夢のあと
Episode1.日常
「ねー、今日の晩御飯なんだろうね」
「…まだ3時だよ」
その日の授業を一通り終えたメアリーとイヴは、帰路についていた。
「しっかり美味しいごはん食べて、週末に備えないとね」
「週末?…あぁ、ゲルテナ展?なんで芸術鑑賞に備えが必要なのよ」
イヴは呆れたように少し微笑み、
「しかし、この街でもう一度ゲルテナ展が開かれると思ってなかったよ。大体5年ぶりかな?」
「そうだね。…その時は、わたしとイヴとお母さんとお父さん…家族全員で来たんだっけ」
「その後、お腹空いたからって喫茶店行ったよね」
「うん、あそこのマカロンだっけ、美味しかったなあ」
「…よく覚えてるね」
「えへへ、食べ物に関してはよく覚えてるからね。それに、」
梢から小鳥がにわかに飛び立つ。
「あの日は、特別だったから。」
揺れた木陰がメアリーの顔にかかり、笑みを妖しく浮き彫りにした。