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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 17

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第63章 現(うつし)の悪夢


 天界最強の女神すらも、完膚無きまでに叩きのめした悪魔に、剣を取り勝負を挑もうとする者がいた。
「ロビン!?」
 回復したばかりで、決して状態は良くないというのに、ロビンは震える手で太陽神剣・ソルブレードを握っていた。
「……誰も、死なせはしない! みんなも、イリスも。絶対に……!」
 ロビンは、ずっしりと重量感のある、切っ先から常にドーム状にエネルギーの溢れる剣を、デュラハンに真っ直ぐに向けた。
「貴様、その剣……」
 首がないため、表情を確認することができないが、それでもロビンには分かったことがあった。
 蛇に睨まれた蛙の如く、デュラハンはロビンに、いや、彼というよりもソルブレードに恐れをなしていた。一言発したきり、一向に攻撃しようとしない辺り、恐れているのは確かである。
 ロビンの方も、剣を抜いたものの、攻撃に転ずる事ができずにいた。
 灯台から離れた空中にて、激突を繰り返していた者達がいた。
 一方は全く疲労を見せていないのに対し、もう一方は剣による傷で体中がぼろぼろであり、最早虫の息であった。
 突然、灯台の方から発せられた聖なる力を察知し、全身を甲冑に包んだ剣士は、灯台の方を見た。
「……あの、輝きは……?」
「よそ見、してんじゃねえ……!」
 シンは痛む体を押して、敵に向かって刃を振るう。
 しかし、剣士、センチネルはまるでシンの考えが完全に分かっているかのように、振り向かず、剣で迫り来る刃を弾き返した。
 シンの体力はもう消耗しきっており、刃を弾かれると大きく後ろへ下がっていった。エナジーもそろそろ限界に達しており、空中に浮いていられる時間ももう、ほんの僅かしか残されていなかった。
「……シン、貴様を今すぐ殺すのは容易い。……が、この勝負、お預けだ」
 センチネルは魔法の翼をばさっ、と羽ばたかせると、灯火とは違う輝きを持った灯台へと飛んだ。
「……く……、待ち、やがれ……!」
 エナジーが切れかけ、地に落ちそうになりながらも、シンは後を追った。
 ロビンとデュラハンの睨み合いは続いていた。
 ソルブレードを向けられてから、デュラハンは一歩も動かずにいた。もしやこの剣の光に当てられただけで、デュラハンは力を出せなくなってしまったのか。そんな考えがロビンの頭を過ぎった。
 しかし、動けないのはロビンの方も同じだった。
 デュラハンに近付こうにもこれ以上、足が前に出ないのだ。まるでデュラハンの周りに、邪悪なる結界でも張られているかのような、力の差が余りにもありすぎるが故の威圧感が、ロビンの足を地に貼り付けていた。
「……ふん、剣は一級品でも、使い手は三下か……」
 動けなくなっていたと思われたデュラハンは、ついにゆっくりとロビンに死を与えんとし始めた。
「まさか剣を向けただけで我の動きを止められるとでも思っていたのか……?」
 デュラハンはがちゃ、がちゃ、っと鎧のすれる音を立てながら歩み寄ってくる。しかも、ロビンの考えまで見通していた。
「だとすれば滑稽よ……。我は、神の作りし剣を、ただの人間如きが使えるのか様子を見ていただけのこと……」
 デュラハンが近付いてくる度感じられる死の予兆に、ロビンは金縛りにでもあっているかのように、脂汗を流しながら立っていることしかできなかった。
「だが、貴様の持つ剣は、一流の使い手が持てば我が脅威となる。なぜ貴様のような三下が持っていられるのかは分からぬが、貴様がそれを持てる以上、厄介なのは変わらぬ……、今ここで殺す……」
 ロビンとデュラハンとの距離はもう、手を伸ばせば十分届くものとなった。即ち、剣を一突きできる間合いである。
「ろ、ロビン……!」
 デュラハンの威圧感は周囲の空気を著しく低下させるのか、ジェラルドはさも呼吸困難に陥っているかのように、声をひねり出した。
 デュラハンに近付けば死ぬ。仲間達は本能的に察知している。故に助けにはいることができずにいた。
「死ね、小僧……!」
 デュラハンが右手の剣を突きだそうとしたその時、ロビンはその場に崩れ落ちた。
「ぬう?」
 デュラハンは何もしていない。しかし、ロビンの周りにいた仲間達には、彼を気絶させた者が見えていた。
 全身を鎧に包み、一切顔が窺えない鉄仮面付けた剣士、センチネルがロビンの延髄を打ち、気絶させていた。
「……貴様は邪魔だ。眠っていろ……」
 ロビンが崩れ落ちると同時に、ソルブレードも地に転がった。地に落ちたソルブレードを、センチネルが屈み込んで拾い上げる。
「……これが、神の作りし剣、か……」
 センチネルは右手にソルブレードを持ち、掲げて白金色の刀身を眺めた。
「ほう……」
 ソルブレードに備わる、持つに値しない者が手にすると、その者を焼き尽くしてしまう効果が、センチネルに発動した。しかし、一度ジェラルドが手にした時のように、ソルブレードは拒絶しているかのような光を放っているが、センチネルの手は焼かれることはない。焦げるようなことさえもなかった。
「……さすがは神の剣。俺の闇の力を拒んでいるか……。だが、デュラハン。貴様がよこしたアンチエナジーのガントレットのおかげで、剣の拒否反応を無力化している……」
 センチネルは、鉄仮面の他にも、エナジーや魔術、果ては神の力も無効化するガントレットを両腕に付けていた。これに守られ、センチネルはソルブレードを持ち続けることができた。
 チンッ、と音を立て、センチネルはもともと持っていた剣を鞘に納め、ソルブレードを左手に持ち替えた。
「ふん!」
 更に、負のエネルギーをソルブレードに送り込む。すると、ソルブレードは真っ黒な刀身になり、切っ先から溢れるエネルギーは赤紫となった。
 聖なる剣であるはずのソルブレードは、センチネルのあらゆる力を無力化する能力と、彼自身の持つ闇のエナジーにより、暗黒剣と化してしまったのである。
 センチネルはデュラハンに対峙し、暗黒剣と化したソルブレードをを、向ける。
「……究極の剣は手に入れた。デュラハン、今こそ貴様を討つ!」
 デュラハンを除く、その場にいた者が驚いた。彼の手下であると思われた者が、裏切りを宣言したのである。
 しかし、デュラハンは剣を向けられても、慌てる様子は一切見せなかった。むしろ、センチネルの裏切りは当然のことのように思っている様子が窺えた。
「ふははは……!」
 デュラハンは大きく笑い声を上げ、文字通りセンチネルを嘲笑った。
「……センチネル、我が枷に包まれた貴様に、我の相手が務まると真に思っているのか?」
「……貴様に付けられた枷は、確かに俺の力をかなり引き下げている……。だが、最強の剣を手にした今、最早枷など無力、俺によって常闇に消え去れ、デュラハン!」
 センチネルは、シンをも圧倒する速さで、デュラハンへと斬り込んだ。
 この二人の戦いを見ていた者達の目には、センチネルの動きは捉えられない。デュラハンと激突する一瞬だけ、彼の姿を見るのが精一杯であった。
 速さに圧倒されるデュラハンではなかった。
 デュラハンの方も、巨躯の上、全身を鎧に包んでいるのにも関わらず、センチネルに並ぶほどの速さで立ち回っていた。