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光風霽月

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6.

 聖域に来た頃のシャカはいつもサガの後をくっついて回っていた。サガもまた懐いているシャカが可愛かったのだろう、優しくシャカの面倒を見ていた。そんなサガとシャカの関係が正直ムウは羨ましいと思った。
 シオンさまはとても厳しい人だったから、ムウを甘やかすことなど絶対にしなかったのだ。
 それにサガに対しては毀れるような笑顔をシャカは見せるのに、サガ以外にはその笑顔をシャカは見せなかったのが悔しかった。そう・・・悔しかった。
 だから、懸命にシャカの気を引こうとしていたのだ。でも、シャカはちっともムウを構わなかった。それどころか・・・・。シャカに言われたのだ。「おまえなんか大嫌いだ」って。
 なんでそんな風に言われたのかはもう忘れてしまったけれど、何かシャカの気を引こうとして結果、そういうことになった。ひどくショックを受けたことは覚えている。それ以来シャカが嫌いになった。
 嫌いなくせにどうしても目に付いてしまって、ますます嫌いになった。聖域を離れたあとも時折感じるシャカの小宇宙がひどく不快に感じた。
 傲慢で尊大な小宇宙の存在はムウに劣等感を抱かせたから。それにどこかシオンさまを感じさせるその小宇宙が自分の手の届かないことが悲しかった。



「・・・・・まるっきりこれじゃ、子供だ」

 なんだか可笑しくなったムウは誰に言うでもなく呟く。そしてクスクスと笑った。

「・・・・ん・・ムウ?」
「ああ、起きちゃいましたか」

 ムウの笑い声に目を覚ましたらしいシャカの身体が、一瞬にして強張り起き上がろうとするのをぎゅっと抱きしめて阻止した。

「・・・・・これは一体・・・何の冗談・・・かね・・・?」
「さあ?新手の嫌がらせ、とでもいっておきましょうか?」
「貴・・・様・・・・」
「結構、貴方って抱き心地いいんですね。それに寝顔は可愛かったですよ。黙ってればイイ感じだと思うんですけど」

 そう言ってムウはシャカの額にくちづけた。

「・・・・・・・・!!!?」

 たぶんシャカはパニックに陥っている。シャカの頭の中では大仏さまがフラダンスしているぐらいの驚きのはずだ。
 私だってそうだ、とムウは思った。羊の大群が二足歩行で白羊宮に攻めてきたぐらいに驚いているのだから。
 ・・・・でも。
 たまにはこれぐらい余裕のないシャカの顔を見るのもいいかもしれない。そう思うとなんだかひどく愉快な気持ちになった。胸のしこりがとれて、こんなに爽快な気分になったのは久しぶりだと思う。
 クスクスと笑うムウを不機嫌極まりないシャカが眉を顰める。しかし、どうしていいのかわからないらしく、結局大人しくムウの腕の中に納まったままだった。

「ねぇ、シャカ。私は今とても気分がいいんですよ」
「・・・・私は最悪な気分だ」
「―――でしょうね。私と貴方は正反対ですからね」

 今はなんだかそれがとても面白いと思う。天と地ほどにかけ離れている互いの気持ちがどんな風に変わっていくのか見物だ。
 真逆に位置する君と私。互いの意見をぶつけ合って、理解することができないこともあるだろうけれど。それはそれでいいんじゃないかと思う。
 もう一度ムウはぎゅっと腕の中のシャカを抱きしめると楽しそうに笑った。


Fin.
作品名:光風霽月 作家名:千珠