【HARU19無配】妖精はティータイムがお好き‐後日談‐
✿ 妖精はティータイムがお好き ✿
・・・Happy ever after・・・
******
新進気鋭で何かと話題のルポライターのマスタングさんに、最近とびきり美人の助手が付いたらしいと業界では専らの噂になっていた。
果たしてその真相は――?
******
「ロイー、すっごいいい天気だぜ! 気持ちいいから早く起きてこいよー」
エドワードの溌剌とした声に、浅い眠りから意識を浮上させたロイはゆるりと瞼を上げた。
嵐が去った満月の夜から数日経ち、淡い朝陽がベッド脇の出窓から差し込んでいて春らしい陽気を感じさせる。
「ああ、今……」
身体を起こしながら、エドワードに声をかけようとベランダの方を見たロイは、はたと動きを止める。
その目に映ったのは、全身に朝陽を浴びて妖精だった頃と同じようにキラキラと輝く黄金の髪をそよ風になびかせ、キラキラと輝くような艶やかな白い肌――昨夜も散々堪能した肢体を惜しげもなく晒している姿だった。
つまり真っ裸だったのだ。
「エドワード! 部屋に戻りなさい! 裸のまま外に出るんじゃない……!」
ロイの悲鳴のような叫びを聞いても、エドワードはベランダの手摺に凭れたままきょとんとしている。
ロイはエドワードの手を掴んで部屋へ連れ戻すと、手近にあったブランケットで彼の身体を包んだ。部屋へ入っても朝の光の中ではロイにとって大変目の毒だったので。
「なんで服着ないで出ちゃ駄目なんだ?」
エドワードは本当に分からない様子で聞いてくる。
「エドワード。昨日も話しただろう? 人は基本的に服はいつも着ているものなんだ。脱いでいいのはシャワーの時と……」
「ロイとベッドで寝る時!」
「う……ん、まあそれは時と場合による……。何にせよ、他の人のいるところで服を脱いだら駄目だぞ? 私と二人きりの時だけだ」
ロイは少々後ろめたいものを感じながらも、エドワードを諭すように言う。
「じゃあ今は二人きりだからいいじゃん」
「二人きりでも外では駄目だ! ……いや万一私がいいと言ったらいいんだが……」
「えー」
後半はもにょもにょと言い訳のようになってしまい、さっぱり締まらないロイだった。
「分かった。ロイがその方が好きならそうする」
こんな時エドワードは案外物わかりがよい。が、根本的なところは分かってくれていない気がする。
しかし、彼は何せ人としての生活をほんの数日前から始めたばかりなのだ。今はこれでよしとするべきだろう。
「そうしてもらえると私は嬉しいな」
ロイは表情を緩めると、改めてエドワードの顔を正面から見つめて言った。
「そういえば朝の挨拶がまだだったな。おはよう、エドワード」
そしてエドワードの額に軽く口付ける。
「おはよう、ロイ!」
するとエドワードもそう言ってつま先立ちをすると、目一杯首を伸ばしてロイの顔に近づけ、ちゅ、と軽く……唇にキスをしてきた。
「――!」
思わぬ不意打ちにロイは頬が熱くなった気がして、隠すように片手で顔を覆う。
(あ、悪魔……いや、妖精か……)
その反応にエドワードはちょっと不安そうにロイを見上げる。
「これも駄目だった?」
「いや……! 駄目じゃないとも。これはむしろ歓迎だ。だがやはり二人だけの時に頼むよ」
「おう!」
瞬時にぱっと顔を輝かせて嬉しそうに頷くエドワードはほんとうに可愛らしくて、このまま再びベッドへ連れ戻したくなる。
いやいや朝からこの調子では駄目だろう。ロイは気力で己を律すると、態勢を立て直すべくまずは、と考えた。
「まずは君の……君が寝る時来ていた服はどこへいったんだ?」
「一緒に寝てる時、ロイがどっかにやったよ?」
「…………」
見回すとベッドの周りに点々と、エドワードが着ていたはずの服が散らばっている。昨晩堪え性がなかったのは自分の方だったと思い出したロイだった。
「……アルフォンスが訪ねて来る前に服を着ておかないと笑われるぞ?」
「ヤバい、それは兄のこけんってやつに関わる」
アルフォンスの名前を出されて、エドワードはいそいそと床に散らばった服を拾い上げて身に付け始める。ロイの沽券はまったく無きものになっていた。
ヒューズ家の庭にいるウィンリィと隣の庭のアルフォンスは、エリシアがよちよち歩きの頃パンツ一枚のまま庭に出ようとする度に「裸で外に出たら恥ずかしいわよ」とグレイシアに言われているのを見ていたので、裸を他人に見られるのは恥ずかしいという認識があるらしい。
人間観察とやらも役に立つものだ。
そうこうしながら、ようやっとエドワードが服を着て朝食を取り始めた頃にアルフォンスがやってきたので、やはりあのままベッドにもつれ込まなくてよかったと胸を撫で下ろしたロイなのだった。
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・・・Happy ever after・・・
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新進気鋭で何かと話題のルポライターのマスタングさんに、最近とびきり美人の助手が付いたらしいと業界では専らの噂になっていた。
果たしてその真相は――?
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「ロイー、すっごいいい天気だぜ! 気持ちいいから早く起きてこいよー」
エドワードの溌剌とした声に、浅い眠りから意識を浮上させたロイはゆるりと瞼を上げた。
嵐が去った満月の夜から数日経ち、淡い朝陽がベッド脇の出窓から差し込んでいて春らしい陽気を感じさせる。
「ああ、今……」
身体を起こしながら、エドワードに声をかけようとベランダの方を見たロイは、はたと動きを止める。
その目に映ったのは、全身に朝陽を浴びて妖精だった頃と同じようにキラキラと輝く黄金の髪をそよ風になびかせ、キラキラと輝くような艶やかな白い肌――昨夜も散々堪能した肢体を惜しげもなく晒している姿だった。
つまり真っ裸だったのだ。
「エドワード! 部屋に戻りなさい! 裸のまま外に出るんじゃない……!」
ロイの悲鳴のような叫びを聞いても、エドワードはベランダの手摺に凭れたままきょとんとしている。
ロイはエドワードの手を掴んで部屋へ連れ戻すと、手近にあったブランケットで彼の身体を包んだ。部屋へ入っても朝の光の中ではロイにとって大変目の毒だったので。
「なんで服着ないで出ちゃ駄目なんだ?」
エドワードは本当に分からない様子で聞いてくる。
「エドワード。昨日も話しただろう? 人は基本的に服はいつも着ているものなんだ。脱いでいいのはシャワーの時と……」
「ロイとベッドで寝る時!」
「う……ん、まあそれは時と場合による……。何にせよ、他の人のいるところで服を脱いだら駄目だぞ? 私と二人きりの時だけだ」
ロイは少々後ろめたいものを感じながらも、エドワードを諭すように言う。
「じゃあ今は二人きりだからいいじゃん」
「二人きりでも外では駄目だ! ……いや万一私がいいと言ったらいいんだが……」
「えー」
後半はもにょもにょと言い訳のようになってしまい、さっぱり締まらないロイだった。
「分かった。ロイがその方が好きならそうする」
こんな時エドワードは案外物わかりがよい。が、根本的なところは分かってくれていない気がする。
しかし、彼は何せ人としての生活をほんの数日前から始めたばかりなのだ。今はこれでよしとするべきだろう。
「そうしてもらえると私は嬉しいな」
ロイは表情を緩めると、改めてエドワードの顔を正面から見つめて言った。
「そういえば朝の挨拶がまだだったな。おはよう、エドワード」
そしてエドワードの額に軽く口付ける。
「おはよう、ロイ!」
するとエドワードもそう言ってつま先立ちをすると、目一杯首を伸ばしてロイの顔に近づけ、ちゅ、と軽く……唇にキスをしてきた。
「――!」
思わぬ不意打ちにロイは頬が熱くなった気がして、隠すように片手で顔を覆う。
(あ、悪魔……いや、妖精か……)
その反応にエドワードはちょっと不安そうにロイを見上げる。
「これも駄目だった?」
「いや……! 駄目じゃないとも。これはむしろ歓迎だ。だがやはり二人だけの時に頼むよ」
「おう!」
瞬時にぱっと顔を輝かせて嬉しそうに頷くエドワードはほんとうに可愛らしくて、このまま再びベッドへ連れ戻したくなる。
いやいや朝からこの調子では駄目だろう。ロイは気力で己を律すると、態勢を立て直すべくまずは、と考えた。
「まずは君の……君が寝る時来ていた服はどこへいったんだ?」
「一緒に寝てる時、ロイがどっかにやったよ?」
「…………」
見回すとベッドの周りに点々と、エドワードが着ていたはずの服が散らばっている。昨晩堪え性がなかったのは自分の方だったと思い出したロイだった。
「……アルフォンスが訪ねて来る前に服を着ておかないと笑われるぞ?」
「ヤバい、それは兄のこけんってやつに関わる」
アルフォンスの名前を出されて、エドワードはいそいそと床に散らばった服を拾い上げて身に付け始める。ロイの沽券はまったく無きものになっていた。
ヒューズ家の庭にいるウィンリィと隣の庭のアルフォンスは、エリシアがよちよち歩きの頃パンツ一枚のまま庭に出ようとする度に「裸で外に出たら恥ずかしいわよ」とグレイシアに言われているのを見ていたので、裸を他人に見られるのは恥ずかしいという認識があるらしい。
人間観察とやらも役に立つものだ。
そうこうしながら、ようやっとエドワードが服を着て朝食を取り始めた頃にアルフォンスがやってきたので、やはりあのままベッドにもつれ込まなくてよかったと胸を撫で下ろしたロイなのだった。
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作品名:【HARU19無配】妖精はティータイムがお好き‐後日談‐ 作家名:はろ☆どき