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愛すべき策謀家どの

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「あれは、おまえの手つきが、なんか、気持ち悪かったからだ!」
「あなたは奔放なように見せかけて、実はガードが堅い」
シュラの反論を無視して、雪男は落ち着いた様子のまま言う。
「違いますか?」
「っ……!」
ガードなんかゆるゆるだ! と言い返したいところだが、言った直後に嘘であることを論理的に解明されてしまいそうで、言えなかった。
「それから」
まだあるのか、とシュラは思った。
そんなシュラに雪男は穏やかな眼差しを向け、続ける。
「あなたは神父さんが好きだ」
雪男の言う神父さんとは、獅郎のことだ。
シュラは息を呑んだ。
どうして、わかったのか。
いつ、気づいたのだろうか。
シュラは言葉を無くして、雪男を眺める。
「僕があなたに出会ったばかりのころ、あなたは実力があるのに認定試験をまじめに受けなかった。それは祓魔塾に居続けたかったから。神父さんのそばに居続けたかったからじゃないんですか?」
そう問いかけられて、シュラは答えなかった。
答えなかったが、アタリだ。
そして、それは苦い思い出につながる。
祓魔塾に、獅郎のそばに居続けたかったシュラは、獅郎に放り出された。ヴァチカン本部へ行くよう命じられたのだ。
自分のそばにいるとシュラが成長できないと思ったのか、シュラの想いに応えられないと思ったのか。
両方だろう。
そのあたりのことまで雪男は察しているのかもしれない。雪男はシュラが突然祓魔塾からいなくなったことを知っている。けれども、触れてはこなかった。
「好きな相手がいても、他の相手と良好に付き合い続けるひともいるでしょうし、他の相手と付き合ううちに好きな相手を過去のものとして今の相手を本当に好きになることもあるでしょう。でも、あなたはそれができなかった」
付き合った相手のことを、付き合う前後は本当に好きだと思っていた。恋愛って楽しいと充実した気分でいた。
しかし。
すぐに、気持ちが冷めてしまうのだ。
祓魔師という特殊な職業に就いている難しさもある。それを理由にして相手から別れを告げられたこともあった。付き合った期間の長さはそこそこあっても、仕事の関係で、付き合ってから相手と一緒にいたのは数日ということもあった。
だが、仕事の問題がなくても、シュラの気持ちが冷めて、別れていただろうと思う。
結局、シュラの心は、自分を救い出してくれて、そして自分を放り出した獅郎を求め続けていた。
付き合った相手を本当に好きだと思っていた。けれども、獅郎ほど好きになれなかった。
どうしても獅郎への想いを断ち切れなかった。
獅郎はシュラの想いに応えてくれなかったのに。
「でも」
雪男は言う。
「神父さんは死んだ」
獅郎は雪男の養父だ。その死は雪男にとっても重いはずだ。
めずらしく頼りなげになっているシュラの瞳を、雪男の眼がとらえる。
「シュラさん、あなたの、長い、長い、初恋は終わったんですよ」
その声音は優しかった。
相手が死んだら、それで終わりじゃない。相手への想いは自分の中で生きている。そう思う。
でも。
なぜか、雪男の言った台詞は、シュラの中で引っかかることなく落ちていって心にやわらかく着地した。
ああ、終わったんだな。そう素直に受け止めた。
作品名:愛すべき策謀家どの 作家名:hujio