デュエット試聴で小ネタ&感想
ペアリングの条件(凛遙)
凛は遙の家を訪れていた。
ふたりとも居間にいて、机をはさんで向かい合って座っている。
遙はいつもの無表情、凛は落ち着かない表情をしている。
少しして、凛は思いきったような顔になり、机に銀色の物を置いた。
「デュエットCDのジャケットの撮影のとき、これをつけてくれ」
机の上には、シルバーリングが二個、ある。
「一個は俺がつけるから」
「じゃあ、ペアリングになるな」
「……ああ」
つい凛は眼をそらした。
照れくさい。
でも、ペアリングをしたいという気持ちのほうが強かった。
そんな凛を遙はじっと見て、やがて言う。
「つけてもいいが、条件がある」
「なんだ?」
凛は遙を見た。ペアリングに対して条件を提示されるとは予想外だった。
遙は答えず、立ちあがった。
去っていき、しばらくして、もどってきた。
「これを着るのが条件だ」
遙は持ってきたTシャツ二枚のうち一枚を凛に渡した。
「一枚は俺が着る」
そう遙が言うのを聞きつつ、凛はTシャツを広げた。
「なんだ、これは」
思わず声をあげた。
Tシャツの表には岩鳶ちゃんの顔がどーんと描かれている。
「俺にこれを着ろってのかよ……?」
「ああ、そうだ」
遙は無表情のままうなずく。
「それがペアリングの条件だ」
ビシッと遙は告げた。
凛はTシャツに大きく描かれた岩鳶ちゃんの能面のような顔を見る。
お洒落な凛のファッションセンスがNO!と言っている。
だが……。
しかし……。
遙とペアリングしたい……!
「……わかった」
うつむき、ガックリ肩を落として、凛は負けを認めるように遙の提示してきた条件を呑んだ。
完成したジャケット写真を見て。
「凛、おまえ、わざと岩鳶ちゃんが見えないようにしたのか?」
「いや、偶然だ、偶然!」
作品名:デュエット試聴で小ネタ&感想 作家名:hujio