオーストリアさんに呼ばれて、プーを殴り倒す間もなくすっ飛んでいった。

「ちっ・・・・おい、新聞」

仕方なく歯ブラシ咥えて、テーブル周りのラックの、新聞を探してる。
何だろう、オッサンになると新聞が読みたくなるのかな。
俺、新聞は4コママンガのところとテレビ欄しか見ないから判んないや。

「ドイツが持ってっちゃったよ。今日は移動に時間がかかるから、暇つぶしだって。」
「あぁ!?ちっくしょヴェストのやろ〜・・・・もう少しIphone活用しろってんだ」

プーは結構デジモノが好きで、新製品とかは見逃さない。
一時期Iphoneハマってたけど、すぐに飽きて、また日本っぽい折りたたみケータイに戻した。
だからドイツのIphoneは、プーのお下がり。
色んなアプリが入ってて、すっごく便利そうなんだけど、ドイツは使い切れてないんだよね。

「ねぇ、プー。ご機嫌斜めなところ、ナンなんだけどさ。」
「ん、あ、あぁ!別に機嫌悪ぃ訳じゃねぇぜイタリアちゃん!なになに?」
「昨日のお話、もう一回してくれる?
魔物の国の王様が、最終的にどうなるのか知りたい。」
「うえぇ?マジで?いや〜やめとこうぜ、あの話、最終的には暗いんだよ。
話が盛り上がってくる前によ、大体寝ちまうから、話さないで済むんだけどよ・・・・それでも聞きてぇ?」

そうなんだ。全然聞いたことのないお話だったから、興味があったんだけどな。
そもそも、暗い話なら寝かしつけるときに選ばなきゃいいじゃん。
プーって空気読めない。
しかも、今日は麗らかなよく晴れた日。
そんなときに暗い話なんて、あんまり聞きたくないよね。

「でも、やっぱり聞きたいかも。どうなるの?王様とお姫様は、結ばれるの?」
「・・・・しょーがねーなー・・・後で文句言わねぇでくれよ。
あの後な、王は、姫を誰にも取られたくなくて、姫をさらうんだ。
姫を部屋に閉じこめて、監禁して、王は姫を助けようと立ち上がる他の国の連中を皆殺しにする。
人間では到底かなわねぇバケモンを使ってな。
そのうち王は、魔王と呼ばれるようになる。
魔王は姫が欲しいだけだったのに、そのうち家来たちが世界征服とか言い出すようになる。
そして訳が判んねぇうちに、魔王は殺されちまうのさ。
しかし人間は遅かった。勇者が姫を迎えに行った頃には、姫はとっくに婆さんだ。
勇者もこれじゃあ、助ける気にならねぇ。
そして皺くちゃババアが言いやがるんだ。
うちの旦那はどちら?
ってな。
話はそこでおしまいだ。
勇者はババアを救ったのか、それとも見るに耐えなくて殺したのか。その辺は考えてねぇ。」
「・・・・ふ〜ん・・・でも、王様とお姫様は結ばれてたんだね。
良かった・・・・のかなぁ・・・
てゆーか、考えてない、って?」
「だって全部俺が考えた話だし」
「えええええ!?」

じゃあもっと救いのある話にしてよ!後味悪いよ!

「んな驚くなよ。俺だって必死こいて考えたんだぜ?ヴェストが寝付き悪いガキでなぁ。」

言いながら、プーはタバコに火をつける。もう、何なの。
でも、ドイツを寝かしつけるために、そんな風にお話考えてたの、
それは、すごいや。
俺は元々、ベッドに入れば眠れる子だったから、実はシンデレラの結末をよく知らない。
王子様に見初められて幸せになるの、本当は、そうじゃないみたいなんだけど。

「フツーにある絵本じゃよ、ヴェスト何冊読んでも寝やがらねぇんだよ。
最大で5冊くらい読んだな。
小さいときから理屈くせぇガキだったからよ、
例えば白雪姫でよ、何で死んだのにキスで蘇るんだとか、
どーでもいいこと気にしやがって。
夜中の3時くらいになっても寝やがらねぇ。おかげで俺が寝不足って日が続いたんだぜ。
笑うしかねぇよな」

小さいときのドイツの話をするプーは、嬉しそう。
いつもは俺は、二人の中心だけど、
たまにこういう瞬間、仲間外れになる。
ちょっと寂しいな。
しょうがないんだけどね。5人とか、3人とか、奇数は、こういうものだから。

「まぁ、ヴェストも俺に似て感受性が豊かだから、普通に幸せになる話なんかは嫌だったんだろうな。
つまんねぇ、って思ってたんだろうよ。
だから俺はお話を創作し始めたって訳よ。いいだろ?
あ、女の子が主人公の話もあるぜ。今度話してやるな」
「うん!」



「ただいま。兄さんは?」
「フランス兄ちゃんたちと飲みに行くって。」
「む、じゃあ今日は二人か・・・・待たせただろう、すまんな」
「ううん、いいんだよー。俺、プーに素敵なお話聞いちゃった。」

8時過ぎ。
ドイツはいつも通り疲れた顔をして、帰ってきた。
やっぱり決まってるなぁ、アルマーニのスーツにコート。
ドイツムキムキだから、なかなかサイズ合わなくて結局お願いしたんだ。
俺の顔を見た途端に、疲れた顔は止めてくれる。今日はそれなりに余裕があるんだね、良かった。

「兄さんに?どんな話だ?」
「ドイツが小さい頃、プーにいっぱいお話してもらったんでしょ?そのうちの一つの、プーが作ったお話。」
「・・・・・あぁ、兄さんが作った話か。あれは、何というか・・・日本のアニメみたいな話だ。
どこか斜に構えているというか、正統派にはいかない、というか・・・兄さんらしい話だな。」
「そうかもねー。多分日本が聞いたら喜ぶよ。」

日本は自分で本とかも作ってて(半分は見せてくれないけど、たまに見せてくれる本はニンジャとかかっこいいんだ)、
夢の世界、ってゆーか、そういうのが好き。
そうそう、女の子が実は神様だったとか、未来人だったとか、ロボットだったとか。
そういうのが好き。
プーもそういう話大好きだろうから、盛り上がっちゃうかもね。

「そうだろうな。俺は兄さんの、ああ言う夢見がちなところはないから、兄さんの創作話はすぐ眠くなって眠れたんだ。
お前は、聞いてみてどうだった?」
「俺もすぐに寝ちゃった。でもお昼間にね、その続きを聞いたんだよ。
何かちょっといいなぁって思った。俺、そういう発想ないもん。」
「お前は優しいな。俺は大人になってから聞いたら、何を馬鹿馬鹿しい、と思って一蹴してしまったぞ」
「あ〜っひどいんだぁ。プー絶対傷ついたよ?」
「あぁ。その後はめんどくさかった。」

プーは妙に繊細なところがあってめんどくさい。
一人楽しすぎるぜって言う割に一人は嫌いだし、
一人になると後でブツクサ言う。めんどくさい。
でも、俺そんなところも好きだよ。
だって、いじりがいがあるでしょ?

「・・・・まぁ、お前が傍にいるなら、聞いてやってもいいかもな。」
「でしょ?俺、もっとお話聞きたい。」
「今日はお話ねだってみるか。子供の時みたいにな。」