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こらぼでほすと  四十数年先の双子

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 というか、世間に疎くなっているから、それを補ってくれている、が正しい。たまに、ヴェーダ本体に帰ることはあるものの、ほとんど、リジェネは俺の傍に居てくれる。今日は、ふたりで行って来て、と、送り出してくれた。そんなふうに気遣いできるほど、リジェネは人間に馴染んだ。
「すっかり、居るのが当たり前になっててさ。」
「学校は? 」
「今は、行ってないんだ。」
 リジェネは、それまで専門学校に通っていたが、それも修了させた。いつもなら、春から、また新しいところへ通うのだが、今回は決めていなかった。たぶん、亭主との会話で、こうなることを予想していたのだろう。どちらが年上なのかわからないほど、リジェネは成長した。今は、すっかり、俺の保護者だ。
「それなら、コブつきで旅行しよう。島内をぐるりと廻ればいい。いつぞやみたいに強行軍じゃなくて、のんびりさ。こっちの名物でも堪能して、お土産を探して・・・そんなふうにな。」
 昔一度だけ、『吉祥富貴』の慰安旅行にやってきた。その時は、時間が限られていて、有名な観光地を少し廻っただけだった。この国には、綺麗なところが、たくさんある。それを目に焼き付けておくのもいいだろう。実弟の年齢から考えて、度々、戻れる場所ではない。年に一度がせいぜいだから、記憶に留めたいのかもしれない。俺にとっては、こちらのほうが異国な気分だ。すっかり、あちらに馴染んでしまったのだと、実弟を見ると感じる。


 家に戻ったら、夕方になっていた。途中の大きな街で買い物したり食事したりと時間がかかったのだ。
「おかえり、どうやら、話は纏まったみたいだね? ライル。」
「ああ、おまえの目論み通り、もう一度引っ越す。ただし、三ヶ月ぐらい後でな。」
「うーん、それなら、僕は一度、ヴェーダへ戻ろうかな。」
「そんなに気を遣うな。用事がないなら、一緒に居てくれ。島内をぐるりと観光するつもりだ。おまえ、ナビしてくれよ。ニールじゃ危なかしくって安心して乗ってられないぞ。」
「ああ、そうなんだ。それじゃあ、付き合うよ。・・・・ほんと、ニールは目が離せなくてさ。とんでもないことするんだもん。」
 実兄は、天然すっとぼけというおかしなクセがあって、たまに発動するとイノベイドでも慌てる代物であるらしい。
「おまえが過保護なだけだ、リジェネ。」
 クルマを車庫に入れてきた実兄が戻って来て、会話に参加した。ほとんどクルマも使わない生活だから、車庫入れひとつも時間がかかる。
「そうかなあ。レンタカーの運転も、最初はわからなくて慌ててたじゃない。目的地の入力方法もわからなかったでしょ? 今朝、僕が入れてあげたの忘れたの? 」
「・・・う・・・だって・・普段、使わないし・・・」
「だから、僕が付き添ってるんだよ。だいたい、ママは出不精すぎるんだ。たまには、特区の内も旅行すればいいのに。」
「だって、三蔵さんが行かないじゃないか。」
「あの人も悟空がついてるだろ? 」
「・・うん・・・」
「大丈夫だよ、ママ。僕は一緒に、ずっと居るからね。わからないことは僕がやってあげられるんだから、ママは、そのまんまでいい。」
「ありがとさん。」
 イノベイドは、実兄の精神状態を心配して、ほとんど付きっきりで暮らしている。大変有り難いと、俺も感謝している。傍に誰かいないと寂しいというおかしな人間なので、変わらないイノベイドが居てくれれば寂しくはない。
「今度から、俺も一緒に暮らすから寂しくないだろ? そうだ、あっちに引っ越したら、あっちの観光もしようぜ? 」
「そうだな。昔、アレルヤたちと温泉に行ったことがあるよ。あれは楽しかった。」
「いいねぇー温泉か。」
 そんな話をしていたら、玄関から声が聞こえた。イノベイドが言うには、昼間に村の女性陣が顔を出して、差し入れがてらに、いろいろと尋ねて行ったらしい。
「一応、僕がママの子供で、ママはライルの甥っ子にしておいたよ。それでよかったよね? 」
「ああ、それでいい。・・・ということは、追加の差し入れとニールの顔を拝ませろってことだな。」
 どこでも好奇心一杯のご婦人方は行動的だ。昨日、村に現れた実兄とイノベイドの情報が駆け巡っているのだろう。とりあえず、顔を出して挨拶させねば収まらない。
「ニール、悪いけど、その設定で頼むぜ? 引越しの話は、まだしなくていい。遊びに来たってことでな。」
「了解、じゃあ、お茶の用意をしたほうがいいかな。」
「そうだな。ババアどもは、おしゃべりだからなあ。」
 これといって娯楽の少ない村だから、来訪者なんて格好の話のタネになる。おいそれとは引き下がらないだろう。下手をすると人数が増えて宴会になる怖れもある。まあ、それもいいだろう。こんなふうに騒がしいのも暇つぶしにはもってこいだ。

「よおう、どうかしたのか? 」

 精一杯、声を張り上げて玄関に顔を出したら、差し入れを手にした村の人間が歓迎会をやろうと騒いでいた。