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にょたりんちゃん受け詰め

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ちょっとくやしい(真凛)



待ち合わせ場所に長身で体格のいい青年が立っている。その雰囲気はやわらかい。
凛がやってくるのに気づくと、パッと顔を輝かせた。
真琴は嬉しそうに笑う。
「凛」
「けっこう待ったか?」
「ううん、たいしたことないよ」
そう真琴は否定したが、本当のところはどうかわからないと凛は思う。
かなり待ったとしても真琴はそれを言わないだろう。優しくて、いつも相手を気遣うから。
凛と真琴は歩きだす。
「今日は、凛、帽子かぶってるんだね」
「ああ」
凛は少し苦い表情になった。
「実はこれ、寝グセ隠しなんだ。どうにか寝グセ直そうとしたんだが、直んなくてさ」
「へえ」
優しい表情のまま真琴は相づちを打った。
ふいに。
凛は自分の頭から帽子が離れていくのを感じた。
え、と思い、凛は視線を上に向けた。
そこには、凛がかぶっていた帽子を持った真琴の手があった。
凛は真琴の顔を見る。
すると、真琴はニコッと笑う。
「寝癖も、可愛い」
本当にそう思っている様子で言った。
凛は眼を見張った。
それから、真琴から顔を背けた。
真琴を見ずに、ボソッと言う。
「ふざけんじゃねぇよ」
「え、ふざけてなんかないよ?」
きょとんとしているのが伝わってくる真琴の声。
凛は歩く足を速めた。足と肩にやたらと力が入っている。
すぐに真琴が凛の隣まで追いついてきた。
「もしかして、凛、なにか怒ってる?」
「……帽子、返せよ」
「あ、ゴメン」
真琴は素直に謝って、帽子を凛に差しだした。
凛は帽子を受け取ると、それをかぶる。深く、かぶる。
真琴が自然にしたことに対して、自分が動揺してしまったのが、ちょっとくやしい。






作品名:にょたりんちゃん受け詰め 作家名:hujio