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Angel Beats! ~君と~

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「…ケンさん…そのままでも、二十歳に……見えますもんね…」

「うっ…面目無いです……。では、これで失礼致します」

霧島に自分のコンプレックスを、気にしている事を小さくつつかれ項垂れ、宴会の後の状態の部屋から出る。
本人は無自覚なものの引っ掛かっている事を言われるとどうも引き摺ってしまう。

「…あー……何か悪いな霧島こんなウルサイ連中で」

そう言いながら流れで睡眠に入った初音に毛布をかけ、窓の外にある月を見る。

「いえ…気にしてません。それに、謝らなきゃいけないのはこっちです」

「ん?」

「……、見ず知らずの…私を受け入れてくれて、ありがとうございます」

「なーに急に改まってるんだ。大丈夫だって」

「楽しかった今日忘れません…」

「そうだな、騒々しくて変な一日だったな。『幽霊が現れたー』とか、はた迷惑だったけど楽しかったな」

最初に会った時と同じく霧島がオドオドしている様が窓から伺える。外が暗い為、鏡の役割を果たしている。

「……ありがとう…ございました…」

言動からして何処か虚しそうに、言い換えれば悲しい様に聞こえた。

「なんかもう会えない様な言い方だ……?」

今まで窓に見えていた霧島が忽然と姿を消した。
慌てて振り返って見ても襖を開けた後も、影も形すら無い。おかしい。人間は簡単に影を消せる訳が無い。たまに椎名の様に例外があるが、ここまで芸達者では無い。
出会った場所である砂浜では無いのでここは足跡すら残らないこの畳では、どうやって瞬間的に消えられるのか。
――――上か?
木目が綺麗な天井を見ても居ない。

「…きり…しま?」

「どうしたのかしら、音無君?」

色々散らかっている部屋を(主に缶)片付け一段落ついたのだろう、由妃は結弦に声を掛けた。

「あ、あの霧島見ませんでした?初音と同じくらいの女の子なんですけど……」

「…? 見てもないし居ないけど…それに晩ご飯の時、音無君の左隣空いていたのに、誰と話してたの? さっきもだけど。もしかして独り言?」

「へ?」

この付近の海には味気が無いお伽噺(とぎ)話があると言う。

とある村に人間と人魚が暮らしていた。
二人は愛し合い、愛の結晶(子供)が産まれた。その子供の瞳は人魚の母親と同じく海の様に蒼く、外見は何ら人間と変わらず、スクスク元気良く育ち、二人に愛され、母親の様に海を自在に泳ぎ、母親の様に歌声が綺麗だった。
だが、それを良く思わない村人達はその家族を殺し、海へ投棄した。
理由は単純。気に入らないから。邪魔だから。
それだけで殺された。

ちょうどその舞台となったのが、結弦が溺れたあの急流。
昔は多くの人が身を投げていたと言う。
その場所が村に殺され、捨てられた場所だった。
人魚の件は事実上作り話である可能性が高い。

「…まさか――」

「もしかして、化かされちゃったのかしらね?」

由妃は他人事に左頬に左手を付け、残念そうに首を傾げた。仕草と言動はふざけながらも、認めたくは無いがその言葉は的に的中している。
由妃を除く、ここに居る全員が霧島を見ていたのだった。
いや、普通では見えないモノが見えていた。
背筋が凍り付きそうだが、実際にこの目と、口で話し一緒に食べ、肩に触れ、風呂にも入り背中を流した。

「…その……」

「うちの旦那が仕掛けた…って言いたいみたいね。いくら主人でも私に何か断ってからドッキリするのよ」

認めざるを得ないのだろうか、と妙な汗が結弦の首から一筋伝った。



























「……医者が病院に運ばれるとは…地に堕ちたZE」

「そんなかっこいい声で言っても説得力がゼロです」

推進エンジンを積んだシューズで病院に帰還したが、停め方を知らずにまた壁に激突というオチを広げた医院長は、顔に漫画のように包帯を巻いて手術室から出てきた。
医院長が施されたのではなく、とある妊婦の帝王切開を施した後。
容態の急変のせいで、待ち合い室のソファーで寝落ちし心地良い夢を見ていた助手を往復ビンタで叩き起こし、今に至った訳だ。
ちなみに助手は女性である。
真夜中に叩き起こされるとは堪ったものではない。

「一時期はどうなるかと思いましたが、無事に産まれましたね」

「大変だよ…プレッシャーかかるもん」

「どうにかしちゃうのが医院長ですよね」

「勿論さ」

他愛ない会話をしゴム手袋と手術着を外し、専用の箱に入れた。面倒だが、いくら技術が進んでもこれだけは変わらない。

「あの赤ちゃん息が止まっていると思ったら、目を見開いて呼吸しましたね。しかも泣きもせずに」

専用出口から出ると、そこは非常灯しか点いていない廊下。ほとんど誰も居ない暗い廊下は幽霊が出現しそうだった。
二人は特に霊は気にしないので、これと言って恐くもない。気にしていたとしても医者の立場上、夜の薄気味悪い廊下を歩かねばならない。

「きっとこれは歴史に残るな!」

嬉々としているがその表情は包帯で巻かれているのでまったく解らない。
息が出来るのか怪しいところだ。

「母親譲りの綺麗な蒼い瞳でしたね」

「無事に育ってほしいものだね。名前決めてたな……たしか、ル」

「ところでそんなイケメンボイスでした? しかも顔面が整形されてましたし、どうなってるんです?」

「気にすることはない。あ、コーヒー飲も、コーヒー。私のオゴリだぞ、keyコーヒーで良いかい?」

「オロナミンZが良いです」

「えー? コーヒー飲もーよコーヒー」

「嫌です。それよりクソねみー時に醒まさせたんだからさっさとオロナミンZ買えよジジィ。人体モデルにすっぞ。こちとら残業終えたばっかなんだよ。テメエの死体をタダで片付ける隙なんかねえんだよ」

先程とはうってかわり口調と態度が豹変し、クマが出来ている目で、背が小さいながらも医院長を睨み付ける。
それに慣れているのか、物怖じせず平然と顔面ミイラ男は歩く。

「しょうがないなー、もー」

「ぶっ飛ばすぞ…ぶっ飛ばさないけど」

「おお、怖い怖い」

「小指もげろ」

「怖いよ!?」

そんな術後トークを広げ、太陽が昇り全てを照らすことで長い奇妙な夜が終わりを告げた。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影