37度2分
共に傍に居られたらと激しく恋焦がれることはなかった。離れていて寂しいということもなかった。一緒に居る今も昔も、たまらなく嬉しいと思うこともない。
ただ冷めない微熱が、あの頃から今まで変わることなくあり続けた。それが、二人の間にある唯一の確かな距離だ。
共に居ることはなくとも、心の中にはいつまでも変わらず互いが存在していた。離れていても、誓いなどなくとも、確かに共に生きていた。二人にはそれで良かった。
仙蔵が、文次郎のために違う未来を選んでも、己の道を捻じ曲げたといつか恨んだかもしれない。文次郎もまた、仙蔵のために生き方を変えるなど出来なかっただろう。
己の選ぶ道を行き、生き抜いて、だからこそ今、全ての運命を受け入れ、穏やかに笑い合える。
仙蔵はそこでようやく笑みを零した。確かな形を得た胸の微熱が暖かに溢れ出た、柔らかな笑みだった。