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にょたりんちゃん受け詰め

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お泊まり(遙凛)



夜、凛は遙の家にいた。
遙の家はレトロな雰囲気の漂う和風建築だ。両親が海外赴任中のため、遙はこの家でひとり暮らしをしている。
高校生男子がひとり暮らしをしている家だが、全体的に小綺麗に片づけられている。
それでもどこか男臭い気がする。
というのは、自分の気にしすぎだろうかと凛は思った。
凛は今、七瀬家の風呂に入っている。
先に入れと遙に言われたので入ったので、いわゆる一番風呂だが、自分のあとにこの風呂に入るのは遙だけである。
つまり、今、この家にいるのは自分と遙だけなのだ。
夜、ひとつ屋根の下に、高校生の男女がふたりきり。
しかも、自分たちは、いちおう、付き合っているのである。
いちおう、が付くのは、周囲から見ると進展があまりにも遅いらしいからだ。渚からは、凛ちゃんが奥手だからはるちゃんは待ってるんだよ、とからかわれた。
今夜この状況になったのは予定外のことだ。
付き合い始めるまえから、この家にはよく来ていた。
遙がひとりで暮らしている家ということで、仲間が集まりやすいのだ。
今日も岩鳶高校水泳部の男子部員たちが集まっていた。そこに、紅一点にはなるが、凛も参加していた。
彼らはこの家に泊まることもよくあるらしい。だから、今日も泊まるのだろうと凛は予想していた。
そのため、凛は鮫柄学園の寮の外泊許可を取って来ていた。
すると、まさか、彼らは自分の家に帰っていったのである……!
岩鳶町ではない都市に住む渚と怜が仲良く帰ったあと、近所に住む真琴までが歳の離れた双子の弟妹を寝かしつけないといけないからと優しい笑顔で告げて帰ってしまったのだ。
今日この家に来て少し経ったときに、外泊許可を取ったことを何気なく凛は遙に言った。
今さら、今日はやっぱり寮に帰るとは言いづらく……。
そして現在の状況に至っている。
湯につかりながら、凛は自分の身体が緊張しているのを感じた。
意識しすぎなのだろうか?
ただ泊まるだけだ、と自分に言い聞かせてみる。
だって、こんな予定ではなかった。
夜に家でふたりきりになる予定ではなかった。
そんなつもりじゃなかった。
心の準備が、ぜんぜん、出来ていない!
でも。
遙はどうなのだろう?
やっぱり、したいのかな、と思った。
浮世離れしたところがあるが、遙だって、男だ。しかも、十代だ。
付き合うようになってから、身体に触れてくることが多くなった。触れたいらしい。そして、遙に触れられて、気持ちがいいから、凛はそのままにしている。
でも、だけど、触れられるのと、アレとは、ものすごく違うだろおおおお!?
凛は胸のうちで叫んだ。
自分と遙があれやこれやをするのを想像してしまった。
想像するだけで、恥ずかしい。
でも、遙はしたいのだろうか?
そして、自分は遙とそういうことをしてもいいと思っているのだろうか?
いろいろなことが、頭の中、ぐるぐる回っている。
凛は湯船に膝小僧を抱えて座りながら、悩む。
ふいに。
「凛」
遙が呼びかけてきた。
「長いぞ。湯につかりすぎて、のぼせてしまったのか?」
ガラッと風呂場の戸が開けられた。
遙と眼が合った。当然のことながら自分は裸である。
一瞬の沈黙があった。
そして。
「いきなり入ってくんじゃねぇよ!」
凛は怒鳴った。
それと同時に湯桶を引っつかみ、湯桶に湯を入れ、その湯を戸のほうへと投げつけた。
とっさにした行動で、驚きの早さだった。
バシャッという音がした。
遙は直撃をくらい、びしょ濡れになっている。身体から水滴がポタポタと落ちている。
だが、その顔にあるのはいつもの無表情だ。
そして、無言で身体を退き、風呂場の戸を閉めた。
遙の姿が見えなくなる。
凛はふたたび膝小僧を抱えた。
胸の中で、心臓がやけに早く、うるさいぐらい鳴っている。
しかし、ドキドキしながら、ついさっきの自分の行動をかえりみ始めてもいた。いくらなんでも、やりすぎだったか?
うっすらと罪悪感がわきあがってきた。
そんなとき。
「凛、気にするな」
戸の向こうから遙の声が聞こえてきた。
「いきなり入った俺が悪い」
まるで、こちらの心を読んだような台詞だった。
そのあと、去っていく足音が聞こえた。
凛は立てた膝の上に二の腕を乗せ、頭を抱えた。






遙はタオルで濡れた身体を軽く拭く。
「……めんどくせぇ」
ポツリとつぶやく。
やっぱり、凛はめんどうくさい。
でも。
遙は少し笑う。
さっきの風呂場での凛の姿を思い出していた。大あせりしていて、真っ赤な顔。
やっぱり、可愛い。
可愛くて可愛くてしょうがない。

手放したと思っていたのに、自分の中にずっとくすぶり続けていた想い。
再会して、ぶつかり合って、やっと気づいた本音。

待つのは、慣れている。

問題なのは、このあと、凛のにおいが充満しているはずの風呂に入らなければならないことだ。





いっそ狼になってしまおうか?










作品名:にょたりんちゃん受け詰め 作家名:hujio