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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 17

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第61章 大悪魔再臨


 灯台が崩壊せんばかりの揺れ。マーズのエレメンタルに属する、火のエナジスト二人の異変。
 これらから察するに、最後の灯台、マーズ灯台が灯ったという結論に至るのには時間を要さなかった。
 ジェラルドやジャスミンは、内に秘める火の力がマーズ灯台解放の影響を受ける事により、力の暴走を起こしてしまった。
 ジェラルドは軽くて済んだが、ジャスミンの方は、己が身をも焼き尽くしかねないほどの大暴走を引き起こした。
 そんな彼女を鎮めたのは、ガルシアであった。彼は自らの命を省みず、業火に身を包んだ妹を助けようとしたのだ。
 生身で炎に特攻する、という無茶をして、ガルシアは上半身に大火傷を負った。エレメンタルによる異変によって、最も負傷したのは彼である。
 ガルシアは、彼に首を絞められ意識の飛んだジャスミンと共に、イリスから治療を受けていた。
 ジャスミンの方はさほど外傷は無かったが、ガルシアの方は、生きていたのが奇跡なほど重傷であった。
 イリスの持つ、不死鳥の翼の効力により、ガルシアの見るも無惨な火傷は癒えていった。所々深い傷痕が残っているが、苦痛に歪んでいた彼の顔に安らかさが見えるようになってきた。
 広げると、虹が架かり不死鳥の如き生命力を与え、あらゆる怪我、病をたちどころに治す翼を、イリスはため息と共に閉じた。
「ふう……、何とかガルシアは一命を取り留めました。間もなく目も覚ましましょう」
 イリスの言葉に全員が安堵した。
「よかったぁ……」
 イワンは張り詰めていた肩の力を抜いた。
「本当に無茶ばかりしおって。ガルシアと一緒におると、寿命が縮むわい……」
 スクレータも緊張を解かれ、安堵のため息を付いた。
「スクレータが言うと妙にリアルだよな」
「む、シン。どういう事じゃ!?」
「そのまんまの意味さ。スクレータ結構年行ってるんだから、寿命云々言われるとびっくりするぜ」
 シンはからかっていた。
「おのれシン! ワシを年寄り扱いしおったな!?」
 自分から寿命が縮む、などと言っておきながら、スクレータは目くじらを立てた。しかし、シンはそれに臆することなく、笑っているだけだった。
 それにしても、とイリスはロビンに語りかけてきた。
「私が死んだと思ったときには、泣き続けていたというのに、シン、今は笑っていますね。本当に単純な人ですよ」
「そこがアイツのいい所さ。オレなんかより妹だった、イリスの方が分かってるんじゃないのか?」
 イリスは少し寂しそうな微笑を浮かべた。
 イリスには、シンの妹として、リョウカとして過ごしてきた記憶が、鮮明に残っている。神である彼女にとって、十六年の月日は矢の如く過ぎ去ったが、その時は重く、深い。もう二度とシンを兄とできない事は、イリスにとって寂しく感じられる事実であった。
「イリス、どうした?」
 寂しげな微笑を浮かべたきり、俯くイリスに、ロビンは訊ねた。
「いえ、何でもありませんよ」
 イリスは努めて明るく答える。
 天界で最強の力を持ち、高位にある神らしくない、とイリスは自らに言い聞かせた。
 人の子に不安を覚えさせるようではいけない。もう、リョウカという人間ではないのだ。高々十数年人間でいたくらいで、神の威厳を失ってはならない。
「ん……、うう……」
 イリスが自らを律している内に、横たわるジャスミンが目を覚ました。
「ジャスミン!」
 その場にいるほぼ全員の声が重なる。
「みんな……、あれ? 何で私こんな所で寝てたんだろ……」
 ジャスミンは、あたかも一晩の眠りから覚め、朝を迎えたかのように目をこすった。
「覚えてないのか? お前とんでもない暴走してたんだぜ」
 ジェラルドが先ほどまでジャスミンの身に起こっていた事を話した。
「暴走? そう言えば、何でだろ、体の奥がものすごく熱い……」
 ジャスミンは体の真から、燃えたぎるような熱を感じていた。それは最早、この世に焼き尽くすことのできない物は存在しない 、そう思えるほどの力だ。
 その力こそが先ほど、ガルシアを生死の境に追いやった炎の元であるとは、ジャスミンには考えつかなかった。
 ジャスミンは、心を落ち着けるべく、胸に手を当て数回深く呼吸した。そしてふと、自分の隣で、半裸のガルシアが横たわっているのに気付き、ぎょっとした。
「きゃあっ! 兄さん、なんでそんな格好なの!?」
 暴走していた際の記憶が曖昧なジャスミンにとって、半裸の男が、それも自らの兄が寝ているのは仰天するに十分だった。
「ジャスミン……、それはひどいだろ。ガルシアは命懸けでお前を助けてくれたんだぞ」
「えっ? 兄さんが!?」
 ロビンから事実を聞かされ、ジャスミンに少し記憶が戻ってきた。とはいえ、記憶はガルシアに抱きしめられ、彼の匂いを感じた瞬間を思い出したところで、再び朧気になった。
その後は絞め落とされ気絶していたので、仕方がないことであったが。
 しかし、ガルシアにはこのような所で、実の妹に襲いかかるような道理はない。第一、彼がそのような事をする人物でないことは、ジャスミンにはよく分かっている。
「……そっかぁ。あんまり覚えてないけど、兄さん私を助けてくれたんだ……」
 目覚めたときはつい、半裸のガルシアから目をそらしてしまったが、今、ジャスミンはじっくり見つめる。
 イリスが再生してくれたおかげで、命に関わるほどの火傷は治っていたが、それでも深すぎる傷痕はいくつか残っていた。
「もう少し遅かったら、私でも助けられませんでした。本当に、無茶をする人ですね、彼は」
 イリスは苦笑していた。
「ありがとう、イリス。兄さんを助けてくれて」
「お礼でしたら、身を挺してあなたを助けたガルシアにしてください」
「そうね……」
 ジャスミンは、まだ眠るガルシアに顔を近付ける。
「ありがとう、兄さん……」
 ジャスミンはそのまま目を閉じ、ガルシアの頬に唇を近付けた。
「ちょっとジャスミン!? 何しようとしてるの!?」
「そうですよ、お二人は兄妹ではないですか!?」
 シバとメアリィは赤面した。他の仲間達も皆慌てている。しかし、ジャスミンの行動は止まらない。
「……全くだ、もう子供のような礼の仕方はよせ。お前の方が襲っているぞ……」
 ガルシアは、ジャスミンの唇が頬に触れるか否かの所で、手で彼女の顔を押し止めた。
「に、兄さん!?」
 突然目を覚まされ、ジャスミンは飛び退いてしまった。
「ガルシア! よかった、気が付いたんですね」
「ガルシア、いつ気が付いたんだ!?」
 ピカードは胸をなで下ろし、ロビンは訊ねた。
「……ジャスミンが悲鳴を上げていた所からだよ。全く、こっちは命懸けで助けに行ったというのに、こいつときたら人を変質者扱いしおって……」
 気が付いていないふりをしながら、ガルシアは妹に仕返しすべく驚かすつもりだったらしい。
「ガルシア、お主また狸寝入りしておったのか。さすがに今回はシャレにならんぞ……」
「スクレータ、みんなに心配をかけたのは謝る。だが、俺の立場になって見ろ。死にかけた後に妹から悲鳴だぞ? 少し仕返しでもしてやらないと気が済まん……」