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カツカツカツ――。
　コンクリートの床から壁に新品の革靴が突く音が響く。歩調はいつも通り、でも少し緊張を混じらせ。

　鹿屋鎮守府――。やっと到着した。10時間を超えるフライトから到着した僕は書類にある施設……司令室のある建物の中を進んでいた。
　書類を見る限り、この建物には部屋が５つ。一つはもちろん司令室だ。そして残り４つは【居住空間】なるものだった。住んで、いるのか。
　壁面や床、至るところまで基本コンクリート。突貫工事ででもして作られた施設なのだろうか。
　そして、到着する。重たそうな鉄の扉を僕はゆっくりと開いた――。
　まずは司令室特有の、どこの鎮守府にもなぜか同じものが用意されているすこし重厚な机に、応接間のような机とイスのセットもある。……おや。

「すぅ……」

　一人の少女が眠っていた。何故か武器庫から持ってきたのか、三連魚雷を脇に置いてそれによっかかって眠りについている。……爆発したら死ぬぞ。
　いや、そうじゃないだろ。ここ、今日から俺の家でありうちの司令室だぞ無関係な人間のいていい場所じゃあ決してない。
　……どうして処理したもんか。

「……ふぇ。あっ、おはようございます……今日から着任する司令官さんがいると聞いて……ここで待っていたのです……長旅お疲れ様なのです……」

　目を擦りながら、少し舟を漕ぎながら彼女は起きた。司令官、うん。悪い響きじゃない。だが。

「いや……君、誰だい？　ドコノダレ」
「私は特型駆逐艦、電なのです。吹雪型駆逐艦のラストオーダーなのです！」
「……ん？」

　電って言うと……撃沈した敵兵を助けたり、でも演習で味方艦を沈没させたりといろいろイワクのある駆逐艦だろ……？　ていうか人間じゃない。
　オレンジのような明るい髪の色なんてしていないし、僕の中のイメージが全然違う。

「この鹿屋基地にももう私しかいないのです……でも、司令官さんが来てくれたので、もう安心なのです！」

　……島流しされただけのこの僕にどんな期待を抱いているのだ。やめろ、そんなキラキラした眼で見るな！！

「兵装も、この私の三連魚雷しかないのです……でも、大丈夫ですね！　安心なのです！！」

　や、やめろおおお！！

「……司令官さん？　どうしたのですか？　そんなに青ざめて……」
「いや、少し眩暈が、ハハハ」

　……帰りたい。